アメリカのベストセラー・ランキング
2月6日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE MIDNIGHT LIBRARY Up
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
- 2. THE MAID Stay
Nita Prose ニータ・プロウズ
他者とのコミュニケーションが苦手なモリーは、ずっと支えてくれた祖母が亡くなると、高級ホテルのメイドとして働くことになる。きれい好きで礼儀正しい彼女には、うってつけの仕事だ。しかしある日、評判の悪い富豪の客ブラック氏が、滞在中のスイートで死体で発見される。警察はモリーに疑いの目を向けるが、彼女は友人たちとともに真犯人を突き止めようとする。
- 3. THE LINCOLN HIGHWAY Up
Amor Towles エイモア・トールズ
1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。
- 4. THE HORSEWOMAN Stay
James Patterson and Mike Lupica ジェイムズ・パタースン、マイク・ルピカ
マギーとベッキーの母娘はともに馬術競技の優勝者だが、同じ競技では互いに戦わないと誓い合っていた。しかし、パリ・オリンピックが近づくにつれ、世界一の女性騎手の座をめぐってすべてが劇的に変化し、緊張が高まっていく。
- 5. ONE STEP TOO FAR New!
Lisa Gardner リサ・ガードナー
フランキー・エルキン・シリーズ第2作。ティモシー・オデイという青年が独身最後のキャンプに友人たちと出かけ、その夜姿を消してしまった。森に詳しく、キャンプにも精通しているはずのティモシーが、なんの痕跡も残さずに行方不明になるのは不可解だ。報道で事件を知ったフランキーは、みずから志願して捜索隊に加わる。しかし、そこには予想もしていなかった危険が待ち受けていた。
- 6. THE LAST THING HE TOLD ME Stay
Laura Dave ローラ・デイヴ
結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。
- 7. THE JUDGE’S LIST Up
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――
- 8. THE STRANGER IN THE LIFEBOAT Up
Mitch Albom ミッチ・アルボム
船舶の爆発事故が起き、生存者9名がボートで漂流しながら三日間救助を待っていた。あきらめの雰囲気が漂うなか、波間にひとりの男が浮かんでいる姿が見え、助けだしてボートに乗せることになる。その男はなんと、自分が神であると名乗り、信じる者のみが生きのびられると言うのだった。神の助けを待つ者たちの前に本物の神があらわれたのだろうか、それとも――
- 9. WISH YOU WERE HERE Up
Jodi Picoult ジョディ・ピコー
29歳のダイアナは仕事も恋も順調で、恋人とガラパゴス諸島へ行く予定を立てていた。ところが未知のウイルスが流行の兆しを見せ、外科研修医である恋人は直前に出発を見送り、ダイアナひとりで旅に出ることに。到着した直後パンデミックにより国境が封鎖され、ダイアナはガラパゴス諸島に閉じこめられてしまう。
- 10. TO PARADISE Down
Hanya Yanagihara ハニヤ・ヤナギハラ
架空のニューヨークを舞台として、19、20、21世紀のそれぞれの世紀末に生きる人々が描かれる。ゲイ同士の結婚が一般的である一方、だれもが地上の楽園を願いながら疫病が蔓延し、社会では全体主義が横行していく。
【まとめ】
5位にリサ・ガードナーの新作がランクインしました。2021年初頭に発表され、当ランキングにも入った“BEFORE SHE DISAPPEARED”の続編です。なお、ガードナーの話題作『棺の女』の待望の続編である『完璧な家族』(“LOOK FOR ME”満園真木訳、小学館)が2月に邦訳刊行予定です。また、1位には59週連続ランクイン中の“THE MIDNIGHT LIBRARY”が返り咲きました。現在も読者レビューが投稿され続けているロングセラーとなっています。
圏外に目立った動きはありませんでした。
関 麻衣子(せき まいこ) |
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埼玉在住の翻訳者。訳書に『殺人ゲーム』レイチェル・アボット(角川文庫)、ジョン・ヴァーチャー『白が5なら、黒は3』、ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』(いずれも早川書房)など。 |