アメリカのベストセラー・ランキング

2月27日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. ABANDONED IN DEATH    New!

J.D. Robb J・D・ロブ

イヴ&ローク・シリーズの54作目。誘拐され殺された若い女性の死体が、「悪いママ」と黒のクレヨンで書かれたメモとともに発見される。捜査を開始したニューヨーク市警の警部補イヴは、さらに2人の失踪した女性が同じ犯人の手によってさらわれ、命の危機にさらされていると気づく。

 

  1. 2. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 3. THE LAST THING HE TOLD ME    Up

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 4. THE LINCOLN HIGHWAY    Stay

Amor Towles エイモア・トールズ

1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。

 

  1. 5. THE MAID    Down

Nita Prose ニータ・プロウズ

他者とのコミュニケーションが苦手なモリーは、ずっと支えてくれた祖母が亡くなると、高級ホテルのメイドとして働くことになる。きれい好きで礼儀正しい彼女には、うってつけの仕事だ。しかしある日、評判の悪い富豪の客ブラック氏が、滞在中のスイートで死体で発見される。警察はモリーに疑いの目を向けるが、彼女は友人たちとともに真犯人を突き止めようとする。

 

  1. 6. THE CHRISTIE AFFAIR    Down

Nina de Gramont ニーナ・ド・グラモン

1926年に起こったアガサ・クリスティ失踪事件。夫アーチボルドに愛人がいたことが一因とされているが、この愛人にナン・オディーという架空の人物を据え、その視点から三角関係を描く。愛人から夫人になろうとするナンの野望は、かつて経験した悲恋に根ざしていた。

 

  1. 7. CITY OF THE DEAD    New!

Jonathan Kellerman ジョナサン・ケラーマン

小児臨床心理医アレックス・デラウェア・シリーズの第37作。裸の男が道路で車に轢かれ、男の血痕をたどった先の家では女の死体が発見される。ロサンゼルス市警の刑事マイロに呼ばれて現場に駆けつけたアレックスは、死体の女がかつて裁判で顔を合わせたことのある自称心理士だと気づく。はたして死んだ男女の身には一体何があったのか。

 

  1. 8. THE JUDGE’S LIST    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――

 

  1. 9. THE HORSEWOMAN    Down

James Patterson and Mike Lupica ジェイムズ・パタースン、マイク・ルピカ

マギーとベッキーの母娘はともに馬術競技の優勝者だが、同じ競技では互いに戦わないと誓い合っていた。しかし、パリ・オリンピックが近づくにつれ、世界一の女性騎手の座をめぐってすべてが劇的に変化し、緊張が高まっていく。

 

  1. 10. WISH YOU WERE HERE    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

29歳のダイアナは仕事も恋も順調で、恋人とガラパゴス諸島へ行く予定を立てていた。ところが未知のウイルスが流行の兆しを見せ、外科研修医である恋人は直前に出発を見送り、ダイアナひとりで旅に出ることに。到着した直後パンデミックにより国境が封鎖され、ダイアナはガラパゴス諸島に閉じこめられてしまう。

 

 

【まとめ】

1位と7位に新作が初登場しました。1位に輝いたイヴ&ローク・シリーズは、ノーラ・ロバーツの別名義J・D・ロブによる長寿シリーズ。邦訳は番外編の『死者と交わした盟約』(2021年11月刊)と『忌まわしき魔女の微笑』(2022年2月25日発売)の連続刊行に続き、53作目『偽りの信奉者』が3月26日に発売予定です(いずれもヴィレッジブックス)。7位のアレックス・デラウェア・シリーズも長寿シリーズですが、邦訳は第14作の『マーダー・プラン』までが講談社などから刊行ずみです。またトップテン外の11位には、フランシーン・リバースのヒストリカル・ロマンス“THE LADY’S MINE”が入りました。リバースは1991年発表の“REDEEMING LOVE”というゴールドラッシュの時代を舞台にした作品が最近映画化され、先月アメリカで公開されています。

 

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。ボストン市警刑事D・D・ウォレン・シリーズの新作『完璧な家族』(リサ・ガードナー/小学館文庫)が2月4日に発売されました。前作『棺の女』のヒロインのフローラがD・Dとともに一家銃殺事件の背景に迫ります。訳書はほかに『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル/東京創元社)、『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(シェーン・バウアー/東京創元社)、『ハーフムーン街の殺人』(アレックス・リーヴ/小学館文庫)など。