アメリカのベストセラー・ランキング
3月6日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. HOUSE OF SKY AND BREATH New!
Sarah J. Maas サラ・J・マース
妖精と人間の中間の存在であるブライス・キンランを主人公とする異世界ファンタジー、クレセント・シティ・シリーズ三部作の第2作。ブライスは堕天使ハント・アサラーとともに、再びクレセント・シティを脅かす悪に立ち向かう。
- 2. DIABLO MESA New!
Douglas Preston and Lincoln Child ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド
サンタフェの考古学者ノーラ・ケリーを主人公とするシリーズの第3作。宇宙開発企業の創業者で若き億万長者のタッパンから、1947年にUFOが墜落したとされるロズウェルの調査依頼があり、ノーラは渋々ながら発掘作業に着手する。しかし現場で古い遺体を発見したことから、FBI特別捜査官コリー・スワンソンが捜査に加わる。
- 3. THE MIDNIGHT LIBRARY Down
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
- 4. THE LINCOLN HIGHWAY Stay
Amor Towles エイモア・トールズ
1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。
- 5. ABANDONED IN DEATH Down
J.D. Robb J・D・ロブ
イヴ&ローク・シリーズの54作目。誘拐され殺された若い女性の死体が、「悪いママ」と黒のクレヨンで書かれたメモとともに発見される。捜査を開始したニューヨーク市警の警部補イヴは、さらに2人の失踪した女性が同じ犯人の手によってさらわれ、命の危機にさらされていると気づく。
- 6. SIERRA SIX New!
Mark Greaney マーク・グリーニー
凄腕の暗殺者グレイマンを主人公とするシリーズ第11作。グレイマンと呼ばれる以前、コート・ジェントリーはシエラ・シックスという呼び名でCIAの特殊作戦部隊に所属していた。グレイマンは任務遂行中にその過去の「亡霊」を見る。それは12年前に抹殺したはずの、凶悪なテロリストのリーダーだった。
- 7. THE LAST THING HE TOLD ME Down
Laura Dave ローラ・デイヴ
結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。
- 8. THE MAID Down
Nita Prose ニータ・プロウズ
他者とのコミュニケーションが苦手なモリーは、ずっと支えてくれた祖母が亡くなると、高級ホテルのメイドとして働くことになる。きれい好きで礼儀正しい彼女には、うってつけの仕事だ。しかしある日、評判の悪い富豪の客ブラック氏が、滞在中のスイートで死体で発見される。警察はモリーに疑いの目を向けるが、彼女は友人たちとともに真犯人を突き止めようとする。
- 9. THE CHRISTIE AFFAIR Down
Nina de Gramont ニーナ・ド・グラモン
1926年に起こったアガサ・クリスティ失踪事件。夫アーチボルドに愛人がいたことが一因とされているが、この愛人にナン・オディーという架空の人物を据え、その視点から三角関係を描く。愛人から夫人になろうとするナンの野望は、かつて経験した悲恋に根ざしていた。
- 10. MOON WITCH, SPIDER KING New!
Marlon James マーロン・ジェイムズ
アフリカ版ゲーム・オブ・スローンズとも称される、ダークスター三部作の第2作。前作“BLACK LEOPARD, RED WOLF”では姿を消した少年を追う男に敵対する「月の魔女」であったソゴロンの視点から、少年の失踪と、百年以上に及ぶ確執を語る。
【まとめ】
今週は新たに4作品がベストテン入りしました。1位のサラ・J・マースは人気ファンタジー作家で、日本ではデビュー作『アサシンの王女』(上・下、ヴィレッジブックス)が刊行されています。2位は、FBI捜査官ペンダーガスト・シリーズで知られるプレストンとチャイルドのコンビによる、考古学者ノーラ・ケリー・シリーズの第3作。6位のグレイマン・シリーズは、10作目の『暗殺者の献身』(上・下、ハヤカワ文庫NV)が2021年9月に刊行されています。10位にはジャマイカ出身の作家マーロン・ジェイムズが登場しました。ジェイムズは“A BRIEF HISTORY OF SEVEN KILLINGS”で2015年にブッカー賞を受賞。これはレゲエ・スターにしてジャマイカの英雄ボブ・マーリーが襲撃された事件を軸に、ジャマイカの暗い歴史を描いた小説で、『七つの殺人に関する簡潔な記録』(早川書房)として邦訳刊行されています。トップテン外では、14位にスティーヴン・キング、リチャード・チズマーの“GWENDY’S FINAL TASK”、15位にブランドン・サンダースンの“DAWNSHARD”がはいりました。
佐藤桂(さとう けい) |
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神奈川県在住の翻訳者。 |