アメリカのベストセラー・ランキング

4月24日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

1. RUN, ROSE, RUN    Stay

Dolly Parton and James Patterson ドリー・パートン、ジェームズ・パタースン

子供のころから歌を作って歌っていたアニー゠リーは、一文無しでナッシュヴィルのバーのステージに立ったのを機に、ミュージシャンのイーサンと、引退したカントリーソングの女王ルサンナに認められ、スターへの道をのぼっていく。けれども彼女には暗い過去があり、イーサンとルサンナもそれぞれ秘密をかかえていた。

 

2. SEA OF TRANQUILITY    New!

Emily St. John Mandel エミリー・セントジョン・マンデル

1912年に英国からカナダのヴァンクーヴァーに渡ったエドウィン、2020年のニューヨークで兄や親友に思い出を語られるヴィンセント、2203年に住んでいる月から地球へ新刊のキャンペーンツアーに出かける作家のオリーヴ、そして2401年にタイム・インスティテュートという機関で働くことになったガスペリー……時間軸を行き来しながら綴られる、500年の時を超えた壮大なスペキュレイティブ・フィクション。

 

3. TIME IS A MOTHER    New!

Ocean Vuong オーシャン・ヴオン

小説『地上で僕らはつかの間きらめく』でも知られるベトナム生まれの詩人オーシャン・ヴオンによる2冊目の詩集。28篇の詩が収録されている。

 

4. THE CANDY HOUSE    New!

Jennifer Egan ジェニファー・イーガン

〈オウン・ユア・アンコンシャス〉というプラットフォームが開発され、クラウドにアップロードされた自分や他人の記憶に誰でもアクセスできるようになった近未来を舞台に、章ごとに語り手、視点、文体から形式までをさまざまに変えて語られる万華鏡のような実験的小説。ピュリッツァー賞受賞作『ならずものがやってくる』の続編。

 

5. THE PARIS APARTMENT    Down

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

何もかもうまくいかず、働いていたブライトンのバーも辞めてお金もないジェスは、たったひとりの身寄りである兄のベンをたよってパリに渡る。しばらく泊めてもらうことになったベンのアパルトマンを訪ねてみると、そこは立地も建物も素晴らしく、いかにも人生の再出発にふさわしい場所だったが、数時間前にジェスの携帯電話に届いたメッセージを最後にベンは姿を消していた。

 

6. WHAT HAPPENED TO THE BENNETTS    Down

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

ジェイソン・ベネットは妻子を車に乗せて帰宅中にカージャックに遭うが、犯人ふたりは仲間割れし、ひとりがもうひとりを射殺して逃げた。殺されたのはギャングの一員で、ジェイソンの仕業だとボスが思いこんだために、一家は命を狙われることになり、FBIの証人保護プログラムを受ける。

 

7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

8. THE RECOVERY AGENT    Down

Janet Evanovich ジャネット・イヴァノヴィッチ

ガブリエラ・ローズはリカバリー・エージェントとして、失せ物や盗まれた宝を探し出したり、保険調査員のようなことをしたりしている。今回は故郷の実家がハリケーンで壊滅的な被害を受けたため、手っとり早く大金を稼ぐ必要があり、家宝があると祖母から話を聞いて、ローズはペルーのジャングルへ向かう。ベストセラー作家による大型シリーズの幕開け。

 

9. THE DIAMOND EYE    Down

Kate Quinn ケイト・クイン

1937年のキーウ(キエフ)。大学で歴史を学んでいたミラ・パヴリチェンコは、ナチスドイツのソ連侵攻にともない、赤軍の狙撃兵として戦場に送りこまれる。そしてたぐいまれな才能を発揮し、300名以上の敵兵を殺害する戦果をあげた。ソ連邦英雄を受章したミラはいったん前線を離れるが、仇敵と決着をつけるため、ふたたび戦場に戻る。

 

10. TRUE BIZ    New!

Sara Novic サラ・ノヴィッチ

オハイオ州の全寮制のろう学校。コーダ(ろう者の親を持つ聴者の子供)である校長のフェブラリーは学校の予算削減に苦しみ、学校の優等生だったオースティンは聞こえる妹の誕生に動揺し、両親の離婚によって学校に来たチャーリーははじめて学ぶ手話にとまどう――ろう者の作家が3人の登場人物の激動の1年を通じてろうコミュニティの直面するさまざまな問題を描き出した長編第2作。

 

【まとめ】

2位、3位、4位、10位に新作が初登場しました。2位はアーサー・C・クラーク賞受賞の『ステーション・イレブン』(小学館文庫)で知られるエミリー・セントジョン・マンデルの最新作。本作と2020年に出た“THE GLASS HOTEL”と『ステーション・イレブン』とはゆるやかなつながりを持つ三部作とのことです。また『ステーション・イレブン』はマッケンジー・デイヴィス、ヒメーシュ・パテルら出演でドラマ化されて昨年12月にアメリカで放映され、日本でも今月末からU-NEXTで配信が開始されるとのことで話題を呼んでいます。3位に入ったオーシャン・ヴオンは自伝的小説『地上で僕らはつかの間きらめく』が昨年8月に新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行されています。4位のジェニファー・イーガンは2019年7月に『マンハッタン・ビーチ』(早川書房)が出ています。ベストテン外では、14位にボニー・ガーマスの“LESSONS IN CHEMISTRY”、15位にグレイス・D・リーの“PORTRAIT OF A THIEF”という、ともに女性作家のデビュー作が新たにランクインしています。

 

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。ボストン市警刑事D・D・ウォレン・シリーズの新作『噤(つぐ)みの家』(リサ・ガードナー/小学館文庫)が4月6日に発売されました。2月に刊行された前作『完璧な家族』に続き、『棺の女』のヒロインのフローラがD・Dとタッグを組み、妊娠中の妻による夫射殺事件の背景に迫ります。3作合わせてぜひどうぞ!