アメリカのベストセラー・ランキング

5月1日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1.  THE INVESTIGATOR    New!

John Sandford  ジョン・サンドフォード

連邦保安官ルーカス・ダヴンポートの養女であり、スタンフォード大学で経済学を修めた24歳のレッティは、上院議員事務所での仕事を退屈だと感じていた。上院議員は優秀な彼女を引きとめるため、国土安全保障省との合同捜査に加わるよう命じる。レッティは捜査官のカイザーとともに、テキサスで頻発する原油盗難事件の捜査にとりかかる。

2. RUN, ROSE, RUN    Down

Dolly Parton and James Patterson ドリー・パートン、ジェームズ・パタースン

子供のころから歌を作って歌っていたアニー゠リーは、一文無しでナッシュヴィルのバーのステージに立ったのを機に、ミュージシャンのイーサンと、引退したカントリーソングの女王ルサンナに認められ、スターへの道をのぼっていく。けれども彼女には暗い過去があり、イーサンとルサンナもそれぞれ秘密をかかえていた。

3. SEA OF TRANQUILITY    Down

Emily St. John Mandel エミリー・セントジョン・マンデル

1912年に英国からカナダのヴァンクーヴァーに渡ったエドウィン、2020年のニューヨークで兄や親友に思い出を語られるヴィンセント、2203年に住んでいる月から地球へ新刊のキャンペーンツアーに出かける作家のオリーヴ、そして2401年にタイム・インスティテュートという機関で働くことになったガスペリー……時間軸を行き来しながら綴られる、500年の時を超えた壮大なスペキュレイティブ・フィクション。

4. THE PARIS APARTMENT    Up

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

何もかもうまくいかず、働いていたブライトンのバーも辞めてお金もないジェスは、たったひとりの身寄りである兄のベンをたよってパリに渡る。しばらく泊めてもらうことになったベンのアパルトマンを訪ねてみると、そこは立地も建物も素晴らしく、いかにも人生の再出発にふさわしい場所だったが、数時間前にジェスの携帯電話に届いたメッセージを最後にベンは姿を消していた。

5. WHAT HAPPENED TO THE BENNETTS    Up

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

ジェイソン・ベネットは妻子を車に乗せて帰宅中にカージャックに遭うが、犯人ふたりは仲間割れし、ひとりがもうひとりを射殺して逃げた。殺されたのはギャングの一員で、ジェイソンの仕業だとボスが思いこんだために、一家は命を狙われることになり、FBIの証人保護プログラムを受ける。

6. THE SACRED BRIDGE    New!

Anne Hillerman アン・ヒラーマン

トニイ・ヒラーマンの「リープホーン&チー」シリーズを、娘のアン・ヒラーマンが継承する第7作。ナバホ族警察のジム・チーは休暇のため風光明媚なアンテロープ渓谷を訪れていたが、それには別の目的もあった。かつてジョー・リープホーンが解明できなかった神聖な謎を、自ら解明することだ。やがて虹の橋と呼ばれる聖地で、湖に浮かぶナバホの男の遺体を発見する。

7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Stay

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

8. TIME IS A MOTHER    Down

Ocean Vuong オーシャン・ヴオン

小説『地上で僕らはつかの間きらめく』でも知られるベトナム生まれの詩人オーシャン・ヴオンによる2冊目の詩集。28篇の詩が収録されている。

9. THE DIAMOND EYE    Stay

Kate Quinn ケイト・クイン

1937年のキーウ(キエフ)。大学で歴史を学んでいたミラ・パヴリチェンコは、ナチスドイツのソ連侵攻にともない、赤軍の狙撃兵として戦場に送りこまれる。そしてたぐいまれな才能を発揮し、300名以上の敵兵を殺害する戦果をあげた。ソ連邦英雄を受章したミラはいったん前線を離れるが、仇敵と決着をつけるため、ふたたび戦場に戻る。

10. LESSONS IN CHEMISTRY     Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

【まとめ】

今週は1位と6位に新作がランクインし、先週14位に初登場した作品が10位に上がってきました。1位はジョン・サンドフォードの「獲物」シリーズの主人公、連邦保安官ルーカス・ダヴンポートの養女が活躍する新シリーズのようです。「獲物」は1989年から30作を超える人気シリーズで、10作目の『餌食』まで邦訳出版されています。6位の「リープホーン&チー」シリーズは、父トニイ執筆作品から通算25作目に当たるロングセラー。10位は、テクノロジーや医学、教育分野でコピーライター、クリエイティブ・ディレクターとして活躍してきた女性作家によるデビュー作です。なお、ベストテン外では目立った動きはありませんでした。

佐藤桂(さとう けい)
神奈川件在住の翻訳者です。