アメリカのベストセラー・ランキング

6月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. SPARRING PARTNERS    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

『評決のとき』(新潮文庫)の主人公でミシシッピ州の弁護士ジェイク・ブリガンスが旧友の依頼に応じる“Homecoming”、若き死刑囚の刑執行までの3時間を描いた“Strawberry Moon”、そして殺人罪で服役している父親の法律事務所を引き継いだ弁護士兄弟の対立をテーマにした表題作の計3篇をおさめた中篇集。

 

  1. 2. TOM CLANCY: ZERO HOUR    New!

Don Bentley ドン・ベントレー

トム・クランシー没後、他作家によって書き継がれているジャック・ライアン・ジュニア・シリーズの第9作。ジャック・ジュニアは諜報機関“ザ・キャンパス”のメンバー採用のため韓国へ来ていた。北朝鮮では指導者が負傷して執務遂行が不可能となったことから情勢が混乱。韓国に潜伏していた工作員らが攻撃活動を開始する。ジャックは朝鮮戦争の再発を食いとめられるのか。

 

  1. 3. MEANT TO BE    Down

Emily Giffin エミリー・ギフィン

 

戦争の英雄の祖父と宇宙飛行士の父を持ち、アメリカのロイヤルファミリーと呼ばれる一家に生まれたジョーと、シングルマザーの家庭で育った駆け出しモデルのケイト。ハンプトンズのビーチで出会ってすぐさま惹かれあったふたりだが、身分違いの恋の前にさまざまな障害が立ちはだかる。

 

  1. 4. NIGHTWORK    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

貧しい家で育ったブースは病弱な母を助けたい一心で9歳のころから盗みをはじめた。やがて母が死んでも、金持ちの家だけを狙って盗みを繰り返していたが、ミランダという娘と出会って恋に落ちる。しかし、裏社会の大物に目をつけられていたので、ミランダが巻きこまれることを恐れて身を引いた。12年後、ふたりは再会するが……

 

  1. 5. COUNTERFEIT    New!

Kirstin Chen カースティン・チェン

中国系アメリカ人のアヴァは完璧な人生を送っていた。自身は弁護士であり、外科医の夫と幼い息子とともに美しい家に暮らしている。しかしその生活が破綻したとき、学生時代のルームメイト・ウィニーが現れる。米国籍を持ち社会的信用のあるアヴァを見こんで、事業に協力してもらいたいというのだ。それは中国製偽ブランドバッグの輸入販売だった。

 

  1. 6. THE OMEGA FACTOR    New!

Steve Berry スティーブ・ベリー

ユネスコ職員として文化的遺物の保護に携わるニック・リーは、ベルギー滞在中、1934年に盗難にあって以来発見されていない「ヘントの祭壇画」の1枚を追うことになる。そして、ヴァチカンと謎めいた尼僧院との二千年近くもくすぶりつづける対立を目の当たりにする。

 

  1. 7. RUN, ROSE, RUN    Stay

Dolly Parton and James Patterson ドリー・パートン、ジェイムズ・パタースン

子供のころから歌を作って歌っていたアニー゠リーは、一文無しでナッシュヴィルのバーのステージに立ったのを機に、ミュージシャンのイーサンと、引退したカントリーソングの女王ルサンナに認められ、スターへの道をのぼっていく。けれども彼女には暗い過去があり、イーサンとルサンナもそれぞれ秘密をかかえていた。

 

  1. 8. NIGHTCRAWLING    New!

Leila Mottley レイラ・モトリー

カリフォルニア州オークランドの荒れたアパートメントで、職につかずラップ歌手を夢見る兄とふたりきりで暮らす17歳の少女キアラ。2倍に跳ねあがった家賃を支払うために職を求めていたキアラは仕方なく夜の街に立ち、やがて警察による性暴力という一大スキャンダルの重要証人として表舞台へ引き出される。

 

  1. 9. 22 SECONDS    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マキシン・ペトロ

ウィメンズ・マーダークラブ・シリーズの22作目。サンフランシスコ市警の巡査部長リンジーは、口封じで殺されたとみられる元警官たちの調査をするうちに、メキシコのカルテルによる銃と麻薬の大量密輸事件に巻きこまれていく。

 

 

  1. 10. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

 

【まとめ】

今週は新たに4作品がベストテン入りしました。2位のドン・ベントレーは同シリーズの執筆は2作目ですが、ほかに米国防情報局マット・ドレイクを主人公とした長編軍事スリラーを発表しており、その第1作『シリア・サンクション』が早川書房より昨年刊行されています。5位はシンガポール出身の作家カースティン・チェンの小説第3作。これまでの2作品 “SOY SAUCE FOR BEGINNERS”と“BURY WHAT WE CANNNOT TAKE”は、いずれもアジア系女性を主人公にした作品です。6位のスティーブ・ベリーは、合衆国司法省の元工作員が活躍するコットン・マローン・シリーズが人気です。邦訳は1作目の『テンプル騎士団の遺産』のみですが、シリーズ外作品では『ファティマ 第三の予言』と『ロマノフの血脈』が刊行されています。8位のレイラ・モトリーは、物語の舞台カリフォルニア州オークランド出身の黒人女性で、19歳で出版した本作品がデビュー作。2016年に実際に起きたオークランド警察のスキャンダルを背景に描かれており、オプラ・ウィンフリーのブッククラブでも取りあげられ話題になりました。

 

佐藤桂(さとう けい)
神奈川県在住の翻訳者です。