アメリカのベストセラー・ランキング
7月3日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE HOTEL NANTUCKET New!
Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド
1922年の火災以来、さびれたままの〈ホテル・ナンタケット〉。総支配人となったリズベットは、新しいオーナーであるロンドンの富豪ゼイヴィアから、覆面ホテル・ブロガー、シェリルの高評価を獲得せよと命じられる。目標達成に向けて工夫を凝らすリズベットだが、ホテルそのものはもちろんのこと、従業員と宿泊客もみなそれぞれに複雑な過去を抱えていた。
- 2. SPARRING PARTNERS Down
John Grisham ジョン・グリシャム
『評決のとき』(新潮文庫)の主人公でミシシッピ州の弁護士ジェイク・ブリガンスが旧友の依頼に応じる“Homecoming”、若き死刑囚の刑執行までの3時間を描いた“Strawberry Moon”、そして殺人罪で服役している父親の法律事務所を引き継いだ弁護士兄弟の対立をテーマにした表題作の計3篇をおさめた中篇集。
- 3. HORSE New!
Geraldine Brooks ジェラルディン・ブルックス
1850年代、南北戦争前夜のケンタッキー州。美しい子馬の姿をカンヴァスにとどめた流浪の画家と、子馬とともに売られ、子馬を描く画家を眺めていた馬丁の少年がいた。2019年のワシントンD.C.で、大学院生のセオは歩道に捨てられていた古い馬の油絵を見つける。『マーチ家の父』、『古書の来歴』などで知られるピューリッツァー賞受賞作家による、3つの時代をむすぶ、ある競走馬の物語。
- 4. MEANT TO BE Down
Emily Giffin エミリー・ギフィン
戦争の英雄の祖父と宇宙飛行士の父を持ち、アメリカのロイヤルファミリーと呼ばれる一家に生まれたジョーと、シングルマザーの家庭で育った駆け出しモデルのケイト。ハンプトンズのビーチで出会ってすぐさま惹かれあったふたりだが、身分違いの恋の前にさまざまな障害が立ちはだかる。
- 5. THE MIDNIGHT LIBRARY Up
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
- 6. THE LAST THING HE TOLD ME Up
Laura Dave ローラ・デイヴ
結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。
- 7. TOM CLANCY: ZERO HOUR Down
Don Bentley ドン・ベントレー
トム・クランシー没後、他作家によって書き継がれているジャック・ライアン・ジュニア・シリーズの第9作。ジャック・ジュニアは諜報機関“ザ・キャンパス”のメンバー採用のため韓国へ来ていた。北朝鮮では指導者が負傷して執務遂行が不可能となったことから情勢が混乱。韓国に潜伏していた工作員らが攻撃活動を開始する。ジャックは朝鮮戦争の再発を食いとめられるのか。
- 8. RUN, ROSE, RUN Down
Dolly Parton and James Patterson ドリー・パートン、ジェイムズ・パタースン
子供のころから歌を作って歌っていたアニー゠リーは、一文無しでナッシュヴィルのバーのステージに立ったのを機に、ミュージシャンのイーサンと、引退したカントリーソングの女王ルサンナに認められ、スターへの道をのぼっていく。けれども彼女には暗い過去があり、イーサンとルサンナもそれぞれ秘密をかかえていた。
- 9. DREAM TOWN Up
David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ
退役軍人アロイシャス・アーチャー・シリーズ第3作。1952年の大晦日、カリフォルニアの探偵事務所で働くアーチャーは、女友達のリバティと新年を祝うために訪れたロサンゼルスで、紹介された脚本家ラムの自宅で身元不明の男の死体を発見する。事件の調査を進めるうちにアーチャーの身にも危険が迫る。
- 10. THE SUMMER PLACE Up
Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー
サラは義理の娘、ルビーが婚約し、ケープコッドにある家族の別荘で結婚式を挙げると決めたことに得体の知れない不安を抱いていた。計画が進むなか、サラの夫や母親など、家族の誰もがそれぞれの葛藤と向き合っていく。そして式の当日、各々の抱えている秘密が白日の下にさらされ、衝撃の真実が明らかになる。
【まとめ】
今週は2作品がランクインしました。1位は毎年この時期のトップテンリストの常連ヒルダーブランドによるナンタケット島を舞台にしたサマー・ノベル新作。3位のブルックスは『マーチ家の父 もうひとつの若草物語』(高山真由美訳、武田ランダムハウスジャパン)でピューリッツアー賞を受賞したオーストラリア生まれのアメリカの作家。『古書の来歴』(森嶋マリ訳、武田ランダムハウスジャパン)は第2回翻訳ミステリー大賞に選ばれています。本作はアメリカ競馬史にのこる名馬レキシントンを題材にした歴史小説とのこと。その他15位までに新作はありませんでした。
吉井智津(よしい ちづ) |
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翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。 |