アメリカのベストセラー・ランキング

7月17日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE HOTEL NANTUCKET    Stay

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

1922年の火災以来、さびれたままの〈ホテル・ナンタケット〉。総支配人となったリズベットは、新しいオーナーであるロンドンの富豪ゼイヴィアから、覆面ホテル・ブロガー、シェリルの高評価を獲得せよと命じられる。目標達成に向けて工夫を凝らすリズベットだが、ホテルそのものはもちろんのこと、従業員と宿泊客もみなそれぞれに複雑な過去を抱えていた。

 

  1. 2. SPARRING PARTNERS    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

『評決のとき』(新潮文庫)の主人公でミシシッピ州の弁護士ジェイク・ブリガンスが旧友の依頼に応じる“Homecoming”、若き死刑囚の刑執行までの3時間を描いた“Strawberry Moon”、そして殺人罪で服役している父親の法律事務所を引き継いだ弁護士兄弟の対立をテーマにした表題作の計3篇をおさめた中篇集。

 

  1. 3. SUSPECTS           New!

Danielle Steel  ダニエル・スティール

ファッション業界の女王セオドラは1年前に夫と息子を誘拐されて殺害されるという悲劇に見舞われたが、なんとか仕事に復帰しようとしていた。一方CIAエージェントのマイクは極秘ミッション遂行中に1年前の誘拐殺人事件に行きあたり、セオドラに迫る危険に気づく。

 

  1. 4. THE HOUSE ACROSS THE LAKE    Down

Riley Sager ライリー・セイガー

夫を亡くし、マスコミから逃れてヴァーモントのレイクハウスに引っこんだ役者のケイシー。湖の向こうに住むトムとキャサリンのロイス夫妻を双眼鏡で観察して過ごしていたが、湖で溺れかかったキャサリンを助けたことで夫妻と親しくなる。しかし親密さが増すにつれ、ふたりは見かけどおりに完璧なカップルではないとわかってくる。

 

  1. 5. ESCAPE    Down

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

ビリー・ハーニーの活躍を描くシリーズの3作目。刑務所で脱獄が企てられ、その際にふたりの警察官が命を落とした。ビリーのチームは現場に召集される。収監者たちが消えた刑務所のとある房には、防弾ヴェストとヘルメットがふたつずつ、アサルト・ライフルが2挺、そして、ビリー宛に手書きのメッセージが残されていた。

 

  1. 6. THE MEASURE                      New!

Nikki Erlick ニッキ・エアリック

ある朝、世界中の家の玄関先に小さな木箱が出現する。箱をあければその家に住む22歳以上のおとなの余命がわかるらしい。当然パニックが起こる。箱をあけるか否か、あけて余命を知ったあとはだれとどう生きるか、人々はさまざまな選択を迫られる。

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. LESSONS IN CHEMISTRY    Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 9. THE LAST THING HE TOLD ME    Down

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 10. HORSE    Down

Geraldine Brooks ジェラルディン・ブルックス

1850年代、南北戦争前夜のケンタッキー州。美しい子馬の姿をカンヴァスにとどめた流浪の画家と、子馬とともに売られ、子馬を描く画家を眺めていた馬丁の少年がいた。2019年のワシントンD.C.で、大学院生のセオは歩道に捨てられていた古い馬の油絵を見つける。『マーチ家の父』、『古書の来歴』などで知られるピューリッツァー賞受賞作家による、3つの時代をむすぶ、ある競走馬の物語。

 

 

【まとめ】

あらたに2作品がランクインしました。ロマンティック・サスペンスで定評のあるダニエル・スティールが3位に登場、6位のニッキ・エアリックはこれがデビュー作です。今週は動きが少なく、本コーナーがお休みだった先週につづき1位と2位はヒルダ―ブランドとグリシャム、先週初登場したセイガー、パタースンとエリスのコンビも堅調です。セイガーの邦訳には『すべてのドアを鎖せ』(鈴木恵訳/集英社文庫)があります。中世を舞台にしたオテッサ・モシュフェグのLAPVONAが先週5位にはいりましたが、今週は惜しくも15位です。モシュフェグの邦訳には『アイリーンはもういない』(岩瀬徳子訳/早川書房)があります。なお、圏外では11位にスター・ウォーズのスピンオフ小説STAR WARS: SHADOW OF THE SITH(アダム・クリストファー著)があがっています。

 

唐木田みゆき(からきだみゆき)
翻訳者です。訳書にルーシー・フォーリーの『ゲストリスト』、アリッサ・コールの『ブルックリンの死』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』、『とむらい家族旅行』など。いずれも早川書房より。