アメリカのベストセラー・ランキング

8月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. HEAT 2    New!

Michael Mann and Meg Gardiner マイケル・マン、メグ・ガーディナー

アル・パチーノとロバート・デニーロの“直接対決”が話題を呼んだ1995年のクライム・アクション映画『ヒート』の続編となる小説。同映画を監督したマイケル・マンが初の長編小説作品として執筆。映画のクライマックスとして描かれたロサンゼルスの事件直後からの出来事と、7年さかのぼってシカゴから始まる前日譚とが並行して語られる。

 

  1. 2. THE 6:20 MAN    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

毎朝電車でマンハッタンの投資会社に通勤している“6時20分の男”デイヴァイン。ある朝、匿名のメールが届き、同僚で元恋人のセアラが自社の倉庫で首を吊って死んだことを知らされる。当局は、かつて陸軍の特別部隊にいたデイヴァインに目をつけ、捜査に巻きこんでいく。

 

  1. 3. THE FAMILY REMAINS    New!

Lisa Jewell リサ・ジュエル

テムズ河畔で袋入りの人骨が見つかり、鑑識の結果、30年前の未解決事件と関連があることが判明した。30年前の事件現場で保護されたリビーは成長し、再会したおじのヘンリーたちと、最近消息を知った父親に会いにいく計画を立てていた。一方、南フランスでは男性が刺殺され、被害者の妻レイチェルは、思い出したくない過去を振り返っていた。2019年のベストセラー“THE FAMILY UPSTAIRS”続編。

 

  1. 4. PORTRAIT OF AN UNKNOWN WOMAN    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第22作。ヴェネツィアで穏やかな引退生活を送っていたガブリエルだったが、友人の画商の売った古い肖像画が贋作である可能性を知り、調査に乗り出す。そして大金が動く贋作の世界にみずからも足を踏み入れるが……

 

  1. 5. THE HOTEL NANTUCKET    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

1922年の火災以来、さびれたままの〈ホテル・ナンタケット〉。総支配人となったリズベットは、新しいオーナーであるロンドンの富豪ゼイヴィアから、覆面ホテル・ブロガー、シェリルの高評価を獲得せよと命じられる。目標達成に向けて工夫を凝らすリズベットだが、ホテルそのものはもちろんのこと、従業員と宿泊客もみなそれぞれに複雑な過去を抱えていた。

 

  1. 6. THE IT GIRL    Down

Ruth Ware ルース・ウェア

大学時代にハンナの友人のエイプリルが殺され、その10年後、犯人のネヴィルが獄中で亡くなった。ところが、“犯人は無実だった”、と証拠を示して主張する若いジャーナリストが現われる。結婚して妊娠中のハンナは、過去の事件を調べはじめる。

 

  1. 7. SPARRING PARTNERS    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

『評決のとき』(新潮文庫)の主人公でミシシッピ州の弁護士ジェイク・ブリガンスが旧友の依頼に応じる“Homecoming”、若き死刑囚の刑執行までの3時間を描いた“Strawberry Moon”、そして殺人罪で服役している父親の法律事務所を引き継いだ弁護士兄弟の対立をテーマにした表題作の計3篇をおさめた中篇集。

 

  1. 8. WRONG PLACE WRONG TIME    Down

Gillian McAllister ジリアン・マカリスター

いつも明るい17歳の息子が、母親の目前で見知らぬ若者を殺害し、勾留される。母親のジェンは絶望し途方に暮れていたが、翌朝目を覚ますと、世界は一日前にさかのぼっていた。それから毎朝目を覚ますたび、事件の日から一日ずつ時がもどっていく。どこかに事件を未然に防ぐチャンスがあるのだろうか。ジェンは決定的な瞬間を見つけ出そうとする。

 

  1. 9. TOMORROW, AND TOMORROW, AND TOMORROW    Stay

Gabrielle Zevin ガブリエル・ゼヴィン

サムはハーヴァード大の2年生のとき、幼なじみだったセイディと再会する。ふたりはビデオゲームの開発に取り組んで、渾身の作品を生みだす。それは大ヒットとなり、サムとセイディは学生ながら一夜にして富と名声を手に入れる。30年間にわたるふたりの友情、野心、創造、虚栄、そして愛を描く物語。

 

 

  1. 10. SHATTERED    Down

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第14作。新婚旅行から戻ったマイケルは、古い友人でありFBI捜査官でもあるエミリーが失踪したことを知り、すぐさま管轄外のワシントンDCで捜査に乗り出すが、妨害と脅迫に悩まされる。

 

 

【まとめ】

1位と3位に新作がランクインしました。1位は、映画『ヒート』(1996年日本公開)の続編をマイケル・マン監督が、『心理検死官ジョー・ベケット』(山田久美子訳、集英社文庫)のシリーズなどで知られるメグ・ガーディナーを共著者に迎え、小説の形式で発表したもの。3位は『そして彼女は消えた』(氷川由子、二見文庫)などの邦訳があるリサ・ジュエルの新作スリラー。2019年11月のベストセラー・リストに登場した“THE FAMILY UPSTAIRS”の続編ですが、独立した作品としても楽しめるページターナーとのこと。その他10位までに大きな変動はなく、15位に『西への出口』(藤井光訳、新潮クレスト・ブックス)のモーシン・ハミッドの新作『THE LAST WHITE MAN』が初登場しています。

 

 

吉井智津(よしい ちづ)

翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。