アメリカのベストセラー・ランキング

10月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. VERITY    New!

Colleen Hoover コリーン・フーヴァー

無名の作家ローウェンは、有名作家ヴェリティ・クロフォードの夫ジェイミーから、事故でほぼ寝たきりのヴェリティの共著者として人気シリーズのつづきを書いてもらいたいと依頼される。住み込みで執筆をはじめたローウェンは、ヴェリティの自叙伝らしきものを発見するが、そこには驚きの事実が書かれていた。邦訳は2019年12月刊行の『秘めた情事が終わるとき』(相山夏奏訳、二見文庫)。

 

  1. 2. FAIRY TALE    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

  1. 3. DREAMLAND    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

かつて音楽の道を諦め、ノースカロライナ州で家業の農家を継いだコルビーは、旅先のフロリダ州で才能あるミュージシャン志望の女性モーガンと出会い、たちまち恋に落ちる。一方、6歳の息子を連れてDV夫のもとから逃げだしたベヴァリーは、夫の影に怯えながら苦しい生活を強いられている。そんな3人の運命が思いがけない形で交錯し――

 

  1. 4. THE GOLDEN ENCLAVES    New!

Naomi Novik ナオミ・ノヴィク

スコロマンス魔法学院シリーズ第3作。主人公の少女ガラドリエルは魔物と戦う学校生活を終え、仲間たちとともに無事に卒業する。一見平和かと思われた外の世界には、皆の想像をはるかに超える危険な戦いが待っていた。

 

  1. 5. THE WINNERS    New!

Fredrik Backman フレドリック・バックマン

雪に閉ざされ、森に囲まれたスウェーデンの小さな町ベアタウンを舞台にしたシリーズ第3作。アイスホッケーの強豪であることが誇りのこの町を揺るがす事件から2年。アイスホッケーのライバルである他の町との対立が激しくなり、緊張が高まって、人々の心はむしばまれていく。

 

  1. 6. TREASURE STATE    New!

C.J. Box C・J・ボックス

キャシー・デウェルを主人公とするシリーズ第6作。私立探偵キャシーはふたつの事件を追っていた――ひとつは財宝の在り処を示す詩を酒場に掲示した男を突きとめること、もうひとつは裕福な未亡人たちを騙す詐欺師を見つけ出すことだ。手がかりはモンタナの古い鉱山町アナコンダへとつづいていた。

 

  1. 7. BLOWBACK    Down

James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

大統領から特別任務を与えられたCIAエージェントのグレイとヒメルは苦悩する。法律や人権を無視して外国のスパイを拘束する内容だったからだ。しかも大統は私怨で動いているらしい。ナルシストのサイコパスがアメリカの大統領に選ばれたときの恐怖を描く。

 

  1. 8. VINCE FLYNN: OATH OF LOYALTY    Down

Kyle Mills カイル・ミルズ

原作者ヴィンス・フリンの他界後、カイル・ミルズが第14作から書き継いでいる、ミッチ・ラップを主人公にしたシリーズの第20作。クック大統領から危険視されたラップはやむなくアメリカを離れるが、レギオンと呼ばれる謎の暗殺者に命を狙われることになる。

 

  1. 9. SUSPECT    New!

Scott Turow スコット・トゥロー

アメリカ中部キンドル郡に近いハイランド・アイルの町の女性警察署長ゴメスは、男性警察官3人から、昇進と引き換えに性的関係を迫られたと訴えられた。ゴメスの旧友である弁護士リックと私立探偵のピンキーは、彼女の身の潔白を証明するために奔走する。

 

  1. 10. THE BUTCHER AND THE WREN    Down

Alaina Urquhart アレイナ・アーカート

ルイジアナ州のバイユーで凄惨な犯行を繰り返し、“ブッチャー”の名で呼ばれている連続殺人犯。熟練の法医学者であるレン・ミュラーは知識と経験を活かしてブッチャーに迫るが、これまでのところは相手のほうが一枚上手だった。

 

 

【まとめ】

今週は新たに5作品がベストテン入りしました。1位の“VERITY”は2018年に出版された作品ですが、著者からのことばと新章が加えられたコレクターズ・エディションとして発表されたもののようです。内容については当サイト2020年5月の「読者賞だより(リンク https://honyakumystery.jp/14732 )」でもご紹介しています。4位のナオミ・ノヴィクはテレメア戦記シリーズで知られるファンタジー作家です。スコロマンス魔法学院シリーズでは1作目『闇の魔法学校 (死のエデュケーション)』が邦訳刊行されており、2作目『闇の覚醒 (死のエデュケーション Lesson 2)』も今月出版予定です(ともに井上里訳、静山社)。5位は『幸せなひとりぼっち』(坂本あおい訳、ハヤカワ文庫)などで知られるスウェーデンの作家フレドリック・バックマンの新作です。6位は、ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズで知られC・J・ボックス。このシリーズについては、本サイトに翻訳者の野口百合子さんによる詳しい紹介がありますので、こちら(リンク https://honyakumystery.jp/11771 )をご参照ください。9位はスコット・トゥローのリーガル・スリラー最新作です。私立探偵のピンキーは、『推定無罪』などの作品でおなじみの敏腕弁護士アレハンドロ・“サンディ”・スターンの孫娘という設定です。なお、今週3位の“DREAMLAND”は、本コーナーがお休みだった先週、初登場1位となった作品です。著者ニコラス・スパークスは『きみに読む物語』や『メッセージ・イン・ア・ボトル』で知られ、最近では2020年に『きみと息をするたびに』(雨沢泰訳、アチーブメント出版)が刊行されています。ベストテン外では、13位にケイト・アトキンソン“SHRINES OF GAIETY”がはいりました。また、先週5位にランクインしていたエリザベス・ストラウト“LUCY BY THE SEA” が14位でした。この作品は『私の名前はルーシー・バートン』(小川高義訳、早川書房)のシリーズ第3弾です。

 

佐藤桂(さとう けい)

神奈川県在住の翻訳者です。