アメリカのベストセラー・ランキング

10月30日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. LONG SHADOWS    New!

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第7作。エイモスは新たなパートナーのフレデリカ・“フレディ”・ホワイトと組み、連邦判事とそのボディーガードが殺された事件を追う。判事の両眼はくり抜かれていたが、それは彼女が職に就いているあいだに、多くの敵をつくったことを明確に示していた。

 

 

  1. 2. FAIRY TALE    Down

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

 

  1. 3. THE MAZE    New!

Nelson DeMille ネルソン・デミル

ジョン・コーリー・シリーズの第8作。連邦テロリスト対策特別機動隊(ATTF)を定年退職したコーリーだが、元恋人のベス・ペンローズから依頼を受け、殺人事件の捜査に関わることになる。被害者は、トップシークレットの研究施設に勤めていた生物学者の夫妻だ。

 

 

  1. 4. DREAMLAND    Stay

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

かつて音楽の道を諦め、ノースカロライナ州で家業の農家を継いだコルビーは、旅先のフロリダ州で才能あるミュージシャン志望の女性モーガンと出会い、たちまち恋に落ちる。一方、6歳の息子を連れてDV夫のもとから逃げだしたベヴァリーは、夫の影に怯えながら苦しい生活を強いられている。そんな3人の運命が思いがけない形で交錯し――

 

  1. 5. MAD HONEY    Down

Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

 

 

  1. 6. OUR MISSING HEARTS    Down

Celeste Ng セレステ・イング

オハイオに住む12歳の少年ノアのもとに、ある日、“バード”に宛てられた手紙が届く。“バード”は数年前に姿を消した中国系詩人であるノアの母が、幼い彼につけた呼び名だ。手紙には近年施行された“米国文化伝統保護法”による検閲のあとがあり、差出人の住所はなかったが、ニューヨークで押された消印をたよりにノアは母をさがしはじめる。

 

 

  1. 7. RED, WHITE & ROYAL BLUE    New!

Casey McQuiston ケイシー・マクイストン

アメリカ大統領の息子のアレックスとイギリスの王子ヘンリーはどちらも世間の注目の的だが、アレックスはヘンリーが苦手だった。そんなふたりは、ヘンリーの兄、フィリップ王子のロイヤル・ウェディングでのある出来事をきっかけに仲のよさを世間にアピールしなくてはならなくなり、やがて――。邦訳の刊行は2021年1月に『赤と白とロイヤルブルー』(林啓恵訳、二見文庫)。

 

 

  1. 8. THE HIGH NOTES    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

唯一無二の歌声を持つアイリス・クーパーは、父親とふたりで町から町へと渡り歩きながら、12歳から聴衆のまえで歌いつづけてきた。しかし彼女の得た収入を、父親はギャンブルや酒につぎ込んだ。18歳のとき、ともにステージに立つミュージシャンたちに励まされ、アイリスは父親のもとを離れて自身の夢を追いはじめる。

 

 

  1. 9. RIGHTEOUS PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

ダヴンポートの「獲物」シリーズ第32作。性犯罪の加害者や殺人者などをターゲットに、ひとり殺すたびに慈善団体にビットコインで多額の寄付をする、謎の自警集団“ザ・ファイヴ”による殺人事件が相次いで起きた。連邦保安官ルーカス・ダヴンポートはミネソタ犯罪逮捕局のヴァージル・フラワーズと再びタッグを組んで、捜査に乗りだす。

 

 

  1. 10. VERITY    Down

Colleen Hoover コリーン・フーヴァー

 

無名の作家ローウェンは、有名作家ヴェリティ・クロフォードの夫ジェイミーから、事故でほぼ寝たきりのヴェリティの共著者として人気シリーズのつづきを書いてもらいたいと依頼される。住み込みで執筆をはじめたローウェンは、ヴェリティの自叙伝らしきものを発見するが、そこには驚きの事実が書かれていた。邦訳は2019年12月刊行の『秘めた情事が終わるとき』(相山夏奏訳、二見文庫)。

 

 

【まとめ】

今週は1、3、7、8位に新作がランクインしました。3位の“THE MAZE”は、前作からじつに7年ぶりとなる、ネルソン・デミルのジョン・コーリー・シリーズの最新作です。作品の下敷きになっているのは、アメリカのロングアイランドでじっさいに起きたGilgo Beach murders(ギルゴ・ビーチ連続殺人)という事件です。1996年から約20年のあいだに、10人から16人の女性が犠牲になったとされています。怖いですね。今年の5月にもあらたな証拠が発見されたとの警察発表がありましたが、依然として解決には至っていないようです。7位は、アメリカ大統領の息子とイギリス王室の王子の恋を描いてベストセラーとなった作品。イラスト入りの見返しを備え、ヘンリー視点による新たな物語も加わって、装いも新たにランクインしました。10位の“VERITY”とおなじように、コレクターズ・エディションだということです。

 

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

翻訳者です。訳書に『あなたの知らない心臓の話:動物からヒトまで――新常識に出会う知的冒険』(ビル・シャット/原書房)など。