アメリカのベストセラー・ランキング

11月6日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE BOYS FROM BILOXI            New!

John Grisham ジョン・グリシャム

幼なじみのキースとヒューはミシシッピ南部のリゾートとカジノの街ビロクシで成長し、それぞれ父親の跡を継いでキースは法曹界、ヒューはマフィアの世界へとはいるが、やがてふたりは人生を賭けた裁判に巻きこまれ、法廷で対決することになる。

 

  1. 2. DEMON COPPERHEAD             New!

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 3. FAIRY TALE    Down

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

  1. 4. LONG SHADOWS    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第7作。エイモスは新たなパートナーのフレデリカ・“フレディ”・ホワイトと組み、連邦判事とそのボディーガードが殺された事件を追う。判事の両眼はくり抜かれていたが、それは彼女が職に就いているあいだに、多くの敵をつくったことを明確に示していた。

 

  1. 5. DREAMLAND    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

かつて音楽の道を諦め、ノースカロライナ州で家業の農家を継いだコルビーは、旅先のフロリダ州で才能あるミュージシャン志望の女性モーガンと出会い、たちまち恋に落ちる。一方、6歳の息子を連れてDV夫のもとから逃げだしたベヴァリーは、夫の影に怯えながら苦しい生活を強いられている。そんな3人の運命が思いがけない形で交錯し――

 

  1. 6. MAD HONEY    Down

Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

 

  1. 7. THE MAZE    Down

Nelson DeMille ネルソン・デミル

ジョン・コーリー・シリーズの第8作。連邦テロリスト対策特別機動隊(ATTF)を定年退職したコーリーだが、元恋人のベス・ペンローズから依頼を受け、殺人事件の捜査に関わることになる。被害者は、トップシークレットの研究施設に勤めていた生物学者の夫妻だ。

 

  1. 8. VERITY    Up

Colleen Hoover コリーン・フーヴァー

無名の作家ローウェンは、有名作家ヴェリティ・クロフォードの夫ジェイミーから、事故でほぼ寝たきりのヴェリティの共著者として人気シリーズのつづきを書いてもらいたいと依頼される。住み込みで執筆をはじめたローウェンは、ヴェリティの自叙伝らしきものを発見するが、そこには驚きの事実が書かれていた。邦訳は2019年12月刊行の『秘めた情事が終わるとき』(相山夏奏訳、二見文庫)。

 

  1. 9. OUR MISSING HEARTS    Down

Celeste Ng セレステ・イング

オハイオに住む12歳の少年ノアのもとに、ある日、“バード”に宛てられた手紙が届く。“バード”は数年前に姿を消した中国系詩人であるノアの母が、幼い彼につけた呼び名だ。手紙には近年施行された“米国文化伝統保護法”による検閲のあとがあり、差出人の住所はなかったが、ニューヨークで押された消印をたよりにノアは母をさがしはじめる。

 

  1. 10. LIBERATION DAY            New!

George Saunders ジョージ・ソーンダーズ

奇妙なファンタジーで知られるブッカー賞受賞作家、ジョージ・ソーンダーズの珠玉の短編集。”Love Letter”、”Ghoul”、”Mother’s Day”など九篇がおさめられている。

 

 

【まとめ】

今週は3作品が1、2、10位にランクインしました。1位はリーガル・サスペンスの巨匠グリシャム。メキシコ湾岸のリゾート地が舞台です。2位のキングソルヴァーは人権・環境問題活動家でもあり、邦訳にコンゴの宣教師家族を描いた『ポイズンウッド・バイブル』(永井喜久子訳/DHC)などがあります。10位のソーンダーズは中・短編の著作が多い作家で、ブッカー賞受賞作の『リンカーンとさまよえる霊魂たち』(上岡伸雄訳/河出書房新社)が初の長編でした。最近の邦訳短編集に『十二月の十日』(岸本佐和子訳/河出書房新社)があります。ランク外では11位にジョン・アーヴィングのTHE LAST CHAIRLIFT、12位にデビー・マッコーマーのTHE CHRISTMAS SPIRITがあがってきました。

 

唐木田みゆき(からきだみゆき)

翻訳者です。訳書にアリッサ・コールの『ブルックリンの死』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』、『とむらい家族旅行』など。いずれも早川書房より。