アメリカのベストセラー・ランキング

12月18日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

 

  1. 1. A WORLD OF CURIOSITIES    New!

Louise Penny ルイーズ・ペニー

ガマシュ警部シリーズ第18作。スリー・パインズ村にようやく春が来たが、かつて担当した殺人事件の遺族との再会をまえに、ガマシュは不安を募らせていた。事件当時幼かった、被害女性の子どもたちが大人になって会いにきたのだ。おなじころ、村で発見された160年前の石工の手紙により存在が明らかになった、閉ざされた屋根裏部屋の封印が解かれ――

 

  1. 2. THE BOYS FROM BILOXI    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

幼なじみのキースとヒューはミシシッピ南部のリゾートとカジノの街ビロクシで成長し、それぞれ父親の跡を継いでキースは法曹界、ヒューはマフィアの世界へとはいるが、やがてふたりは人生を賭けた裁判に巻きこまれ、法廷で対決することになる。

 

  1. 3. FAIRY TALE    Down

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

  1. 4. LESSONS IN CHEMISTRY    Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 5. TRIPLE CROSS    Up

James Patterson ジェイムズ・パタースン

刑事アレックス・クロス・シリーズ第30作。ワシントンDCで警備システムをかいくぐり、家族全員を殺害して、証拠も残さないシリアルキラー〝ファミリーマン〟。アレックスは捜査陣に加わるが、ベストセラー作家が被害者同士の共通点を見つけたと言う。

 

  1. 6. DEMON COPPERHEAD    Up

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 7. DREAMLAND    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

かつて音楽の道を諦め、ノースカロライナ州で家業の農家を継いだコルビーは、旅先のフロリダ州で才能あるミュージシャン志望の女性モーガンと出会い、たちまち恋に落ちる。一方、6歳の息子を連れてDV夫のもとから逃げだしたベヴァリーは、夫の影に怯えながら苦しい生活を強いられている。そんな3人の運命が思いがけない形で交錯し――

 

  1. 8. MAD HONEY    Stay

Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

 

  1. 9. THE CHOICE    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ドラゴンハート・トリロジーの最終巻。不思議な導きによってアイルランドへ、そして人間界から異世界タラムへと飛びこんでいったブリーンは、はじめてのクリスマスを迎えようとしていた。善と悪、生と死のはざまで、愛するキーガンとともに戦士として人間として強く成長し、暗黒神オドランとの最後の戦いに挑む。

 

  1. 10. DESERT STAR    Up

Michael Connelly マイクル・コナリー

ロサンゼルス市警で未解決事件捜査班を率いるバラードは、大物政治家の妹が殺害された古い事件を捜査することになった。同市警の元刑事ボッシュは、一家4人が惨殺された事件を引退後も調べつづけていた。それぞれの事件の犯人を突き止めるために、ふたりは協力する。

 

【まとめ】

今週初登場の新作は1つ、ルイーズ・ペニーのガマシュ警部シリーズ最新作が1位にランクインしました。ルイーズ・ペニーといえば、10月にヒラリー・クリントンとの共著『ステイト・オブ・テラー』(吉野弘人訳、小学館)が翻訳刊行され、こちらも話題になりましたが、本シリーズは、CWA新人賞、アガサ賞をはじめとして数々の受賞・ノミネート歴を誇る長寿シリーズ。邦訳は4作目で止まっていますが、Amazonで“THREE PINES”としてドラマ化もされており、カナダ、アメリカ、イギリス等では今月から配信が始まっています。本連載がお休みの先週1位に登場していたノーラ・ロバーツは今週9位。3部作の先行作品『目覚めの朝に花束を』(上・下 香山栞訳、2020年)、『星まとう君に約束を』(上・下 香山栞訳、2021年)がいずれも扶桑社より刊行ずみ。スタンドアローン作品では『夜に心を奪われて』(上・下 古賀紅美訳、2022年)がおなじく扶桑社より7月に刊行されています。

 

吉井智津(よしい ちづ)

翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。