アメリカのベストセラー・ランキング

12月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

 

  1. 1. LESSONS IN CHEMISTRY    Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 2. THE BOYS FROM BILOXI    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

幼なじみのキースとヒューはミシシッピ南部のリゾートとカジノの街ビロクシで成長し、それぞれ父親の跡を継いでキースは法曹界、ヒューはマフィアの世界へとはいるが、やがてふたりは人生を賭けた裁判に巻きこまれ、法廷で対決することになる。

 

  1. 3. FAIRY TALE    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

  1. 4. A WORLD OF CURIOSITIES    Down

Louise Penny ルイーズ・ペニー

ガマシュ警部シリーズ第18作。スリー・パインズ村にようやく春が来たが、かつて担当した殺人事件の遺族との再会をまえに、ガマシュは不安を募らせていた。事件当時幼かった、被害女性の子どもたちが大人になって会いにきたのだ。おなじころ、村で発見された160年前の石工の手紙により存在が明らかになった、閉ざされた屋根裏部屋の封印が解かれ――

 

  1. 5. DEMON COPPERHEAD    Up

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 6. DREAMLAND    Up

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

かつて音楽の道を諦め、ノースカロライナ州で家業の農家を継いだコルビーは、旅先のフロリダ州で才能あるミュージシャン志望の女性モーガンと出会い、たちまち恋に落ちる。一方、6歳の息子を連れてDV夫のもとから逃げだしたベヴァリーは、夫の影に怯えながら苦しい生活を強いられている。そんな3人の運命が思いがけない形で交錯し――

 

  1. 7. TRIPLE CROSS    Down

James Patterson ジェイムズ・パタースン

刑事アレックス・クロス・シリーズ第30作。ワシントンDCで警備システムをかいくぐり、家族全員を殺害して、証拠も残さないシリアルキラー〝ファミリーマン〟。アレックスは捜査陣に加わるが、ベストセラー作家が被害者同士の共通点を見つけたと言う。

 

  1. 8. STELLA MARIS    New!

Cormac McCarthy コーマック・マッカーシー

アリシア・ウェスタンはずっと、妄想型の統合失調症に悩まされてきた。7歳のころには自分のなかの異質な存在に気づき、幻覚を見ていた。1972年、20歳になった彼女は精神科の施設に入り、狂気の本質や、人は共通の経験をするということについて深く考える。神や真実や存在の概念に関する課題を、アリシアが受けたセッションの記録を通して探求した作品。

 

  1. 9. TOM CLANCY:RED WINTER   New!

Marc Cameron マーク・キャメロン

トム・クランシー没後、他作家によって書き継がれているジャック・ライアン・シリーズの第22作。1985年、最新鋭のステルス機F‐117がネヴァダ州の砂漠に墜落した。ソ連は、その機の詳細を何としても手に入れようとする。一方、自身の亡命と引き換えに重要な情報を提供するといってCIAに接触してきた人物の調査のため、ジャック・ライアンは東ドイツに潜入する。

 

  1. 10. MAD HONEY    Down

Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

 

 

【まとめ】

今週は8位と9位に新作がランクインしました。8位のコーマック・マッカーシーの“STELLA MARIS”は、2部作の2作目です。1作目の“THE PASSENGER”は11月に出版され、本コーナーがお休みだった週のランキングで3位に初登場していました。“STELLA MARIS”には、倫理観と科学、狂気の自覚について書かれた“THE PASSENGER” に対する、ひじょうに意欲的な結末が用意されているということです。著者のマッカーシーは現在89歳。1965年のデビュー作が『果樹園の守り手』(山口和彦訳/春風社)という邦題で、9月に出版されました。9位の“TOM CLANCY:RED WINTER” は、マーク・キャメロンが執筆した作品としては6作目です。若き日のジャック・ライアンが、冷戦時代真っただ中の鉄のカーテンの向こうで活躍します。

 

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

翻訳者です。訳書に『あなたの知らない心臓の話:動物からヒトまで――新常識に出会う知的冒険』(ビル・シャット/原書房)など。