アメリカのベストセラー・ランキング

1月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. HELL BENT    New!

Leigh Bardugo リー・バーデュゴ

ゴーストが見える能力を買われ、名門イェール大学に奨学生として迎えられたアレックスは2年生に進級した。イェール大の8つの秘密結社の魔術を監督する9番目の秘密結社リーシー・ハウスのメンバーである彼女は、地獄へ落ちてしまった先輩ダーリントンを救うべく、地獄への門を開く魔術をおこなおうとするが……2019年刊行のファンタジー“NINTH HOUSE”の続編。

 

  1. 2. THE HOUSE OF WOLVES    New!

James Patterson and Mike Lupica ジェイムズ・パタースン、マイク・ルピカ

サンフランシスコでプロフットボール・チーム〈ウルヴズ〉と新聞社などを経営する企業家ジョー・ウルフが死亡、遺言によって後継者に指名されたのは娘のジェニーだった。後継に選ばれなかった兄たちの反感や妨害とも戦いながら慣れない経営に奮闘する彼女は、やがてクルーザーから転落して溺死したとされる父の最期にも不審を抱きはじめる。

 

  1. 3. LESSONS IN CHEMISTRY    Down

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 4. TOMORROW, AND TOMORROW, AND TOMORROW    Up

Gabrielle Zevin ガブリエル・ゼヴィン

サムはハーヴァード大の2年生のとき、幼なじみだったセイディと再会する。ふたりはビデオゲームの開発に取り組んで、渾身の作品を生みだす。それは大ヒットとなり、サムとセイディは学生ながら一夜にして富と名声を手に入れる。30年間にわたるふたりの友情、野心、創造、虚栄、そして愛を描く物語。

 

  1. 5. THE HOUSE IN THE PINES    Down

Ana Reyes アナ・レイズ

マヤが高校生のとき、目の前で親友が謎の転落死を遂げた。その場には当時マヤが付き合っていたフランクという男もいた。8年後、ユーチューブを観ていたマヤは、ダイナーにいた女が突然倒れて死ぬ動画を見つけた。女の向かいにすわっていたのは、あのフランクだった。

 

  1. 6. DEMON COPPERHEAD    Down

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 7. THE BOYS FROM BILOXI    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

幼なじみのキースとヒューはミシシッピ南部のリゾートとカジノの街ビロクシで成長し、それぞれ父親の跡を継いでキースは法曹界、ヒューはマフィアの世界へとはいるが、やがてふたりは人生を賭けた裁判に巻きこまれ、法廷で対決することになる。

 

  1. 8. FAIRY TALE    Down

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

  1. 9. WITHOUT A TRACE    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

海沿いの道に車を走らせていたチャールズは、居眠りして車ごと海に落ちてしまう。九死に一生を得て、オードという心優しい女性の看護を受けて回復するが、そこで気づく。自分は事故死したと見なされるだろうから、愛のない結婚生活に戻る必要はない。姿をくらまし、このままオードとともに生きていく未来がある、と。

 

  1. 10. MAD HONEY    Down

Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

 

【まとめ】

今週は1位と2位に新作が初登場しました。1位に輝いたリー・バーデュゴはYAファンタジー〈魔法師グリーシャの騎士団〉シリーズで知られ、これはNetflixで『暗黒と神秘の骨』としてドラマ化もされています。2位はジェイムズ・パタースンとスポーツジャーナリスト出身の作家マイク・ルピカの共著による、昨年1月刊行の“THE HORSEWOMAN”に次ぐ第2弾。パタースンがインタビューで明かしたところによれば、同じコンビで今年秋ごろに新たな作品を出す予定とのことです。またベストテン外の11位には、『グッド・ガール』(小学館文庫)の邦訳があるメアリー・クビカの“JUST THE NICEST COUPLE”が、15位にはエルナン・ディアズの“TRUST”が入りました。“TRUST”は昨年5月刊行ですが、オバマ元大統領が年末に2022年のお気に入り本の1冊として挙げたことで初のランクインを果たしています。

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。訳書は『噤(つぐ)みの家』、『完璧な家族』(ともにリサ・ガードナー/小学館文庫)、『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル/東京創元社)、『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(シェーン・バウアー/東京創元社)、『ハーフムーン街の殺人』(アレックス・リーヴ/小学館文庫)など。