アメリカのベストセラー・ランキング
2月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. ENCORE IN DEATH         New!
J.D. Robb  J.D. ロブ

イヴ&ローク・シリーズ第56作。芸能界の重要人物が集うきらびやかなパーティーの最中、主催者のセレブ夫妻の夫のほうが毒入りカクテルを飲んで死亡する。それは妻が飲むはずの酒だった。恨みを持つ容疑者のリストがふくれあがる中、事件解明にイヴ刑事が苦闘する。

2. SOMEONE ELSE’S SHOES            New!
Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

富豪の夫から突然離婚を言い渡された妻ニシャ。生活に追われて冴えない日々を送る主婦サム。ジムでジムバッグを取りちがえ、中にはいっていた他人の靴に足をいれることで、それぞれの人生に思わぬ変化が生まれる。ウィットとあたたか味に富むコメディ。

3. LESSONS IN CHEMISTRY    Down
Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

4. TOMORROW, AND TOMORROW, AND TOMORROW    Down
Gabrielle Zevin ガブリエル・ゼヴィン

サムはハーヴァード大の2年生のとき、幼なじみだったセイディと再会する。ふたりはビデオゲームの開発に取り組んで、渾身の作品を生みだす。それは大ヒットとなり、サムとセイディは学生ながら一夜にして富と名声を手に入れる。30年間にわたるふたりの友情、野心、創造、虚栄、そして愛を描く物語。

5. THE HOUSE IN THE PINES    Down
Ana Reyes アナ・レイズ

マヤが高校生のとき、目の前で親友が謎の転落死を遂げた。その場には当時マヤが付き合っていたフランクという男もいた。8年後、ユーチューブを観ていたマヤは、ダイナーにいた女が突然倒れて死ぬ動画を見つけた。女の向かいにすわっていたのは、あのフランクだった。

6. DEMON COPPERHEAD    Down
Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

7. VICTORY CITY             New!
Salman Rushdie サルマン・ラシュディ

14世紀の南インド、女神から力を授かった9歳の少女パンパは、250年にわたって勝利の都ビスナガの建設に尽力し、家父長制の世界で女性の平等を目指すが、時を経て都はしだいに崩壊していく。古代叙事詩の翻訳という形をとった愛と冒険と神話の物語。

8. MAD HONEY    Up
Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

9. UNNATURAL HISTORY                   New!
Jonathan Kellerman ジョナサン・ケラーマン

アレックス・デラウェア・シリーズ38作目。ホームレスを独特の手法で撮影してメディアから絶賛されていた写真家が、ある朝死体で発見された。ホームレスの恨みを買ったのか、それとも凶行の根は被害者の家族にあるのか。臨床心理医アレックスとロス市警のマイロが事件にひそむ陰謀と複雑な構造を解き明かす。

10. THE BOYS FROM BILOXI    Down
John Grisham ジョン・グリシャム

幼なじみのキースとヒューはミシシッピ南部のリゾートとカジノの街ビロクシで成長し、それぞれ父親の跡を継いでキースは法曹界、ヒューはマフィアの世界へとはいるが、やがてふたりは人生を賭けた裁判に巻きこまれ、法廷で対決することになる。

【まとめ】
今週は4作品が1、2、7、9位にランクインしました。1位のJ.D. ロブのイヴ&ローク・シリーズは1995年から書きつづけられていて邦訳も順調に進み、53作目の『名もなき花の挽歌』まで刊行されています。2位のジョジョ・モイーズの邦訳には、世界的な反響を呼んだラブストーリー『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』とロードノベル『ワン・プラス・ワン』があります。7位のサルマン・ラシュディはインド系マジックリアリズムの作家として世界的に有名ですが、著書『悪魔の詩』のためにいまだに命の危険にさらされ、昨年アメリカで講演の際に襲撃されて大怪我を負った事件は記憶に新しいところです。9位ジョナサン・ケラーマンのアレックス・デラウェア・シリーズは1985年からつづく心理分析ミステリーの長寿シリーズですが、残念ながら邦訳は14作目の『マーダー・プラン 臨床心理医アレックス』で止まっています。

 

唐木田みゆき(からきだみゆき)

翻訳者です。訳書にアリッサ・コールの『ブルックリンの死』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』、『とむらい家族旅行』など。いずれも早川書房より。