アメリカのベストセラー・ランキング

3月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. LESSONS IN CHEMISTRY    Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 2. TOMORROW, AND TOMORROW, AND TOMORROW    Up

Gabrielle Zevin ガブリエル・ゼヴィン

サムはハーヴァード大の2年生のとき、幼なじみだったセイディと再会する。ふたりはビデオゲームの開発に取り組んで、渾身の作品を生みだす。それは大ヒットとなり、サムとセイディは学生ながら一夜にして富と名声を手に入れる。30年間にわたるふたりの友情、野心、創造、虚栄、そして愛を描く物語。

 

  1. 3. SOMEONE ELSE’S SHOES    Down

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

富豪の夫から突然離婚を言い渡された妻ニシャ。生活に追われて冴えない日々を送る主婦サム。ジムでジムバッグを取りちがえ、中にはいっていた他人の靴に足をいれることで、それぞれの人生に思わぬ変化が生まれる。ウィットとあたたか味に富むコメディ。

 

  1. 4. DEMON COPPERHEAD    Up

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 5. THE BOYS FROM BILOXI    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

幼なじみのキースとヒューはミシシッピ南部のリゾートとカジノの街ビロクシで成長し、それぞれ父親の跡を継いでキースは法曹界、ヒューはマフィアの世界へとはいるが、やがてふたりは人生を賭けた裁判に巻きこまれ、法廷で対決することになる。

 

  1. 6. THE HOUSE IN THE PINES    Down

Ana Reyes アナ・レイズ

 

マヤが高校生のとき、目の前で親友が謎の転落死を遂げた。その場には当時マヤが付き合っていたフランクという男もいた。8年後、ユーチューブを観ていたマヤは、ダイナーにいた女が突然倒れて死ぬ動画を見つけた。女の向かいにすわっていたのは、あのフランクだった。

 

  1. 7. ENCORE IN DEATH    Down

J.D. Robb  J.D. ロブ

イヴ&ローク・シリーズ第56作。芸能界の重要人物が集うきらびやかなパーティーの最中、主催者のセレブ夫妻の夫のほうが毒入りカクテルを飲んで死亡する。それは妻が飲むはずの酒だった。恨みを持つ容疑者のリストがふくれあがる中、事件解明にイヴ刑事が苦闘する。

 

  1. 8. FAIRY TALE    Up

Stephen King スティーヴン・キング

高校生のチャーリーは、丘の上の大きな屋敷に住む高齢の隣人バウディッチと親交を持つようになる。やがてバウディッチが亡くなるが、終生守ってきた秘密を吹きこんだカセットテープをチャーリー宛に残していた。裏庭の小屋に異世界への入口があるという。

 

  1. 9. MAD HONEY    Down

Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan ジョディ・ピコー、ジェニファー・フィニィ・ボイラン

元夫の暴力を逃れて、故郷のニューハンプシャーで父親から養蜂業を引き継いたオリヴィア。大学進学を控えた息子のアッシャーとの関係も良好で、シングルマザーとしての人生は順調だったかに見えた。そんな折、複雑な過去から逃れ、母親とともに町に引っ越してきた転入生のリリーが遺体で見つかり、アッシャーに殺人の容疑がかかる。

 

  1. 10. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。邦訳『ミッドナイト・ライブラリー』(浅倉卓弥訳)がハーパーコリンズ・ジャパンより刊行されている。

 

【まとめ】

今週は10位以内に新作のランクインはありませんでした。マット・ヘイグの『ミッドナイト・ライブラリー』は104週連続ランクインし、『ザリガニの鳴くところ』に迫る勢いのロングセラーとなっています。グラミー賞3年連続ノミネートで話題を呼んだ韓国の男性グループBTS(防弾少年団)のメンバーが、『In the SOOP』というバラエティで読んだ書籍としてSNSで注目もされました。

10位圏外では、14位にグレッグ・ハーウィッツ“The Last Orphan”(Orphan Xシリーズ8作目)がランクイン。孤児だった主人公が極秘プログラムによって暗殺者として養成され、そこを逃れた後の物語となっています。

 

 

関 麻衣子(せき まいこ)

埼玉在住の翻訳者。主な訳書に『ボーイズクラブの掟』エリカ・カッツ(早川書房)、『殺人ゲーム』レイチェル・アボット(角川文庫)、『弁護士ダニエル・ローリンズ』ヴィクター・メソス(早川書房)など。