アメリカのベストセラー・ランキング

4月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. LESSONS IN CHEMISTRY    Stay

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 2. HANG THE MOON    New!

Jeannette Walls ジャネット・ウォールズ

サリーの父は小さな町の有力者で、母は、父と口論しているときに亡くなっていた。サリーが8歳のときに父は再婚し、弟が誕生する。才覚のあるサリーは、気弱な弟に父のようになってほしいと無謀なことを教えるが、それが事故につながり、彼女は家を追い出されてしまう。9年後に故郷にもどったサリーは、酒の密造者として本領を発揮する。

 

3.HELLO BEAUTIFUL    Up
Ann Napolitano アン・ナポリターノ

不幸な家庭で愛情を得られずに育ったウィリアムは、バスケットボール選手として遠方へ進学し家を離れた。大学で出会ったイタリア系のジュリアは、4姉妹と両親の深い絆で結ばれた家族のなかにウィリアムを招きいれるが、やがてそれぞれの思いはすれ違っていく。オルコットの『若草物語』へのオマージュをこめて描かれた家族の物語。

 

4.LOYALTY    New!
Lisa Scottoline リザ・スコットライン

舞台は、マフィアが台頭しはじめたころのシチリア。地主の土地でレモンを栽培するフランコの夢は自分の果樹園を持つことだが、厳格な身分制度のせいで、その野望は阻まれている。より良い未来を手に入れようと、フランコは地主に忠誠心を示すためなら何でもするつもりだった。地主からひとりの少年を誘拐するように言われた彼は、ある決断をする。

 

  1. 5. TOMORROW, AND TOMORROW, AND TOMORROW    Stay

Gabrielle Zevin ガブリエル・ゼヴィン

サムはハーヴァード大の2年生のとき、幼なじみだったセイディと再会する。ふたりはビデオゲームの開発に取り組んで、渾身の作品を生みだす。それは大ヒットとなり、サムとセイディは学生ながら一夜にして富と名声を手に入れる。30年間にわたるふたりの友情、野心、創造、虚栄、そして愛を描く物語。

 

  1. 6. I WILL FIND YOU    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

3歳の息子マシューを殺害したとされ、終身刑に服しているデイヴィッド。だが、息子はおそらくまだ生きているという情報を得て、息子を救い自分の無実を証明し、真実を突きとめるために脱獄を計画する。

 

  1. 7. COUNTDOWN    Down

James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

元米陸軍情報将校でCIAエージェントのエイミー・コーンウォールが活躍するシリーズの第2作。中東での人質救出作戦に携わっていたエイミーは、アメリカをねらった大規模テロの計画を知る。早く食い止めなければ、何千人もの命に危険が及び、エイミーの夫と娘も危ない。エイミーはニューヨークへと急ぐ。

 

  1. 8. PINEAPPLE STREET    Down

Jenny Jackson ジェニー・ジャクソン

高級住宅地ブルックリン・ハイツのパイナップル・ストリートに邸宅を構える富豪ストックトン家の3人きょうだい。この豪邸に住むことになった長男コードの妻で中流家庭出身のサーシャは姑との関係に悩み、長女で主婦のダーリーは夫のリストラで経済的苦境に直面する。末っ子のジョージアナは不倫の恋に傷ついたあと、すべての財産の放棄を決意する。上位1%の富裕層の悲喜こもごもを皮肉とユーモアを散りばめて描く家族小説。

 

  1. 9. DEMON COPPERHEAD    Stay

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 10. REMARKABLY BRIGHT CREATURES   Up

Shelby Van Pelt シェルビー・ヴァン・ペルト

夫の死後、トーヴァは水族館で夜間に清掃員の仕事をしながら、30年まえにピュージェット湾で行方がわからなくなった息子のエリックの件に折り合いをつけていた。そんな彼女が、水族館に住むミズダコのマーセラスと友だちになる。気難し屋のマーセラスだが、彼女のために無脊椎な体を駆使して、エリックが姿を消した夜になにが起こったかを推測する。

 

【まとめ】

今週は2位と4位に初登場の新作がランクインしました。2位のジャネット・ウォールはジャーナリスト。自身の過酷な半生をつづった『ガラスの城の約束』(古草秀子訳/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)は、ブリー・ラーソン主演で映画化もされました。4位のリザ・スコットラインは1994年にデビューし、翌年には『最後の訴え』(高瀬素子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)でエドガー賞最優秀ペイパーバック賞を受賞しています。10位の“REMARKABLY BRIGHT CREATURES”の刊行は2022年3月で、著者ヴァン・ペルトのデビュー作です。最近では12位前後に留まっていましたが、今週、10位にランクインしました。主人公のトーヴァと友だちになるマーセラスはミズダコで、英名は「giant Pacific octopus」です。「giant」という語が示すとおり、脚(手)を広げたときの体長は3メートルから4メートルほどで、世界一大きなタコだということです。

 

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

翻訳者です。訳書に『あなたの知らない心臓の話:動物からヒトまで――新常識に出会う知的冒険』(ビル・シャット著/原書房)など。