アメリカのベストセラー・ランキング

4月23日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. LESSONS IN CHEMISTRY    Stay

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 2. HOMECOMING          New!

Kate Morton ケイト・モートン

失業したジャーナリストのジェスは、最愛の祖母が倒れたと知ってロンドンから故郷のシドニーへもどり、そのとき祖母の家の屋根裏で遠い昔の不可解な殺人事件の実録本をたまたま見つけた。当時の被害者一家と自分の家族とのつながりを知って衝撃を受けたジェスは、事件について調べはじめる。

 

  1. 3. ROMANTIC COMEDY                 New!

Curtis Sittenfeld カーティス・シッテンフェルド

コメディー番組のシナリオを書いているサリーは、華やかな業界にいてもすてきな出会いにめぐまれず、恋愛をなかばあきらめていた。とはいえ、並みの才能と平凡な容姿しか持たない同業の男たちが一流女優やモデルと関係を持てることに納得できない。そんな折、サリーは番組の仕事を通して超有名な男性シンガーと意気投合し、一瞬心をときめかせるのだが……

 

  1. 4. HANG THE MOON    Down

Jeannette Walls ジャネット・ウォールズ

サリーの父は小さな町の有力者で、母は、父と口論しているときに亡くなっていた。サリーが8歳のときに父は再婚し、弟が誕生する。才覚のあるサリーは、気弱な弟に父のようになってほしいと無謀なことを教えるが、それが事故につながり、彼女は家を追い出されてしまう。9年後に故郷にもどったサリーは、酒の密造者として本領を発揮する。

 

  1. 5. TOMORROW, AND TOMORROW, AND TOMORROW    Stay

Gabrielle Zevin ガブリエル・ゼヴィン

サムはハーヴァード大の2年生のとき、幼なじみだったセイディと再会する。ふたりはビデオゲームの開発に取り組んで、渾身の作品を生みだす。それは大ヒットとなり、サムとセイディは学生ながら一夜にして富と名声を手に入れる。30年間にわたるふたりの友情、野心、創造、虚栄、そして愛を描く物語。

 

  1. 6. HELLO BEAUTIFUL    Down

Ann Napolitano アン・ナポリターノ

不幸な家庭で愛情を得られずに育ったウィリアムは、バスケットボール選手として遠方へ進学し家を離れた。大学で出会ったイタリア系のジュリアは、4姉妹と両親の深い絆で結ばれた家族のなかにウィリアムを招きいれるが、やがてそれぞれの思いはすれ違っていく。オルコットの『若草物語』へのオマージュをこめて描かれた家族の物語。

 

  1. 7. TRESS OF THE EMERALD SEA                New!

Brandon Sanderson ブランドン・サンダースン

エメラルドグリーンの海に浮かぶ島で平穏に暮らしていた少女トレスは、航海中の災難に見舞われた友達のチャーリーを助けるために、死の海の魔女に会いにいこうと決意し、密航して島を出るが、外の世界では海賊や胞子の海など、さまざまな危険が待ち受けていた。

 

  1. 8. THE SOULMATE            New!

Sally Hepworth サリー・ヘプワース

美しい海辺の崖の上に夢のマイホームを築いたゲイブとピッパ。あいにくその崖は飛びおり自殺の名所でもあり、ゲイブは命を絶とうとする人々に声をかけては思いとどまらせていた。けれども、ある女性のときだけはちがった。その女性がゲイブの知り合いだったと知り、ピッパの胸に疑惑が湧き起こる。

 

  1. 9. I WILL FIND YOU    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

3歳の息子マシューを殺害したとされ、終身刑に服しているデイヴィッド。だが、息子はおそらくまだ生きているという情報を得て、息子を救い自分の無実を証明し、真実を突きとめるために脱獄を計画する。

 

  1. 10. COUNTDOWN    Down

James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

元米陸軍情報将校でCIAエージェントのエイミー・コーンウォールが活躍するシリーズの第2作。中東での人質救出作戦に携わっていたエイミーは、アメリカをねらった大規模テロの計画を知る。早く食い止めなければ、何千人もの命に危険が及び、エイミーの夫と娘も危ない。エイミーはニューヨークへと急ぐ。

 

【まとめ】

今週は4作品が2、3、7、8位にランクインしました。2位のケイト・モートンといえば、『忘れられた花園』と『秘密』が翻訳ミステリー大賞に輝き、その後の『湖畔荘』もおおいに人気を博したことはミステリーファンの記憶に刻まれていると思います。3位のシッテンフェルドは鋭い観察眼とウィットで女性の人生を描くことで定評があり、たとえば過去の作品では、もしヒラリー・クリントンがビル・クリントンと結婚しない人生を選んでいたらという想定で歴史改変小説RODHAMを書いています。7位のサンダースンはファンタジーの人気作家でミストボーン・シリーズ(『ミストボーン―霧の落とし子―』など)をはじめ多数の邦訳があります。これはスタンドアローン作品ですが、クラウドファンディング・プロジェクトで売り出して話題を呼んだ新作小説4つのうちの第1作目となっています。8位のサリー・ヘプワースはユニークな味わいのドメスティック・スリラーで注目されているオーストラリア在住の作家です。

 

 

唐木田みゆき(からきだみゆき)

翻訳者です。訳書にアリッサ・コールの『ブルックリンの死』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』、『とむらい家族旅行』など。5月に歴史ミステリー『空軍輸送部隊の殺人』が刊行されます。いずれも早川書房より。