アメリカのベストセラー・ランキング

8月20日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. FOURTH WING    Stay

Rebecca Yarros レベッカ・ヤロス

ナヴァレ王国に暮らす20歳のヴァイオレットは父と兄の死をきっかけに、将軍である母の命でドラゴンライダー養成所に入ることに。エリート戦士であるドラゴンライダーになるべくしのぎを削るライバルたちのなかで、人より小柄で体の弱いヴァイオレットははたして過酷な選考を生き残れるのか――ファンタジーの新シリーズ第1作。

 

  1. 2. TOM LAKE    New!

Ann Patchett アン・パチェット

2020年春、ラーラの娘三人が帰省してくる。ラーラは若い頃、劇団トム・レイクで有名な俳優と恋に落ちたのだが、娘たちがその当時の話を聞きたがるので語ることにした。ラーラの過去を聞いた三人の娘たちは、それぞれの人生や母親との関係、世間との対峙の仕方について、あらためて考え直すことになる。

 

  1. 3. LESSONS IN CHEMISTRY    Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 4. OUT OF NOWHERE    New!

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

児童書作家のエルは二歳の息子と地域の祭りを楽しんでいたが、そこで銃乱射事件に巻きこまれてしまう。息子を助けようとした男カルダーと出会ったエルは、互いに強く惹かれあうのを感じる。しかし悲劇の上に成り立つ関係はあまりにも辛く、事件の犯人が捕まらず野放しになっていることも、ふたりを苦悩に陥らせるのだった。

 

  1. 5. THE COVENANT OF WATER    Up

Abraham Verghese エイブラハム・ヴァルギーズ

20世紀の南インドのケララ州を舞台に、ある一家の3世代にわたる物語をつづった大河小説。1900年、12歳の少女アマキは2歳の息子ジョジョを持つ40歳の男やもめのもとへ嫁ぐ。アマキは16歳で娘を出産するが、継子のジョジョは10歳のとき用水路で溺死してしまう。アマキの一家はその後も疫病や飢饉や政治動乱など多くの苦難に見舞われる。

 

  1. 6. DEMON COPPERHEAD    Up

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 7. HAPPY PLACE    Down

Emily Henry エミリー・ヘンリー

ハリエットとウィンは理想のカップルだったが、5カ月前に別れてしまい、そのことを友人たちに言えずにいた。ふたりは夏に友人たちとメイン州のコテージで1週間の休暇を楽しむのが毎年の恒例行事になっていたが、まわりに気を使わせないため、今年はまだ付き合っているふりをして参加することを決める。

 

  1. 8.  THE COLLECTOR    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第23作。世界で最も価値のある絵画が消えた。ガブリエルはその行方を追うため、華麗なテクニックを持つ窃盗グループに加わる。しかし、ロシアと西側諸国との間の思いもよらない衝突を防ぐために、死に物狂いで奔走することになる。

 

  1. 9. THE FIVE-STAR WEEKEND    Stay

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

人気料理ブロガーのホリスは、心臓外科医の夫を交通事故で失う。ホリスは人生のさまざまな局面で会った人たち――子供のころの友達、大学時代のルームメイト、子育て時代のママ友、ブログのファン――をナンタケット島に集め、週末を過ごすことになる。

 

  1. 10. DEAD FALL    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

スコット・ハーヴァス・シリーズ第22作。戦争で荒廃したウクライナの国境地帯でロシアの傭兵部隊が暴走して蛮行が繰り広げられ、アメリカ人救助隊員たちが殺害される。アメリカのトップスパイ、ハーヴァスは事態収拾のために現地へ送りこまれる。

 

【まとめ】

今週は2作品がランクインしました。2位のアン・パチェットは『密林の夢』(芹澤恵訳)、『ベル・カント』(山本やよい)などの邦訳があります。4位のサンドラ・ブラウンの新作は、銃乱射事件という重いテーマにあえて挑んだと著者が語っています。

本連載がお休みだった先週には、今週10位のブラッド・ソーがランクインしました。シリーズ11作目『ブラック・リスト‐極秘抹殺司令‐』(伏見威蕃)が邦訳刊行されています。

10位圏外に目立った動きはありませんでした。

 

 

関 麻衣子(せき まいこ)

埼玉在住の翻訳者。主な訳書に『その輝きを僕は知らない』ブランドン・テイラー、『ボーイズクラブの掟』エリカ・カッツ、『弁護士ダニエル・ローリンズ』ヴィクター・メソス(いずれも早川書房)など。