アメリカのベストセラー・ランキング

9月24日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

  1. 1. A LEGACY OF SPIES    New!

John le Carré ジョン・ル・カレ

 “サーカス”ことイギリス諜報部を引退して農場で暮らしていたピーター・ギラムは、冷戦時代にジョージ・スマイリーらとともに携わった諜報活動に関する調査のため、ロンドンへ呼びもどされる。伝説のスパイ、スマイリーが26年ぶりに登場するという最新作。本年11月に早川書房より邦訳刊行予定。

 

  1. 2. SECRETS IN DEATH    New!

J.D. Robb  J・D・ロブ

マンハッタンのシックなバーで、社交界でプロのゴシップ屋と呼ばれる女が殺害された。被害者は人々のプライバシーを売るだけでなく、つかんだ情報で相手を脅迫していたことがわかった。近未来SFサスペンスのイヴ&ローク・シリーズ第45作。

 

  1. 3. ENEMY OF THE STATE    New!

Kyle Mills カイル・ミルズ

サウジアラビア王の甥がISISに資金援助しているとわかり、ミッチ・ラップはサウジとアメリカとの同盟関係を脅かさないよう、CIAを離れて任務に当たる。だが、アメリカ同時多発テロ後に結ばれた両国間の密約を知り、アメリカ政府からも追われる身となる。原作者ヴィンス・フリンの他界後、14作目からカイル・ミルズが書き継いでいるミッチ・ラップ・シリーズの第16作。

 

  1. 4. Y IS FOR YESTERDAY    Down

Sue Grafton スー・グラフトン

私立探偵キンジー・ミルホーン・シリーズの第25作。1979年、エリート校にかよう4人の少年が14歳のクラスメートに性的暴行を加え、その様子を撮影するという事件が起こる。4人のうち3人は逮捕されたが、主犯格のひとりは行方をくらましていた。10年後、釈放された犯人のひとりのもとへ、何者かから脅迫状が届く。

 

  1. 5. GLASS HOUSES    Down

Louise Penny ルイーズ・ペニー

ガマシュ警部シリーズの第13作。モントリオールの裁判所の証言台に立ち、スリー・パインズ村で昨秋発生した殺人事件について証言するガマシュ元警部。ことの発端は、村のビストロで開かれたハロウィン・パーティに仮面をかぶった黒ずくめの不審人物があらわれたことだった――

 

  1. 6. THE RIGHT TIME    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

7歳で母に捨てられ、14歳で父を亡くしたのち、ミステリー小説だけを心の慰めに育ったアレクサンドラ。「男は男の書いたミステリーしか読まない」という亡き父の言葉を胸に、アレクサンダー・グリーンの名で男性作家を装ってデビューを果たすも、成功とともに二重生活の負担に苦しむようになる。

 

  1. 7. THE WESTERN STAR    New!

Craig Johnson クレイグ・ジョンソン

ワイオミング州の保安官ウォルト・ロングマイヤを主人公にした人気シリーズ第13作。1972年、ベトナム戦争からもどり結婚したばかりの若いウォルトは保安官代理となり、毎年恒例の州保安官協会のイベントに参加して、観光蒸気機関車ウエスタン・スター号に乗車した。若き日の記憶と、ある連続殺人犯の仮釈放審理に寄せる現在の思いが交差する。

 

  1. 8. CAMINO ISLAND    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

プリンストン大学の図書館で厳重に保管されていた古い原稿が盗まれた。若い女性作家のマーサーは謎めいた女性から依頼を受け、フロリダの島で人気書店を営みながら裏では稀覯本の闇取引で儲けているというブルースを、秘密裏に調査することになる。

 

  1. 9. DARK LEGACY    New!

Christine Feehan クリスティン・フィーハン

パラノーマル・ロマンス、闇の一族カルパチアン・シリーズ(“Dark”シリーズ)第31作。悪のヴァンパイアにより苦しめられていた霊能力者のエメリーンと、運命の伴侶(ライフメイト)を探していたカルパチアン一族のドラゴミールが出会い、互いを救う。

 

  1. 10. THE STORE    Down

James Patterson and Richard DiLallo ジェイムズ・パタースン、リチャード・ディラロ

“ザ・ストア”がユーザーの需要を予測し、自宅まで商品をドローンで配達する近未来。人々は便利な生活を享受しているが、ニューヨークに住むライターの夫妻はその裏側を探ろうとする。“ザ・ストア”の真の目的に気づき、それを本にまとめようとしたふたりを、どこまでも監視の目が追う。

 

【まとめ】

5作品が新たにベストテン入りを果たしました。1位はスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレが生んだ冷戦時代の英国のスパイ、ジョージ・スマイリーの元同僚であるギラムが主人公。『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』、『スクールボーイ閣下』、『スマイリーと仲間たち』の三部作で知られるスマイリーが復活するとあって、話題を呼んでいます。2位のイヴ&ローク・シリーズは、今月28日にヴィレッジブックスより『歪んだ絆の刻印 イヴ&ローク43』が刊行予定です。3位のミッチ・ラップ・シリーズでは、このたび第11作“AMERICAN ASSASSIN”が映画化され、今月15日にアメリカで公開されました。同シリーズで邦訳が出ているのは『謀略国家』、『強権国家』(二見文庫)の2作品です。また、9位の闇の一族カルパチアン・シリーズは、第3作『夜霧は愛とともに』(二見文庫)まで刊行されています。ベストテン外では、15位に『悪魔の詩』の作者として知られるサルマン・ラシュディの“THE GOLDEN HOUSE”が登場しています。

 

  1. 佐藤桂(さとう けい)

    神奈川県在住の翻訳者です。訳書に『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳)など。