アメリカのベストセラー・ランキング

10月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. SLEEPING BEAUTIES    New!
Stephen King and Owen King スティーヴン・キング オーエン・キング

スティーヴン・キングと次男オーエン・フィリップ・キングによる、超常現象サスペンス小説。アパラチア地方の小さな田舎町にある女子刑務所で、眠りについた女たちが白い繭状の膜に包まれるという怪現象が発生した。しかも、膜を破って眠りを妨げると、凶暴化して襲いかかってくるという。だが、女性たちが次々と繭に覆われていく中で、イーヴィーという謎めいた女だけは、この奇病に冒されなかった。イーヴィーは、希少な例外として研究されるべき存在なのか、それとも葬りさるべき悪魔なのか。男たちは彼女を巡って激しく対立し、女性が姿を消した世界は、混乱に陥っていく。

 

2. DON’T LET GO           New!
Harlan Coben ハーラン・コーベン

ニュージャージーの刑事ナポレオン・ドゥマス(通称ナップ)の双子の兄弟レオは、高校三年生のとき、ガールフレンドのダイアナとともに、線路上で遺体となって発見された。同じ頃、ナップの恋人マウラも、理由も告げず姿を消していた。
以来ナップは、マウラの行方を追い、レオの死の真相を探っていたが、ある日、高校時代のクラスメートでもある同僚を殺した容疑者の車から、マウラの指紋が発見される。ますます深まる謎を追求するうちに、レオとダイアナの死の真相が明らかになっていく。

 

3. A COLUMN OF FIRE    Stay
Ken Follet ケン・フォレット

『大聖堂』、『大聖堂‐果てしなき世界』に続く歴史大河シリーズ第3作。16世紀イギリス。故郷である大聖堂の町キングスブリッジに戻ったネッドは、国を引き裂く宗教の対立が、恋人マージェリーとの仲をも引き裂こうとしていることを知る。やがてエリザベス1世の治世となり、新設された情報組織のスパイたちとともに、ネッドとマージェリーらもまた激動の半世紀へと足を踏みいれていく。

 

4.THE CUBAN AFFAIR    Down
Nelson DeMille ネルソン・デミル

アメリカ陸軍を退役したダニエル・グレアム・マコーミック(通称マック)は、現在、マイアミ州キー・ウェストで釣り客相手のチャーター船の船長をしている。ある日、反カストロ・グループとの関わりが深い弁護士のカルロスに、キューバ系アメリカ人のサラを紹介される。彼女の祖父はキューバ革命のときにアメリカに亡命したが、その際、キューバに6千万米ドルを隠してきたらしい。アメリカとキューバが国境正常化に向けて動き出したいま、第3者に発見されるまえに祖父のお金を見つけたいというサラの依頼で、マックは危険な船旅に出発することになる。

 

5. HAUNTED        Down
James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事、マイケル・ベネットを主人公にしたシリーズの10作目。休暇でメイン州に出かけたベネット一家だったが、滞在先で凄惨な殺人事件が起こり、マイケルは地元の警察に協力を求められる。しかし彼が事情を訊こうとしても、大都会からやって来た刑事に地元の人々は口を開こうとせず、その後もつづいて死体が発見される。そんななかで出会ったホームレスの少女を相棒に、マイケルは事件の真相に迫ろうとする。

 

6. THE GIRL WHO TAKES AN EYE FOR AN EYE    Down
David Lagercrantz ダヴィド・ラーゲルクランツ

故スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作の後を引き継ぐ、『ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女』の作者によるシリーズ続編。手段を選ばず少年を助けたことで女子刑務所に収監されたリスベットは、ミカエルの手を借り、自らの幼少期の秘密を探っていく。

 

7. TO BE WHERE YOU ARE        Down
Jan Karon ジャン・カロン

ノース・カロライナの架空の田舎町ミットフォードを舞台に、住民たちの悲喜こもごもを描いたヒューマンドラマ・シリーズ第14作。主人公の牧師夫妻の養子ドゥーリーは前作でソウルメイトのレイスと結婚したが、さっそく経済的な難局に直面し、開業した動物病院の経営も打撃を受ける。一方で、ふたりの養子のジャックには輝かしい未来が開かれ、ドゥーリーの実の家族が抱えていた深刻な問題にも、解決の兆しが見えはじめる。

 

8.A LEGACY OF SPIES    Down
John le Carré ジョン・ル・カレ

 “サーカス”ことイギリス諜報部を引退して農場で暮らしていたピーター・ギラムは、冷戦時代にジョージ・スマイリーらとともに携わった諜報活動に関する調査のため、ロンドンへ呼びもどされる。伝説のスパイ、スマイリーが26年ぶりに登場するという最新作。本年11月に早川書房より邦訳刊行予定。

 

9. ENEMY OF THE STATE    Down
Kyle Mills カイル・ミルズ

サウジアラビア王の甥がISISに資金援助しているとわかり、ミッチ・ラップはサウジとアメリカとの同盟関係を脅かさないよう、CIAを離れて任務に当たる。だが、アメリカ同時多発テロ後に結ばれた両国間の密約を知り、アメリカ政府からも追われる身となる。原作者ヴィンス・フリンの他界後、14作目からカイル・ミルズが書き継いでいるミッチ・ラップ・シリーズの第16作。

 

  1. 10. LITTLE FIRES EVERYWHERE   Down
    Celeste Ng セレスト・イン

90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。

 

【まとめ】

ベテランふたりの作品が、初登場で1位、2位にランクインしました。1位は巨匠スティーヴン・キングと次男オーエン・フィリップ・キングによる共著で、小説の出版前から、マイケル・シュガー(『The Knick/ザ・ニック』)とアシュリー・ザルタ(『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』)のプロデュースによるTVシリーズ化が決定しています。息子のオーエン・キングにとっては、有名な俳優を父に持つ息子の葛藤を描いた2013年刊行の”Double Feature“以来の作品です。2位の”DON’T LET GO“は、ハーラン・コーベンによるスタンドアローンの新作スリラーで、同氏のベスト10入りは、マイロン・ボライター・シリーズの第11作“HOME“以来、およそ一年ぶりになります。昨年3月に刊行された、同じくスタンドアローンの”Fool Me Once“は、ジュリア・ロバーツの主演で映画化が決まっています。1、2位以外は、ベスト10外を含め、大きな変動はありませんでした。

 

  1. 服部理佳(はっとり りか)

    翻訳者。訳書は『セレクションⅠ 片恋協奏曲』他セレクションシリーズ(ポプラ社)、『プリンセスブートキャンプ』(アルファポリス)など。