アメリカのベストセラー・ランキング
10月22日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. ORIGIN New!
Dan Brown ダン・ブラウン
元教え子で天才IT起業家の富豪カーシュが行う会見に列席するため、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れたラングドン。だが、あらゆる信仰の根幹を揺るがす一大発見の内容が明かされようとした瞬間、カーシュが射殺され……われわれはどこから来て、どこへ行くのか。女性館長アンブラとともに、ラングドンは人類の起源と未来をめぐる謎を追う。進化論とAIがテーマのシリーズ第5作。KADOKAWAより邦訳が来春刊行予定。
- 2. SLEEPING BEAUTIES Down
Stephen King and Owen King スティーヴン・キング オーエン・キング
スティーヴン・キングと次男オーエン・フィリップ・キングによる、超常現象サスペンス小説。アパラチア地方の小さな田舎町にある女子刑務所で、眠りについた女たちが白い繭状の膜に包まれるという怪現象が発生した。しかも、膜を破って眠りを妨げると、凶暴化して襲いかかってくるという。だが、女性たちが次々と繭に覆われていく中で、イーヴィーという謎めいた女だけは、この奇病に冒されなかった。イーヴィーは、希少な例外として研究されるべき存在なのか、それとも葬りさるべき悪魔なのか。男たちは彼女を巡って激しく対立し、女性が姿を消した世界は、混乱に陥っていく。
- 3. MANHATTAN BEACH New!
Jennifer Egan ジェニファー・イーガン
大恐慌のさなかのマンハッタン。11歳のアナの父親は、ナイトクラブを経営するギャングのデクスターの口利きで職を得るが、のちに行方知れずとなる。第二次大戦勃発後、ブルックリン海軍工廠で女性初の潜水士として働きだしたアナは、デクスターに再会し、父の失踪の理由を探る。『ならずものがやってくる』でピュリッツァー賞、全米批評家協会賞を受賞した著者の7年ぶりの新作長篇。
- 4. A COLUMN OF FIRE Down
Ken Follet ケン・フォレット
『大聖堂』、『大聖堂‐果てしなき世界』に続く歴史大河シリーズ第3作。16世紀イギリス。故郷である大聖堂の町キングスブリッジに戻ったネッドは、国を引き裂く宗教の対立が、恋人マージェリーとの仲をも引き裂こうとしていることを知る。やがてエリザベス1世の治世となり、新設された情報組織のスパイたちとともに、ネッドとマージェリーらもまた激動の半世紀へと足を踏みいれていく。
- 5. DON’T LET GO Down
Harlan Coben ハーラン・コーベン
ニュージャージーの刑事ナポレオン・ドゥマス(通称ナップ)の双子の兄弟レオは、高校三年生のとき、ガールフレンドのダイアナとともに、線路上で遺体となって発見された。同じ頃、ナップの恋人マウラも、理由も告げず姿を消していた。
以来ナップは、マウラの行方を追い、レオの死の真相を探っていたが、ある日、高校時代のクラスメートでもある同僚を殺した容疑者の車から、マウラの指紋が発見される。ますます深まる謎を追求するうちに、レオとダイアナの死の真相が明らかになっていく。
- 6. THE GIRL WHO TAKES AN EYE FOR AN EYE Stay
David Lagercrantz ダヴィド・ラーゲルクランツ
故スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作の後を引き継ぐ、『ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女』の作者によるシリーズ続編。手段を選ばず少年を助けたことで女子刑務所に収監されたリスベットは、ミカエルの手を借り、自らの幼少期の秘密を探っていく。
- 7. THE CUBAN AFFAIR Down
Nelson DeMille ネルソン・デミル
アメリカ陸軍を退役したダニエル・グレアム・マコーミック(通称マック)は、現在、マイアミ州キー・ウェストで釣り客相手のチャーター船の船長をしている。ある日、反カストロ・グループとの関わりが深い弁護士のカルロスに、キューバ系アメリカ人のサラを紹介される。彼女の祖父はキューバ革命のときにアメリカに亡命したが、その際、キューバに6千万米ドルを隠してきたらしい。アメリカとキューバが国境正常化に向けて動き出したいま、第3者に発見されるまえに祖父のお金を見つけたいというサラの依頼で、マックは危険な船旅に出発することになる。
- 8. MERRY AND BRIGHT New!
Debbie Macomber デビー・マッコーマー
クリスマスが近づくシアトル。派遣社員のメリーは、口うるさい堅物の男性上司にこき使われてばかりの、潤いのない日々を送っていた。見かねた母と弟が勝手に登録した出会い系サイトで気の合う男性と知りあい、毎晩のチャットを楽しむようになるが……人気ロマンス作家による心温まるクリスマス・ストーリー。
- 9. HAUNTED Down
James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン
ニューヨーク市警の刑事、マイケル・ベネットを主人公にしたシリーズの10作目。休暇でメイン州に出かけたベネット一家だったが、滞在先で凄惨な殺人事件が起こり、マイケルは地元の警察に協力を求められる。しかし彼が事情を訊こうとしても、大都会からやって来た刑事に地元の人々は口を開こうとせず、その後もつづいて死体が発見される。そんななかで出会ったホームレスの少女を相棒に、マイケルは事件の真相に迫ろうとする。
- 10. LITTLE FIRES EVERYWHERE Stay
Celeste Ng セレスト・イン
90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。
【まとめ】
今週は3作が新たにランクインしました。1位のダン・ブラウンの新作は、グッゲンハイム美術館やバルセロナのガウディ建築など、今回も謎解きとともに歴史・美術の薀蓄や名所紹介がたっぷり楽しめそうな1作。頼もしい案内役のAIも登場するようです。3位の“MANHATTAN BEACH”は、ノワール・スリラーの雰囲気をそなえたヒストリカル・フィクションとのことで、本年度の全米図書賞小説部門の候補作に選ばれています(惜しくも最終候補4作には残らず)。8位のマッコーマーは、8月に発表された“ANY DREAM WILL DO”につづいてのランクイン。ベストテン外では、スター・ウォーズ・シリーズの脇役たちを主人公とした短篇集“STAR WARS: FROM A CERTAIN POINT OF VIEW”が12位に、エリン・ヒルダーブランドの冬シリーズ第4作“WINTER SOLSTICE”が13位に登場しています。
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中谷 友紀子(なかたに ゆきこ) 先日、最新訳書の『邪魔者』(ミシェル・アダムズ著、小学館文庫)が刊行されました。ギリアン・フリン『冥闇』を思わせるダークなサイコスリラーです。どうぞよろしくお願いします。訳書はほかにサムエル・ビョルク『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』、ミシェル・ペイヴァー『神々と戦士たち Ⅳ 聖なるワニの棺』など。