アメリカのベストセラー・ランキング

10月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

  1. 1. ORIGIN    Stay

Dan Brown ダン・ブラウン

元教え子で天才IT起業家の富豪カーシュが行う会見に列席するため、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れたラングドン。だが、あらゆる信仰の根幹を揺るがす一大発見の内容が明かされようとした瞬間、カーシュが射殺され……われわれはどこから来て、どこへ行くのか。女性館長アンブラとともに、ラングドンは人類の起源と未来をめぐる謎を追う。進化論とAIがテーマのシリーズ第5作。KADOKAWAより邦訳が来春刊行予定。

 

  1. 2. SLEEPING BEAUTIES    Stay

Stephen King and Owen King スティーヴン・キング オーエン・キング

スティーヴン・キングと次男オーエン・フィリップ・キングによる、超常現象サスペンス小説。アパラチア地方の小さな田舎町にある女子刑務所で、眠りについた女たちが白い繭状の膜に包まれるという怪現象が発生した。しかも、膜を破って眠りを妨げると、凶暴化して襲いかかってくるという。だが、女性たちが次々と繭に覆われていく中で、イーヴィーという謎めいた女だけは、この奇病に冒されなかった。イーヴィーは、希少な例外として研究されるべき存在なのか、それとも葬りさるべき悪魔なのか。男たちは彼女を巡って激しく対立し、女性が姿を消した世界は、混乱に陥っていく。

 

  1. 3. FAIRYTALE    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

大学を卒業したカミーユが、カリフォルニアでワイナリーを営む両親を手伝いはじめた矢先、母が乳がんで急死する。失意の父はほどなくフランス人女性と再婚。ところが、継母となったその女の目あては、父の財産とワイナリーだった。カミーユをつぎつぎと試練が襲う。

 

  1. 4. A COLUMN OF FIRE    Stay

Ken Follet ケン・フォレット

『大聖堂』、『大聖堂‐果てしなき世界』に続く歴史大河シリーズ第3作。16世紀イギリス。故郷である大聖堂の町キングスブリッジに戻ったネッドは、国を引き裂く宗教の対立が、恋人マージェリーとの仲をも引き裂こうとしていることを知る。やがてエリザベス1世の治世となり、新設された情報組織のスパイたちとともに、ネッドとマージェリーらもまた激動の半世紀へと足を踏みいれていく。

 

  1. 5. THE RULES OF MAGIC    New!

Alice Hoffman アリス・ホフマン

17歳のフラニー・オーウェンズは妹のジェット、弟のヴィンセントとともにマサチューセッツにあるおばの家を訪れ、17世紀に先祖のマリアが魔女として裁判にかけられていたこと、それ以降オーウェンズ一族に魔法の力が代々受け継がれていることを知る。しかも自分が愛した相手が早死にするという運命を知り、3人は三様に悩みはじめる。

 

  1. 6. THE CUBAN AFFAIR    Up

Nelson DeMille ネルソン・デミル

アメリカ陸軍を退役したダニエル・グレアム・マコーミック(通称マック)は、現在、マイアミ州キー・ウェストで釣り客相手のチャーター船の船長をしている。ある日、反カストロ・グループとの関わりが深い弁護士のカルロスに、キューバ系アメリカ人のサラを紹介される。彼女の祖父はキューバ革命のときにアメリカに亡命したが、その際、キューバに6千万米ドルを隠してきたらしい。アメリカとキューバが国境正常化に向けて動き出したいま、第3者に発見されるまえに祖父のお金を見つけたいというサラの依頼で、マックは危険な船旅に出発することになる。

 

  1. 7. MANHATTAN BEACH    Down

Jennifer Egan ジェニファー・イーガン

大恐慌のさなかのマンハッタン。11歳のアナの父親は、ナイトクラブを経営するギャングのデクスターの口利きで職を得るが、のちに行方知れずとなる。第二次大戦勃発後、ブルックリン海軍工廠で女性初の潜水士として働きだしたアナは、デクスターに再会し、父の失踪の理由を探る。『ならずものがやってくる』でピュリッツァー賞、全米批評家協会賞を受賞した著者の7年ぶりの新作長篇。

 

  1. 8. THE GIRL WHO TAKES AN EYE FOR AN EYE    Down

David Lagercrantz ダヴィド・ラーゲルクランツ

故スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作の後を引き継ぐ、『ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女』の作者によるシリーズ続編。手段を選ばず少年を助けたことで女子刑務所に収監されたリスベットは、ミカエルの手を借り、自らの幼少期の秘密を探っていく。

 

  1. 9. DON’T LET GO    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

ニュージャージーの刑事ナポレオン・ドゥマス(通称ナップ)の双子の兄弟レオは、高校三年生のとき、ガールフレンドのダイアナとともに、線路上で遺体となって発見された。同じ頃、ナップの恋人マウラも、理由も告げず姿を消していた。
以来ナップは、マウラの行方を追い、レオの死の真相を探っていたが、ある日、高校時代のクラスメートでもある同僚を殺した容疑者の車から、マウラの指紋が発見される。ますます深まる謎を追求するうちに、レオとダイアナの死の真相が明らかになっていく。

 

  1. 10. MERRY AND BRIGHT    Down

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

クリスマスが近づくシアトル。派遣社員のメリーは、口うるさい堅物の男性上司にこき使われてばかりの、潤いのない日々を送っていた。見かねた母と弟が勝手に登録した出会い系サイトで気の合う男性と知りあい、毎晩のチャットを楽しむようになるが……人気ロマンス作家による心温まるクリスマス・ストーリー。

【まとめ】

1位のダン・ブラウン、2位のキングは変わらず、3位と5位に新作がランクインしました。3位は、ダニエル・スティールが描く現代版シンデレラ。5位は映画にもなった人気作『プラクティカル・マジック』の前日譚で、1960年代の物語です。この映画の主人公ふたりが、本作のフラニーとジェットの姪にあたり、サンドラ・ブロック、ニコラス・キッドマンが演じています。作者のアリス・ホフマンはマジックリアリズムでも知られる米国のベストセラー作家で、ほかには『ローカル・ガールズ』、ハメット賞を受賞した『タートル・ムーン』などが邦訳されています。なお、トップテン外に新作はありませんでした。

 

  1. 国弘喜美代(くにひろ きみよ)

    東京在住の翻訳者、南東京読書会の世話人のひとり。訳書はB・デンソン『スパイの血脈――父子はなぜアメリカを売ったのか?』、D・ウィンズロウ『報復』(共訳)など。