アメリカのベストセラー・ランキング

2月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE GREAT ALONE    New!

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ベトナム戦争で捕虜となり、心に深い傷を負ったアーントは、帰国後に妻子を連れてアラスカに移住し、大自然に囲まれた新たな生活をはじめる。親切な住民たちの協力もあり、滑りだしは順調に思えたが、寒さが厳しさを増すとともにアーントの精神状態が悪化し、一家は試練の冬を迎える。ロングセラーとなった『ナイチンゲール』の作者による新作。

 

  1. 2. AN AMERICAN MARRIAGE    New!

Tayari Jones タヤリ・ジョーンズ

新婚夫婦のロイとセレスチャルは順風満帆の人生を送っていたが、ある日ロイが身に覚えのない罪で逮捕され、12年の禁固刑を科されてしまう。セレスチャルは孤独に耐えられず、別の男に惹かれていくが、5年後に突然ロイが釈放され、家に帰ってくることとなる。

 

3.THE WOMAN IN THE WINDOW    Stay
A.J. Finn A・J・フィン

夫が娘を連れて出ていったあと、マンハッタンの家でひとり暮らす心理学者のアナ・フォックス。広場恐怖症の彼女は、こもりきりの部屋で酒を飲み、古いサスペンス映画を見ては、部屋の窓からカメラのレンズ越しに隣人たちの生活を覗き見していた。ある日、新しく人が越してきた向かいの窓を覗き見していた彼女は、ある犯罪の現場を目撃してしまうのだが……。20世紀フォックスで映画化が予定されている、新鋭による心理スリラー。

 

  1. 4. STILL ME    Down

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

介護ヘルパーのルーはニューヨークで、超お金持ちのレナードと彼の歳の離れた若い後妻、アグネスのもとで働くことになった。しかしまもなく、五番街で仕事をする自分と、古着の店に行って心から落ち着いている自分とのあいだで、引き裂かれるような思いを感じるようになる。ルー・クラークとはいったい何者か、そう自分に問いかける彼女の姿を描く。

 

  1. 5. LOOK FOR ME    New!

Lisa Gardner リサ・ガードナー

ボストン市警の刑事D・D・ウォレンを主人公とするシリーズの第9作。一家5人のうち4人が惨殺される事件が起こる。残りのひとり、里子だった16歳の少女の行方はわからない。少女は運よく殺人犯の手から逃れたのか、それとも犯行に関与しているのか。ウォレンが少女を捜すうちに、その悲惨な境遇が明らかになっていく。

 

  1. 6. DARK IN DEATH    Down

J.D. Robb J・D・ロブ

イヴ&ローク・シリーズ第45作。慎重に計画されたと思われる殺人事件で頭を悩ませるイヴに、警察小説を書く作家がヒントをもたらす。自分の書いた作品の殺害状況と似ているというのだ。その説が当てはまるなら、これは連続殺人の2件目ということになる。イヴは彼女の作品を読み、犯人のつぎの狙いを探ろうとする。

 

  1. 7. LITTLE FIRES EVERYWHERE    Down

Celeste Ng セレスト・イン

90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。

 

  1. 8. ORIGIN    Down

Dan Brown ダン・ブラウン

元教え子で天才コンピューター科学者のカーシュが行う重大なプレゼンテーションを見るため、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れたラングドン。だが、あらゆる信仰の根幹を揺るがす大発見の内容が明かされようとした瞬間、カーシュが射殺され……われわれはどこから来て、どこへ行くのか。女性館長アンブラとともに、ラングドンは人類の起源と運命をめぐる謎を追う。神の存在意義を問うシリーズ第5作。KADOKAWAより邦訳『オリジン』(上・下)が2月末刊行予定。

 

  1. 9. BEFORE WE WERE YOURS    Down

Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト

1939年テネシー。4人の弟、妹たちとともに何者かに連れ去られた12歳のリル・フォスは、二度と両親のもとに戻ることはなかった。時は流れ現在、サウスカロライナの弁護士になったエイヴリー・スタッフォードは、かつてテネシーの孤児院でおこなわれていたという違法な養子あっせん事業を調べていくうち、南部の名家といわれる自分の家族の過去を知ることに。1920年代から50年代にかけて実際にあった出来事にもとづくヒストリカルノヴェル。

 

  1. 10. THE ROOSTER BAR    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

ワシントンDCのロースクールに通う同級生のマーク、トッド、ゾーラ。卒業を半年後に控えたある日、学費ローンに苦しむクラスメートのひとりが自殺したことをきっかけに、3人はロースクールの経営母体であるファンドが学生ローン専門の金融機関も営み、貸付で儲けるために、ほかのどのロースクールにも受からない学生たちを入学させていたことを知る。

 

【まとめ】

1位、2位、5位に新作が登場しました。首位を獲得したのはクリスティン・ハナの待望の新作。2015年に出版された『ナイチンゲール』は、およそ1年半にわたってベストセラーリストに載りつづけました。この新作もどこまで伸びるのか、楽しみなところです。2位のジョーンズはアフリカ系アメリカ人の女性作家で、これが4作目の小説となります。5位はガードナーの人気シリーズ。邦訳は最近では第8作『棺の女』が刊行されており、その重要人物が本作でも登場しています。11位以下に目立った動きは見られませんでした。

 

  1. 青木創(あおき はじめ)

    神奈川県在住。翻訳者。訳書にA・ジェントリー『消えたはずの、』、J・ハーパー『渇きと偽り』、E・ヴィンター『愛と怒りの行動経済学』など。