アメリカのベストセラー・ランキング
3月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE ESCAPE ARTIST New!
Brad Meltzer ブラッド・メルツァー
画家のノラはアメリカ陸軍に招聘され、戦闘後の現場を描くように訓練された兵士でもある。その彼女が、アラスカの秘密軍事基地を飛び立った飛行機から転落死する。政府はノラの死を正式に認めたが、任務中に死亡した兵士たちの遺体回収にあたるジグは、彼女が生きていることを知ってしまう。
- 2. STAR WARS:THE LAST JEDI New!
Jason Fry ジェイソン・フライ
映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の監督で脚本も担当したライアン・ジョンソンの協力を得て書かれた、映画の公式増補版。脚本の別バージョンを盛り込み、映画の世界をより詳しく解説している。
- 3. THE GREAT ALONE Down
Kristin Hannah クリスティン・ハナ
ベトナム戦争で捕虜となり、心に深い傷を負ったアーントは、帰国後に妻子を連れてアラスカに移住し、大自然に囲まれた新たな生活をはじめる。親切な住民たちの協力もあり、滑りだしは順調に思えたが、寒さが厳しさを増すとともにアーントの精神状態が悪化し、一家は試練の冬を迎える。ロングセラーとなった『ナイチンゲール』の作者による新作。
- 4. LITTLE FIRES EVERYWHERE Up
Celeste Ng セレスト・イン
90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。
- 5. THE WOMAN IN THE WINDOW Down
A.J. Finn A・J・フィン
夫が娘を連れて出ていったあと、マンハッタンの家でひとり暮らす心理学者のアナ・フォックス。広場恐怖症の彼女は、こもりきりの部屋で酒を飲み、古いサスペンス映画を見ては、部屋の窓からカメラのレンズ越しに隣人たちの生活を覗き見していた。ある日、新しく人が越してきた向かいの窓を覗き見していた彼女は、ある犯罪の現場を目撃してしまうのだが……。20世紀フォックスで映画化が予定されている、新鋭による心理スリラー。
- 6. FIFTY FIFTY Down
James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス
オーストラリアを舞台とした刑事ハリエット・ブルー・シリーズ第2作。ハリエットは連続殺人容疑で逮捕された兄の無実を証明しようとするも、トラブルを起こしてシドニーから人口わずか75人の田舎町へと飛ばされる。だが、その町を壊滅させかねない大量殺戮計画が明らかになり、まもなく最初の殺人事件が起きる。
- 7. AN AMERICAN MARRIAGE Down
Tayari Jones タヤリ・ジョーンズ
新婚夫婦のロイとセレスチャルは順風満帆の人生を送っていたが、ある日ロイが身に覚えのない罪で逮捕され、12年の禁固刑を科されてしまう。セレスチャルは孤独に耐えられず、別の男に惹かれていくが、5年後に突然ロイが釈放され、家に帰ってくることとなる。
- 8. BURN BRIGHT New!
Patricia Briggs パトリシア・ブリッグズ
元人間の人狼アナと、人狼のリーダーであるチャーリーを主人公とするパラノーマル・ファンタジーのシリーズ第5作。仲間からのSOSを受け取ったアナとチャーリーは荒野へと向かうが、そこでかつてない脅威にさらされることになる。
- 9. BEFORE WE WERE YOURS Down
Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト
1939年テネシー。4人の弟、妹たちとともに何者かに連れ去られた12歳のリル・フォスは、二度と両親のもとに戻ることはなかった。時は流れ現在、サウスカロライナの弁護士になったエイヴリー・スタッフォードは、かつてテネシーの孤児院でおこなわれていたという違法な養子あっせん事業を調べていくうち、南部の名家といわれる自分の家族の過去を知ることに。1920年代から50年代にかけて実際にあった出来事にもとづくヒストリカルノヴェル。
- 10. STILL ME Down
Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ
介護ヘルパーのルーはニューヨークで、超お金持ちのレナードと彼の歳の離れた若い後妻、アグネスのもとで働くことになった。しかしまもなく、五番街で仕事をする自分と、古着の店に行って心から落ち着いている自分とのあいだで、引き裂かれるような思いを感じるようになる。ルー・クラークとはいったい何者か、そう自分に問いかける彼女の姿を描く。
【まとめ】
今週は新作が3作ランクインしました。初登場で1位になったのは、ブラッド・メルツァー。スーパーマンの原作者の父親殺害の謎に迫った『偽りの書』(上・下/角川グループパブリッシング)などの邦訳があります。2位には、昨年に公開されて世界じゅうで大ヒットした映画、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を深く掘り下げて解説した作品がランクインしました。8位に初登場したアルファ&オメガ・シリーズは、おなじく人狼が活躍するマーシー・トンプソン・シリーズのスピンオフ作品です。このアルファ&オメガ・シリーズは未訳ですが、マーシー・トンプソン・シリーズは1作目のみ、『裏切りの月に抱かれて』(早川書房)のタイトルで邦訳が出ています。10位圏外ですと、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」をギレルモ・デル・トロ監督がダニエル・クラウスとともに小説化した作品が、初登場で11位にランクインしました(邦訳も『シェイプ・オブ・ウォーター』(竹書房)として、すでに出ています)。アカデミー賞受賞効果でしょうか。そのアカデミー賞で映画が作品賞を受賞したとき、昨年のことがあったからか、ステージ上で封筒の中身を何度も確認するデル・トロ監督はキュートでした。
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吉野山早苗(よしのやま さなえ) 翻訳者。〈英国少女探偵〉シリーズの3作目、『オリエント急行はお嬢さまの出番』(ロビン・スティーヴンス/コージーブックス)が発売中です。クリスティの『オリエント急行の殺人』へのオマージュにあふれた、読み応えのある作品です。