アメリカのベストセラー・ランキング

5月20日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE 17TH SUSPECT    New!

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズの第17作。サンフランシスコで銃撃事件が連続して起こる。犯人につながる手がかりがないなか、ある女性から内密の情報を聞かされたリンジー・ボクサーは、サンフランシスコ市警内部でひじょうによからぬことが起こっていると思わざるを得なくなる。

 

  1. 2. THE FALLEN    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第4作。デッカーは友人の新聞記者アレックス・ジェイミソンと、彼女の親類を訪ねてペンシルバニア州西部のさびれた工業地帯にある小さな町へ来ていた。そこで裏手の家の不審な様子に気づき、死因不明の2遺体を発見するが、それは複雑な事件の氷山の一角にすぎなかった。

 

  1. 3. TWISTED PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第28作。米国連邦保安官となったルーカスが旧敵と対決。政敵による自身の暗殺計画を確信した上院議員からの依頼を受けて、ルーカスは、かつて対峙した、野心家でリッチなサイコパス、タリン・グラントの身辺調査を始めるが……。

 

  1. 4. THE MARS ROOM    New!

Rachel Kushner レイチェル・クシュナー

ストーキングをしていた男を殺した罪で仮釈放なしの終身刑を言い渡されたロミーは、息子を母親に託し、服役することになった。日々を生きるために虚勢を張るほかの服役囚たちに囲まれ、看守からは手荒い扱いを受けるという不条理のなか、彼女は健全さを見失わず、ユーモアさえも持ちつづける。

 

  1. 5. THE PERFECT MOTHER    New!

Aimee Molloy エイミー・モロイ

おなじ月齢の子どもを持つ母親たちのグループ〈メイ・マザーズ〉は、2週間にいちど、ブルックリンの公園でおとなだけの愉しい時間を過ごしていた。しかし独立記念日の夜、日常を離れたくてバーに繰り出しているあいだに、メンバーのひとりでシングルマザーのウィニーの赤ん坊が自宅から連れ去られてしまう。その赤ん坊を探すうちに、それぞれの家族の秘密が顕わになり、母親たちの友情も壊れていく。

 

  1. 6. THE FORGOTTEN ROAD    New!

Richard Paul Evans リチャード・ポール・エヴァンス

成功をおさめたテレビショッピング番組の司会者チャールズ・ジェイムズは、飛行機の墜落事故で死んでいてもおかしくなかった。しかし間一髪、運命のいたずらで助かり、あらたな人生をはじめることになる。そんな彼は、富や名声や車があってもしあわせにはなれないと、はっきりわかるようになっていた。

 

  1. 7. ADJUSTMENT DAY    New!

Chuck Palahniuk チャック・パラニューク

独善的なおいぼれ政治家たちは、爆発的に増える若い男性の人口を抑制しようとする。その結果、労働者階級の男たちはエリートたちを埋葬することを夢想し、教授たちは学生に向かって先行きの暗い見解のみを唱え、国を第3次世界大戦へと向かわせる。

 

  1. 8. BEFORE WE WERE YOURS    Down

Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト

1939年テネシー。4人の弟、妹たちとともに何者かに連れ去られた12歳のリル・フォスは、二度と両親のもとに戻ることはなかった。時は流れ現在、サウスカロライナの弁護士になったエイヴリー・スタッフォードは、かつてテネシーの孤児院でおこなわれていたという違法な養子あっせん事業を調べていくうち、南部の名家といわれる自分の家族の過去を知ることに。1920年代から50年代にかけて実際にあった出来事にもとづくヒストリカル・ノヴェル。

 

  1. 9. LITTLE FIRES EVERYWHERE    Down

Celeste Ng セレスト・イン

90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。

 

  1. 10. THE HELLFIRE CLUB    Down

Jake Tapper ジェイク・タッパー

謎めいた死を遂げた前任者の議席を引き継ぎ、若くして政界入りしたチャーリー・マーダー。理想を胸に議員生活を始めるが、ある死亡事故をきっかけに、動物学者の妻マーガレットとともに、秘密結社が暗躍する政治の裏世界に巻きこまれていく。そして、ある重大な陰謀に気づいたとき……。1950年代のワシントンD.C.が舞台のポリティカル・スリラー。

 

【まとめ】

先週は“TWISTED PREY”が1位に、“THE HELLFIRE CLUB”が3位に初登場していました。前者のシリーズは、10作めの『餌食』(講談社)までが邦訳されています。後者の“THE HELLFIRE CLUB”の著者は、CNNの名物アンカー、ジェイク・タッパーです。ABCテレビのホワイトハウス特派員時代には、アフガンでのアメリカ軍の戦闘のようすを追ったノンフィクション“THE OUTPOST”を書いてベストセラーになりましたが、小説デビューとなる本作も、ベストセラー・リストに名を連ねることになりました。今週のベスト10にはこの2作も留まり、あらたに5作がランクインしました。5位に初登場したエイミー・モロイは、ノンフィクション作品で高い評価を得ています。はじめての小説となる本作はすでに18の言語への翻訳が決まっていて、映画化の予定もあるとのことです。7位には、映画化もされた『ファイト・クラブ』などでカルト的な人気を誇るパラニュークの、4年ぶりの新作がはいりました。

 

  1. 吉野山早苗(よしのやま さなえ)

    翻訳者です。〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズの3作め、『オリエント急行はお嬢さまの出番』(コージブックス)が発売中です。

    先月、お芝居を観にダブリンに行ってきました。劇場の近くにライターズ博物館があったのでふらりと立ち寄りましたが、アイルランド出身の(あるいは、アイルランドにゆかりのある)錚々たる作家たちについて詳しく紹介されていて、とても見応えがありました。ラフカディオ・ハーンのコーナーは、とくに充実しています。『怪談』がまた読みたくなったところ、光文社より新訳版が出るということで、愉しみに待ちたいと思います。