アメリカのベストセラー・ランキング

10月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE NEXT PERSON YOU MEET IN HEAVEN    New!

Mitch Albom ミッチ・アルボム

米国で2003年に刊行されたベストセラー『天国の五人』の続編。前作は事故で死んだ83歳の老人エディが天国で5人の人物に会う話だったが、今回はエディが生前かかわりを持った少女アニーについて描かれ、30歳になったアニーが結婚式当日、大事故に見舞われるシーンからはじまる。

 

  1. 2. HOLY GHOST    New!

John Sandford ジョン・サンドフォード

「獲物」シリーズのスピンオフにあたるヴァージル・フラワーズ・シリーズの第11作。ミネソタ州の廃れた小さな町ピニオンで、聖母の姿が浮かぶ教会が話題になり、観光客が押し寄せる。町がにわかに活気づくなか、銃乱射事件が2件起こって怪我人が出たうえ、容疑者が頭を撃たれて死亡、その後も殺人事件がつづく。

 

  1. 3. THE CLOCKMAKER’S DAUGHTER    New!

Kate Morton ケイト・モートン

1862年、エドワードはテムズ川のほとりに建つマナーハウスに若い芸術家を集めて夏を過ごす。ところがある事件が起こり、婚約者が亡くなって、ひとりが行方不明になり、家宝が失われてしまう。その150年後、公文書保管係のエロディがセピア色の写真と画家のスケッチブックを見つけ、そこに描かれている館が川岸のバーチウッドマナーであることを突き止める。

 

  1. 4. AMBUSH    New!

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第11作。ふたつの麻薬組織の縄張り争いに巻きこまれ、ベネットは麻薬カルテルの差し向けた殺し屋に狙われる。同シリーズの短篇‘Manhunt’を収録。

 

  1. 5. WINTER IN PARADISE    New!

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

アイオアに住むアイリーンのもとに、夫がヘリコプターの事故で死亡したという知らせが届く。アイリーンはカリブ海のセントジョン島を訪れ、愛する夫がその島で秘密の生活を送っていたことを知る。夫の死をめぐる謎と、新たな人生のはじまりを描くシリーズの第1作。

 

  1. 6. A SPARK OF LIGHT    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ミシシッピの女性専門クリニックで、銃を持った男が中にいる全員を人質にとってたてこもった。警察の人質交渉人マッケルロイが解決を試みるが、最愛の娘である15歳のレンが人質に含まれていることを知る。クリニックの中で、さまざまな事情を抱えた患者や医師、活動家らの人生が交差する。

 

  1. 7. THE WITCH ELM    New!

Tana French タナ・フレンチ

著者初のスタンドアロン作品。トビーは仕事にも恋人にも家族にも恵まれたラッキーな男だった――アパートメントに押し入った強盗ふたりから暴行を受けるまでは。心と体に傷を負い、自信を失ったトビーは、恋人とともにおじの屋敷へ移る。だが、またその屋敷で、親戚の子供が庭の楡の木の幹から人間の頭蓋骨を発見する。

 

  1. 8. KILLING COMMENDATORE    New!

Haruki Murakami 村上春樹

2017年2月に発表された『騎士団長殺し』の英訳版で、第一部と第二部が1冊(700ページほど)にまとめられている。肖像画家である36歳の“私”は妻から別れを切りだされ、知人の画家が所有する山中のアトリエを借りる。その屋根裏で“騎士団長殺し”という絵を見つけてから、私のまわりで不思議な出来事が起こる。

 

  1. 9. VINCE FLYNN: RED WAR    Down

Kyle Mills カイル・ミルズ

不治の病に侵されたロシア大統領クルーピンがバルト三国への侵略を計画。CIAの敏腕スパイ、ミッチ・ラップはそれを止めるべく、クルーピン暗殺の密命を帯びてモスクワに潜入する。原作者ヴィンス・フリンの他界後、14作目からカイル・ミルズが書き継いでいるミッチ・ラップ・シリーズの第17作。

 

  1. 10. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女キヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

【まとめ】

新作が7つランクインする変動の多い週でした。1位は『モリー先生との火曜日』で有名なベストセラー作家ミッチ・アルボムの作品で、2003年に刊行された『天国の五人』(邦訳は2004年11月刊)の15年ぶりの続編です。3位は2015年の『湖畔荘』(邦訳は2017年刊)以来のケイト・モートンの新作。5位の人気ロマンス作家エリン・ヒルダーブランドはナンタケット島を舞台にした作品が多いことでも知られていますが、今シリーズはカリブの島をとりあげています。7位はタナ・フレンチ初のスタンドアロン長編で、著者のほかの作品としてはアイルランドの警察シリーズが第6作まで上梓され、シリーズの邦訳は『悪意の森』『道化の館』『葬送の庭』までが集英社より刊行されています。

 

  1. 国弘喜美代(くにひろ きみよ)

    東京在住の翻訳者、南東京読書会の世話人のひとり。訳書にカレン・クリーヴランド『要秘匿』など。今月18日に手嶋由美子さんとの共訳で、エドワード・セント・オービン『パトリック・メルローズ1:ネヴァー・マインド』が発売されました。イギリスの青年貴族の苦悩を描く5部構成の作品で、ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマが、日本でも12月にスターチャンネルで放送される予定です。カンバーバッチが惚れこんだ原作との評判どおり、第4作はブッカー賞の最終候補にもなりました。この先さらに物語が奥行きを増していきますので、よかったら最後までお付き合いください。