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 第十回翻訳ミステリー大賞の本投票には、多くの翻訳者のみなさまから投票をいただきました。投票総数は56名。ここであらためて、そのおひとりおひとりに御礼を申し上げます。

 4月15日掲載の【速報】第十回翻訳ミステリー大賞決定!に引き続き、きょうとあしたは投票に添えられた「熱いおすすめコメント」の一部を二回にわけてご紹介します。

 なお掲載にあたって編集した箇所がありますこと、ご了承ください。

 作品は得票数順、コメントは投票メール到着順です。

 コメントなしで投票した方がいらっしゃいますので、コメント数と得票数はかならずしも一致しません。

 また、受賞作と最終候補作がとりあげられた「書評七福神今月の一冊」の該当月のリンクも添えました。えりすぐりの5作品を七福神はどんなふうに読んだのか。ぜひリンク先もお読みください。

20140923091320.png受賞作『カササギ殺人事件』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭(東京創元社)

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(写真上:事務局代表の田口俊樹より訳者の山田蘭さんへの賞状贈呈。
写真下:山田氏と、東京創元社の担当編集者・桑野氏)

鎌田三平:今回は一番悩みました。超王道のハードボイルドで、シリーズ化意欲満々の『用心棒』は個人的に好きなタイプの話だし、解剖台の上でメスとピンセットで人間を描いていくような『あなたを愛してから』は読者と(おそらくは)翻訳者の心をズタズタに切り刻んでいっただろうし、冷徹な眼力と反射神経が何故かメインの事件ではあまり発揮されなかったのがご愛嬌の『IQ』も今後の期待大だし、どういうわけか犯人のリリーに感情移入して逃げおおせてくれと思わず祈ってしまった『そしてミランダを殺す』も大満足でしたが、ミステリーの王道は意表を突くプロットと意外な犯人にあり、という大原則に立ち戻って『カササギ殺人事件』に一日の長ありと判断しました。

菱山美穂:圧倒的な面白さでした。

加藤かおり:期待以上の面白さでした。

青木悦子:どの作品も面白かったのですが、この一作は本当にずば抜けていました。というか、「ラスボス」とはこういうものを言うんだな、と実感しました。もうここまで来たら、すべての賞を取りまくって、のちの世に「カササギの奇跡」と呼ばれる伝説になっていただきたいです。

栗原百代:ダブル・フーダニットの華麗なる完成形! 翻訳もすばらしかった
です。

伊藤直子:悩みすぎて意識を失いかけましたがリリーとレイチェルはとりあえず生きているしジョーとIQにはまた会えそうなのでアランに供養の1票を。

堀川志野舞:正統派というべきか、異色というべきか、上下巻で二冊分きっちり楽しめました。

児島修:5作どれも面白かったですが、『カササギ殺人事件』の構成の妙と作品世界の雰囲気がとても好みだったので、決めさせていただきました。翻訳も素晴らしかったです。

『カササギ殺人事件』2018-10-11 書評七福神の九月度ベスト発表!

 

候補作『あなたを愛してから』デニス・ルヘイン /加賀山卓朗(早川書房)

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高山真由美:「白人・男性・労働者階級のクライム・ストーリーというアイデアをもう両腕で抱きしめられなくなった」というルヘインが初めて女性単一視点で書いたのが本書だが、これがただの「逃げ」でないことは一読明らか。プラス、長くルヘインを訳されてきた加賀山氏の安定のお訳が読みやすく、ほぼ一気に楽しめます。

野口百合子:深くてダイナミックな物語。さすがルヘイン。

田口俊樹:ミステリーとしてはしょっぱなからアンフェアだと思うけれど、それにまんまとひっかかりながら、そんなに腹は立たなかったんで赦してあげる。主人公のキャラ造形がうまいね。

小林さゆり:人生とは生きのびること。誰と生きのびるのか、それが大事だとしみじみ思いました。

武藤陽生:作品のタイトル、作者名、訳者名、この3つしかわからない状態で読みはじめました。ページをひらいてまず、お、登場人物が少ない! これは読みやすそうだぞ。しかしなんということか、そのとき私はすでに作者の術中に落ちていたのです。確かだと思っていたことが、実は自分の思い込みに過ぎなかったとしたら。全篇にそのような仕掛けが散りばめられており、ハラハラしっぱなしでした。読み終えたあと、もう一度タイトルを眺めてみると、原題(『Since We Fell』)の持つもうひとつの意味が浮かびあがってくる。なるほど、タイトルすら思い込みに過ぎなかったというわけか。その隣に書かれた作者名。なんてこった、ル・カレだと思ったらルヘインじゃないか! かくして、最初から最後まで確かだったのは、訳者名だけだったのでした。

高橋知子:どこか嫌な女感のあるレイチェル、善人かと思っていたのに
途中から「うん?」と思わせるブライアン。だけど、意外な展開につぐ
展開で、転落の一途をたどっていそうで底まで落ちないレイチェルの強さと、
彼女への愛だけは本物かもと思わせるブライアンに惹かれていた。
それにしても、ケイレブ、可哀想すぎ。

日暮美月:読み終わったとたん今年はこれだと思いました。

石飛千尋:父探し、災害のPTSD、理想の結婚相手が実は……などといった要素だけ取り出すと特に目新しいものでもないのに、一旦読み出したら没頭せずにいられない吸引力があり、文章の力とはこういうことかと圧倒されました。第一部の父探しだけでも、ひとつの物語として堪能。後半はいろんな意味でドキドキ。そして結びの一行に痺れる!

『あなたを愛してから』2018-08-09 書評七福神の七月度ベスト発表!

 

 次回は以下の三作へのコメントを紹介いたします。

 

●第一回大賞受賞作

●第二回大賞受賞作

●第三回大賞受賞作

●第四回大賞受賞作

●第五回大賞受賞作

●第六回大賞受賞作

●第七回大賞受賞作

第八回大賞受賞作

第九回大賞受賞作

 

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