アメリカのベストセラー・ランキング

9月1日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 2. THE INN    Stay

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

元ボストン市警刑事ビル・ロビンソンは、マサチューセッツの港町で妻の遺した海辺の宿を営んでいた。それぞれに過去を抱えた長期滞在者たちとの交流が心の支えだが、町に現われた麻薬組織の一員によってその平穏は乱される。宿を守るため、ビルと仲間たちは危険な闘いに挑む。

 

  1. 3. THE BITTERROOTS    New!

C.J. Box C・J・ボックス

キャシーは以前、ノースダコタ州の保安官事務所で捜査官として働いていたが、いまはモンタナ州で私立探偵をしている。今回の依頼は、15歳の姪に対する強姦容疑で逮捕された富豪について調査してくれというものだった。キャシー・デウェル・シリーズの第4作。

 

  1. 4. ONE GOOD DEED    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

1949年、退役軍人のアロイシャス・アーチャーはカルデロック刑務所から仮釈放され、ポカ・シティに向かう。すぐに地元の有力なビジネスマン、ハンク・ピットルマンのところで借金回収の仕事をすることになるが、殺人事件が起こり、アーチャーは警察から疑いの目を向けられる。バルダッチが生み出した、新たなアンチ・ヒーローの活躍。

 

  1. 5. THE NICKEL BOYS    Up

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

1960年代のフロリダ。感化院ニッケル・アカデミーでは、矯正の名のもとに少年たちへの身体的、精神的、性的虐待が日々繰り返されていた。そして少年が黒人である場合にはその程度はさらにひどく……。『地下鉄道』の著者が、黒人少年ふたりの友情と成長を通して描く、不平等が遍在するジム・クロウ法時代のアメリカ。

 

  1. 6. THE TURN OF THE KEY    Down

Ruth Ware ルース・ウェア

ローワン・ケインは、スコットランドの田舎町の屋敷に住み込みの家庭教師として赴任する。多額の報酬、スマートホーム化された豪邸、感じのいい夫妻と娘たち――理想的に思えた仕事は、じきに悪夢へ変わる。娘のひとりを殺害した容疑で逮捕されたのだ。獄中から無実を訴えるローワンの手紙によって、屋敷での真相が明かされていく。

 

  1. 7. THE NEW GIRL    Up

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズ第19作。スイスのプライベートスクールに留学していたサウジアラビアの皇太子の娘が誘拐された。娘の命を救うため、皇太子は王室とイスラム過激派とのつながりを断ち切ると約束し、ガブリエルに協力を求める。

 

  1. 8. OUTFOX    Down

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

FBI捜査官ドレックス・イーストンは30年にわたりウェストン・グレアムを追っていた。8名の女性資産家が財産を騙し取られたのち失踪し、おそらくはそのすべてにグレアムが関わっているのだ。実業家のタリア・シェイファーと結婚したジャスパー・フォードと名乗る男がグレアムだと睨んだドレックスは夫妻に近づくが、しだいにタリアに惹かれていく。

 

  1. 9. CHANCES ARE …    Up

Richard Russo リチャード・ルッソ

大学で同窓だった3人の男がそれぞれちがう人生を歩み、60代になって旧交をあたためあう。しかし、当時3人が恋心をいだいていたジェイシーの失踪が、それぞれの脳裏から消えたことはなかった。ジェイシーに何があったのか。一同が記憶をたどるうちに、遠い過去が現在の友情と人生を脅かしはじめる。

 

  1. 10. CONTRABAND    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第50作。クルーザーでキーウェスト沖に出てのんびりしていたところ、近くに水上飛行機が落下、ストーンはパイロットを救助する。パイロットは病院に収容されるが、看護師に扮した何者かに襲われ、病院から姿を消す。さらに事故現場では、飛行機の積荷が一夜のうちに消えていた。

 

【まとめ】

新作はふたつでした。3位は、キャシー・デウェルを主人公にしたシリーズの第4作。著者のC・J・ボックスはワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズで知られ、そのシリーズ邦訳は『鷹の王』まで11冊が刊行されています。ジョー・ピケット・シリーズ2作目“SAVAGE RUN”の邦訳が電子書籍オリジナルで今年刊行される予定で、既刊は6月にすべて電子化されたとのこと。当サイトに翻訳者の野口百合子さんによるくわしい紹介があるので、こちらをご覧ください。今週の10位はスチュアート・ウッズ・シリーズの第50作。トップテン外では、12位にテア・オブレヒト“INLAND”がはいりました。著者はデビュー長篇『タイガーズ・ワイフ』でオレンジ賞を受賞したセルビア系の作家で、“INLAND”は1893年のアリゾナを舞台にした作品のようです。15位には、キャサリン・センターの“THINGS YOU SAVE IN A FIRE”がランクイン。テキサス州で消防士として活躍する女性が、年老いた母にボストンへ来てくれと頼まれ、人生を改めて見つめなおすという内容です。

 

  1. 国弘喜美代(くにひろ きみよ)

    南東京読書会の世話人のひとり。訳書にカレン・クリーヴランド『要秘匿』、エドワード・セント・オービンのパトリック・メルローズ・シリーズ(手嶋由美子さんとの共訳)など。9月5日にローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』が発売されます。次回の南東京読書会は10月6日(日)、課題書は劉慈欣『三体』です。