第19回「米TVドラマ2010−11年シーズン終了間近、お亡くなりになったシリーズはどれ?」
5月というと日本はそろそろ新入生たちが5月病にかかる時期ですが、アメリカでは前年の9月から始まったテレビのシーズンが終了する時期となります。
それはすなわち、ついに人気が下降してしまった番組(および、人気の出なかった新番組)が、打ち切りの憂き目に遭い、次のシーズンの新番組のために放送枠を明け渡す時期でもあるということです。
というわけで今回は、どの番組が生き残って、どの番組が消えていきそうなのかをまとめてみました(一部、まだ未定だったりします)。
昨年6月の私の連載第8回「そろそろ新番組情報の季節。この秋の話題を独占するミステリドラマはどれ?」と合わせて読むと、アメリカテレビ界の厳しさがひしひしと伝わってくるかも。お気に入りの番組が入っていないことを願いながら読んでくださいね(笑)。
ちなみに、新番組情報は8月か9月にまたやりたいと思います。
とりあえずはリストから。
5月3日時点での報道およびネット上での噂などから、以下に「継続決定」、「たぶん継続」、「打ち切りボーダーライン上」、「たぶん打ち切り」、「打ち切り決定」の5段階に分けたミステリドラマのリストを作ってみました。
決定済みの2項目以外は、今のところ確証はまだありませんが、まあ、今までの例から言って、現時点での噂通りになることがほとんどです。
◎継続決定
「キャッスル」
「NCIS」
「ボーンズ」
○たぶん継続
「Body of Proof」*
「Hawaii Five-0」*
「CSI」
「CSI:マイアミ」
「メンタリスト」
「クリミナル・マインド」
「NCIS:ロサンゼルス」
「Harry’s Law」*
「ロー&オーダー:SVU」
△打ち切りボーダーライン上
「Blue Bloods」*
「CSI:ニューヨーク」
「グッドワイフ」
「Criminal Minds: Suspect Behavior」*
「Nikita」*
▼たぶん打ち切り
「Detroit 187」*
「The Defenders」*
「Law & Order: Los Angeles」*
「チャック」
「ライ・トゥ・ミー」
「ヒューマン・ターゲット」
「The Chicago Code」**
●打ち切り決定
「The Whole Truth」*
「Undercovers」*
「Chase」*
「The Cape」*
「The Good Guys」
*今期から始まっていた新番組
**昨年6月の記事(本連載第八回)では「Ride-Along」というタイトルで紹介した新作刑事アクション
シーズン終了前に次シーズンへの継続が確定した3本は、どれも人気の高い作品なんで、読者の皆さんも納得でしょう。
気になるのは「たぶん継続」と「ボーダーライン上」になっている作品群なのではないでしょうか。なにせ、日本でも知られている人気作品が多いですもんね。
なぜ、ぎりぎりまで確定になっていないかというと、これらの作品は人気もある代わり、製作費が高いということが原因に上げられます。特に、長寿番組になってくると、毎年上がっていくキャストのギャラがバカになりません。
そこでテレビ局としては、少しでも人気に陰りが出てくるようであれば、コストの高いドラマはさっさと打ち切ってしまって、新番組を始めてみたいというわけです。
もちろん、視聴率が悪い作品ほど、「ボーダーライン上」から「たぶん打ち切り」、そして「打ち切り決定」のほうのリストに載せられてしまっています。
たぶん、「CSI」シリーズは3本とも生き残るとは思うのですが、「クリミナル・マインド」のスピンオフである「Criminal Minds: Suspect Behavior」は厳しいかも。
もう一つ、このリストからわかることは、新番組が生き残って次のシーズンを迎えることがいかに難しいかということでしょう。
見ていただければわかるとおり、打ち切り側のリストに含まれてしまっている作品の多くが、去年の秋に放送が始まったばかりの新番組(*印がついている作品)なのです。
どれだけ有名プロデューサーの作品であろうと、どんな人気俳優が出ていようと、視聴率が悪ければ即座に打ち切られる。ただし、ひとたび人気が出れば、何年もの間、続編が作られ続ける。それが、アメリカのテレビドラマなのです。
そんな熾烈な戦いの中、どうやら第1シーズンを生き残れそうな数少ない新番組の一つが「Hawaii Five-0」です。
このドラマは、タイトル通り、かつての人気番組「ハワイ5-0」のリメイク版。オリジナル版は1968年から1980年まで12シーズン全284話が放送された大人気ドラマです。
タイトルにもあるハワイ5-0とはハワイ州知事直属の特別捜査班のコードネームで、犯罪捜査はもちろんのこと、防諜やテロ対策など、ありとあらゆる重大事件の捜査を行うエリート集団なのです(なんせ、シリーズ最大の宿敵は、第一話から何度も登場、最終話でようやく逮捕される中国のスパイだったりして)。
リメイク版では、オリジナル版最初期のメンバー4人を若手俳優たちが演じていますが、現代的なのは、オリジナル版では男だったコノ・カラカウアを女性に変更していること。
ちなみに、演じているのは、リメイク版「ギャラクティカ」でやはりオリジナル版では男性だったブーマー役を演じたグレイス・パーク。今回も身体張ってがんばってます。
リメイク版のウリは、なんといってもオリジナル版よりもスピードを増したストーリー展開と大増量されたアクションシーン。日本でも今月からAXNで放送が始まるので、アクション好きは要チェック!
ところで、激烈な視聴率競争が繰り広げられているテレビ局を舞台にしたミステリと言えば、なんといっても『視聴率の殺人』に始まるウィリアム・L・デアンドリアのマット・コブものでしょう。
テレビ局のトラブル処理係であるマットが、毎回殺人事件に巻き込まれてしまうという、ある種の定型が心地よい楽しいシリーズでした。未訳の長篇が4作も残っているのはちょっと惜しい気がします。
作者のデアンドリアは、78年にこの『視聴率の殺人』で26歳で鮮烈なデビューをはたし、以後、上記のマッコ・コブものや、『ホッグ連続殺人』に始まるベイネディッティ教授ものといった本格ミステリから、『クロノス計画』のようなスパイもの、『ピンク・エンジェル』のような歴史ミステリまで、精力的に作品を発表し続けるも、96年に44歳の若さで、がんで亡くなってしまったという、人生を駆け抜けていってしまったような人です。どこかで再評価されないかなあ。
とりあえず、コブものの第1作『視聴率の殺人』と、唖然呆然必至の『ホッグ連続殺人』は読んでおいて損はないかも。
◇AXNの「Hawaii Five-0」公式サイト→ http://axn.co.jp/program/hawaii5-0/
◇リメイク版「Hawaii Five-0」オープニング
◇オリジナル版「ハワイ5-0」第1シーズン・オープニング
〔筆者紹介〕堺三保(さかい みつやす)
1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。今年の仕事は、『ウルフマン』(早川書房)のノベライズと『ヘルボーイ 壱』、『ヘルボーイ 弐』(小学館集英社プロダクション)の翻訳。
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