
第七回翻訳ミステリー大賞の二次投票には、多くの翻訳者のみなさまから投票をいただきました。投票総数は62名。ここであらためて、そのおひとりおひとりに御礼を申し上げます。
結果は4月3日掲載の【速報】第七回翻訳ミステリー大賞決定!にて既報ですが、本日は投票に添えられた「熱いおすすめコメント」の一部を紹介します。
掲載にあたって編集した箇所がありますこと、ご了承ください。作品は得票数順、コメントは投票者名50音順です。コメントなしで投票した方がいらっしゃいますので、コメント数と得票数はかならずしも一致しません。
また、受賞作と最終候補作がとりあげられた「書評七福神今月の一冊」の該当月のリンクも添えました。えりすぐりの5作品を七福神はどんなふうに読んだのか。ぜひリンク先もお読みください。
受賞作『声』アーナルデュル・インドリダソン/柳沢由実子訳(東京創元社)
(15票)


青木悦子:今年は本当に迷いに迷いましたが、やはりこの作品をもっと多くの方に読んでもらいたいと思い、選びました。いくつもの家族ドラマが錯綜する構成、本人のあずかりしらぬところで与えられた才能が栄光を極めたときに、突然、消えたことによる悲劇のせつなさ、短くてもあざやかな印象を残すさまざまな人物描写、また、主人公の抱える傷の深さや葛藤、それでも少し希望を与えてくれる結末、と、やはり群を抜いた筆力だと思います。
安達眞弓:歌うたいの端くれとして、「声」の持つ魅力と恐ろしさ、声を失った悲しさが胸に迫った作品でした。シリーズも三作目となり、エーレンデュル捜査官が、より身近に感じられるようになりました。
柿沼瑛子:第一作の『湿地』が一番良かったと思うけれど、この中では一番好き。インドリダソンという名前が覚えられず、ダンドリさんと呼んでいたのはナイショです。
上條ひろみ:大賞史上最高に悩みましたが、さまざまな家族の事情が複雑に絡み合って、家族小説としても読み応えがあった『声』に一票。
北田絵里子:描かれた家族それぞれの苦悩の「声」が耳に残るよう。読み終えて日が経ったいまもその印象がまったく薄れないので、本作に投票します。
栗木さつき:『もう過去はいらない』と最後まで迷いましたが、切ないボーイソプラノに一票を投じます。「純真無垢な子ども時代」なるものなど存在しないことはわかってはいるけれど、子ども時代を奪われてしまった人間のその後の人生の痛々しさに思いを馳せました。家族をもち、子どもを育てることのむずかしさとほろ苦さを浮き彫りにした力作。
白須清美:候補作の中では最も物語に厚みがあり、エンターテイメントとしても素晴らしい作品として選びました。
高橋知子:クリスマス・シーズンという華やかな時期が背景なので、事件や被害者の過去、主人公エーレンデュルの抱える悲しみが、なおさら心に深く残りました。
冨田ひろみ:毎度ながら読み応え大でした!
菱山美穂:人物設定や物語の展開に奥行きがあり、読後に深い余韻がある。
鶸田裕子:候補作いずれも面白く、かなり迷ったが『声』に。多くの人に読まれて欲しい。
■『声』→2015-08-13 書評七福神の七月度ベスト発表!
候補作『偽りの楽園』トム・ロブ・スミス/田口俊樹訳(新潮文庫)
(14票)
青木創:期待をうわまわる作品でした。特に、起承転結の結の部分がすぐれていると思います。
井野上悦子:トム・ロブ・スミス、新境地ですね。でも、これまでの作品の中で、一番好きです!
宇丹貴代実:ほかの作品にくらべて派手さはないけれど、人の心の深淵をのぞきこむような真相と、ラストのあのせりふにやられました。
小林さゆり:母の語りに圧倒され、ぐいぐい引き込まれました。「家族あるある」満載で痛いところを突いてくるけれど、最後にほっとできるさわやかな読後感がよかったです。「家族って面倒くさい」と思っている人にこそお勧めしたい作品。
芹澤恵:静かなのに熱く激しい物語。苦い結末にして強烈な印象を残すこともできただろうに、そうしなかったところがまた心憎い。
高里ひろ:本のなかの現在ではたいして大きな事件は起きない、ほぼ三分の二を”独り語り”で進むサイコスリラーを堪能しました。showではなくtellでここまで読ませるとは! 精神の崩壊を目の前につきつけられているような語り口が圧巻で、ページを繰る手がとまりませんでした。こわおもしろかったです。
高橋恭美子:寒い国が好きなのでアイスランドかスウェーデンかで最後まで悩みましたが、リーダビリティーと余韻の深さで『偽りの楽園』に一票(でも、今年もバック・シャッツLOVE♥は言っておきたいです)。
橘明美:長い! のですけれど、最後のまとめ方がとてもよくて、ほっとすると同時に感動したので、これに一票。
野口百合子:小説の語りの素晴らしさを堪能しました。
森嶋マリ:正直なところ、上巻の要領を得ない話は少々じれったかった。その分、下巻の加速度が気持ちよく、最後の着地点にはうならされました。
横山啓明:うーん、やはり、これ、かな。
吉野山早苗:一作読むごとに「今年はこれだな」となってしまい、ほんとうに、最後の最後の最後まで迷いました。決め手は、「このお母さんのお話をもっと聞いていたい」と思えたことです。トム・ロブ・スミス、かっこいいです。
■『偽りの楽園』→2015-10-15 書評七福神の九月度ベスト発表!

次回は以下の三作へのコメントを紹介いたします。
●第一回大賞受賞作
●第二回大賞受賞作
●第三回大賞受賞作
●第四回大賞受賞作
●第五回大賞受賞作
●第六回大賞受賞作
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