アメリカのベストセラー・ランキング

8月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. THE VANISHING HALF    Up

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 3. 1ST CASE    New!

James Patterson and Chris Tebbetts ジェイムズ・パタースン、クリス・テベッツ

学友のコンピュータをハッキングしたことが問題になり、マサチューセッツ工科大の大学院を退学になったアンジェラ・フート。恩師の口利きでFBIボストン支局のインターンとなった彼女は、指導役の捜査官ウィリアム・キーツとともに、ITスキルを駆使して兄弟殺人犯を追うことになる。

 

  1. 4. THE ORDER    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第20作。教皇が心臓発作で急死し、ガブリエルは友人の枢機卿に呼ばれてローマへ向かう。「ヴァチカン秘密文書館で、驚くべき書物を見つけた」死の直前に教皇がそんな手紙を残していたことから、枢機卿は教皇が殺されたのではないかと考えていた。

 

  1. 5. NEAR DARK    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第19作。何者かに巨額の賞金をかけられ、命を狙われる身となったハーヴァス。生き延びるため、謎めいたノルウェー人の女スパイと手を組み、反撃を挑む。

 

  1. 6. 28 SUMMERS    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド

ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。

 

  1. 7. THE GUEST LIST    Down

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

  1. 8. DEADLOCK    New!

Catherine Coulter キャサリン・コールター

夫婦捜査官サビッチとシャーロックが活躍するFBIシリーズの第24作。誘拐されそうになっていた上院議員の妻を救ったサビッチ。時を同じくして、どこかの風景のものとおぼしきジグソーパズルのピースが次々に届く。その場所を突き止め、現地に向かったサビッチだが、留守中に妻のシャーロックと幼い息子に危険が迫り――

 

  1. 9. MEXICAN GOTHIC    Up

Silvia Moreno-Garcia シルヴィア・モレーノ=ガルシア

気丈で賢い令嬢ノエミは、従姉から「夫に毒殺される」という手紙を受け取り、すぐさま救出に向かう。そこは最近夢に現れるようになった不吉な屋敷で、昔繁栄した一族の暗い秘密が隠されていた。1950年代のメキシコを舞台にしたゴシック・ファンタジー。

 

  1. 10. CAMINO WINDS    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

【まとめ】

1位の“WHERE THE CRAWDADS SING”(邦訳『ザリガニの鳴くところ』)がついに100週目のランクインを果たしました。今週初登場したのは3位と8位の2作品。3位のパタースンとテベッツは、児童書の〈ザ・ワースト中学生〉シリーズ(『ザ・ワースト中学生 人生で最悪の日々』『ザ・ワースト中学生 ここから出してくれ~!!』『ザ・ワースト中学生 ブロッコリーとヘビといじめからのサバイバル大作戦』/ポプラ社)でコンビを組んでおり、“1ST CASE”は大人向け新シリーズの第1弾ということです。またテベッツは、アメリカの人気バラエティ番組「サバイバー」の司会者ジェフ・プロブストとの共著による児童書『SURVIVOR 1 嵐の試練』、『SURVIVOR 2 炎の試練』(講談社)でも知られています。8位は日本でも刊行が続いているFBIシリーズの最新作。邦訳の最新巻は昨年出たシリーズ第19作の『誘発』(二見文庫)です。なお、本コーナーがお休みだった先週、初登場2位だったスコット・ハーヴァス・シリーズ第19作の“NEAR DARK”は今週5位に入っています。

 

    1. 満園真木(みつぞの まき)

      東京在住の翻訳者。上條ひろみさんの今月の「お気楽読書日記でアレックス・リーヴ『ハーフムーン街の殺人』(小学館文庫)を取りあげていただきましたが、先日発表されたCWA賞最終候補作のヒストリカル・ダガー部門には、この『ハーフムーン街の殺人』の続編である“THE ANARCHISTS’ CLUB”が入っています。訳書はほかに、シェーン・バウアー『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(東京創元社)、リサ・ガードナー『無痛の子』、『棺の女』(小学館文庫)、バリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)など。