今回は、常連さんやお久しぶり~の方々に加えて、海外ミステリーも読書会参加も初めてという新メンバーをお迎えしました。課題書は、昨年新装版として復刊された、マイクル・Z・リューイン『沈黙のセールスマン』(石田善彦訳、ハヤカワ・ミステリ文庫刊)

〈私立探偵アルバート・サムスン〉シリーズ4作目。12年ぶりに再会した高校生の娘とともに、事故で入院中の製薬会社セールスマンに隠された謎に迫ります。ポケミスで愛読し昔からの大ファンという世話人Fと常連Sさんの熱い推しの一冊です。

 

みなさんのひとこと感想から

  • 初めての翻訳ミステリー。人物名にとまどいストーリーを追うのに必死だったが、中盤から一気にひきこまれた。そもそも「翻訳もの=違和感」でしかないので、深く考えずに読んだ(なんとも潔い……)。
  • 福井読書会歴1年。これまで課題書だからと「がんばって」読んできたが、今回は純粋に読書を楽しめた。人物の髪や目の色の描写などがあると、おおーこれこそ海外もの!と実感できる(新鮮に響きます)。
  • 冒頭からダメダメ感満載の探偵で、ハードボイルドのイメージが崩れた。(ハードボイルドって? という議論に発展し、「ネオ・ハードボイルド」というキーワードも登場)
  • 最後の急展開は「火曜サスペンス」のよう。真相解明というより、全部しゃべってしまうのがもったいないと感じた。
  • 事件の全貌がわからず、すっきりしない。
  • 脳内で映像化し役者を思い浮かべながら読むのが好きだが、今回は配役がしにくかった。
  • 人に勧められて読みましたが……「推しの人の話を聞きに来ました!」

これに対して「ええっ?! そうなの?!」と、どよめきが起こりましたが、まさにこれが読書会の醍醐味。面白がるポイントや読み方も人それぞれ。賛否両論があったほうが俄然もりあがります。

 

作品の魅力は?

推しの声を聞きたいという流れから、作品の魅力に迫ってみました。〈大好きすぎて言語化できない〉状況に陥る場面もありましたが……

  • ハードボイルド好きでも謎解きファンでも楽しめ、私立探偵ってなに? という初心者にもやさしい。プロットが入り組んだところもいい。
  • サムスンのキャラが魅力。描写にやさしさがあらわれる。気弱な面がある一方、真相究明のために突き進む。
  • 完全なハードボイルドではなく、内面を見せるところもあるがすべてをさらけ出すのではない。その余白がいい。
  • 文章がいい。翻訳も違和感なく読める。ユーモアがしゃれている。
  • テンポのよい会話、父娘の掛け合いがいい。娘への感情があふれている。
  • 忍び込んだ先で猫とたわむれるといった脱力場面があるのが好き。
  • 思わずジャケ買いしてしまうような表紙がなんともいい(作品のイメージとは合わなかったという人も)。

 

つぎに読むとしたら……

本書の紹介文に「米澤穂信氏推薦のシリーズ最高傑作」とあり、これが最高ならほかはどうなの? と素直な疑問の声もあがりましたが、どの作品もおもしろいようで、なかでも世話人Fが「傑作」として推すのは、シリーズ最新作で、警官になった娘が再登場する『父親たちにまつわる疑問』(ハヤカワ・ミステリ文庫)。

父娘ふたりの活躍に乞うご期待!

ほかには、シリーズ第1作『A型の女』(何度読んでも泣けるらしい)や『消えた女』『季節の終り』もおすすめ(書店での入手は困難)。『ミステリマガジン』2022年 09 月号(リューイン生誕80周年特集号)もあわせてどうぞ~

その後参加者さんからは、これこれを読んでいますというご報告が数件届いています。

今回もわいわい楽しいひとときを過ごせました~参加者のみなさまどうもありがとうございました。次回福井読書会は9月2日(土)開催予定。ひきつづきよろしくお願いします!