越前敏弥さんと宮下奈都さんをお迎えした福井特別読書会(2018年12月)を経て、この度福井読書会を立ち上げることになりました! その記念すべき第一回を9月28日(土)に開催。兵庫、岐阜、石川、福井県内から7名のみなさんにお集まりいただきました。
 課題書は、ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』

<さすがのミステリー>
 昨年末の各種ミステリーランキングで上位につけ話題になったサスペンスですが、期待通り、予測不能の急展開で、最後まで一気読み必至の傑作。序盤で、この人がここで?!……という予想外の展開に驚かされたという人がほとんど。最後までオチがわからないまま物語は進行し、完全犯罪成立かと思いきや、最後の2ページでまたまた思わぬ展開。そして極めつけは例の手紙! みなさんから絶賛の声が続々と寄せられました。
 ミステリーはあまり得意ではないという参加者からは、(引き込まれない物語だと)つい途中をとばして結末へと進む(そして安心してまた途中に戻る)という独特な読み方が披露されました(同志をさがしているそう)が、今回の課題書はふつうに読了できたとのこと! ミステリー好きでなくても読みがいがある作品のようです。
 作品中に本のタイトルや作家名などが具体的にあげられていることに注目した人も。筆頭はパトリシア・ハイスミス『見知らぬ乗客』。ハイスミスとの類似点が指摘されるなか、こうした作品を読んでいたほうが、より楽しめるのでしょうか? というミステリー初心者に対して、ハイスミス識者からは、別に読んでなくてもあまり関係ないよ、という冷静な回答が……作品単体で十分楽しめるということですね。

<登場人物>
「とにかくみんな変」な人物たちについての議論は尽きることはなく、
・浮気したら殺されても当然! という独特な倫理観をもつ人たち。そうした人間の対決が描かれている
・ミランダは「ふつうに悪いやつ」。動機もわかりやすい(ブラッドとの関係も)。それに比べるとリリーの怖さ! 行動にはちゃんと理由があり迷いがない。つねに冷静に対処
・テッドの執念(高校時代の復讐)も怖い。そこにリリーがひかれるのかも
・女性陣が有能でクールなのに対して、男性が「ポンコツ感」満載。とくにブラッド(使われてるだけ!)。刑事の男女コンビも(ただただ哀れなキンボール)……
などなど、いろいろな感想が出ました。
 サイコパス的な要素に関しては、各人物の家庭環境や成長過程が語られ、のちの言動につながるとして評価されながらも、リリーの恨みは父には向かわなかったのか、両親は娘の異常性に気づかなかったのか、リリーの父は何か感づいていたのでは? というような疑念も浮上しました。

<三部作>
 かっこいいと絶賛されたジェイムズ刑事(女性)は、作家のデビュー作『時計仕掛けの恋人』(残念ながら絶版)から『ミランダ』に続く『ケイトが恐れるすべて』までの三作に共通した登場人物で、要注目キャラです。
 タイトルに関して。原書では “The Kind Worth Killing”と人物名は登場せず(『ケイト』 “Her Every Fear”も同様)かなり思い切った翻訳! 「そして」が効いている! などのコメントも出ました。本文の翻訳に対してもみなさんの評価は高く、酔っぱらいのセリフが気に入ったという方も。
 世話人Fのアイデアで作品中の猫にも注目してみました。これら三作でも猫が出てきてちゃんとした役割も与えられています(『ケイト』ではもっと重要な働きをしますよ!)


<さいごに>
 最近読んだ作品、一推し作品をお尋ねすると、つぎからつぎへとさまざまな作家、作品名が出てくる、出てくる。文字通り圧倒されました。エラリー・クイーンやアガサ・クリスティをはじめ、マイクル・コナリーから綾辻行人……(略)……「ミレニアム」や「特捜部Q」などシリーズものまで。
 また転勤で来福間もない方のために、福井の書店(古本も)、図書館事情、イベント案内(図書館主催の作家講演会は要チェック)、ブックカフェ情報が提供され、さらには電子書籍について、新旧翻訳の好みなどが熱く語られる場面もありました(話は尽きずそのまま懇親会へ……)。
 やる気満々で開催計画を練ったものの、当初参加者がなかなか集まらず、慣れない世話人二人は気をもみましたが、総勢9名で充分に盛り上がりました。遠方から、またご夫婦での参加も、みなさま本当にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします!(ご期待にお応えし、第2回の計画もすでに進行中ですよ~)