第23回 秋の新シーズンスタート。来夏まで生き残れる新番組はどれだ?!

 9月です。アメリカは毎度お馴染み新シーズンの始まりであります。

 というわけで、今回はアメリカTVドラマの9月新番の中から、ミステリ系のものをドドーンとご紹介しちゃいますよ〜。

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 なんといっても放送前から話題になってるのは「チャーリーズ・エンジェル(Charlie’s Angels)」でしょう。映画版でエンジェルの一人を演じたドリュー・バリモアが製作にまわった今回のリブート版は、レトロな感じを一切排した、ぐっと現代的なアクションが見物だとか。今人気の「ハワイ5-0」のリメイクと同じ路線ですね。

 今回の新しいエンジェルたち3人は、新時代のセクシー・ヒロインとして人気が出るのかな〜?

 ヒロインものといえば、「バフィー 恋する十字架」のサラ・ミシェル・ゲラーが久々にテレビドラマに復帰したっていうので盛り上がっているのが「リンガー(Ringer)」です。

 リンガーって「生き写し」って意味でして、そのタイトル通り、ゲラーは見た目がそっくりの一卵性双生児を一人二役で演じます。

 双子の一人ブリジットは、偶然ギャングによる殺人を目撃してしまい、双子であるシボーンのところに逃げ込みます。ところが、シボーンが謎の失踪を遂げてしまい、一人残されたブリジットは彼女になりすまして難を逃れようとするのですが、とたんに謎の男の襲撃を受けてしまいます。満ち足りた生活を送っていたように見えたシボーンも、危険な謎を抱えていたのです。かくして、ブリジットは、二重の危険にさらされてしまうことに……。

 というわけで、謎が謎を呼ぶサスペンスものな感じの本作、移り気なアメリカの視聴者を毎週つなぎとめていられるかどうかが、成功の鍵かも。

 さて、今期の新番ミステリは女性主人公ものが多いのですが、「アンフォーゲッタブル(Unforgettable)」は、映像記憶を持った女刑事が主人公。見聞きしたすべての物事を忘れない特殊能力を持つ主人公が、それを生かして事件を解決していくのだとか。主役は「FBI 失踪者を追え」のポピー・モンゴメリー。

「プライム・サスペクト(Prime Suspect)」は、イギリスの渋い警察ドラマ「第一容疑者」のアメリカ版リメイク。

 舞台をアメリカに移し、オリジナル版でヘレン・ミレンが貫禄たっぷりに演じていた主人公を、マリア・ベロが演じています。うーん、オリジナル版と比べると若くて美人すぎる気も。(^_^;)

「リベンジ(Revenge)」は、なんと『巌窟王』というか『モンテクリスト伯』の現代版リメイク。しかも主人公を女性に変更。これはさすがにどうかなあ。打ち切られないといいですね(わりと棒読み)。

「ホームランド(Homeland)」はイスラエルのテレビドラマのアメリカ版リメイク。クレア・デインズ扮するCIAエージェントが、中東から帰還した海兵隊員がアル・カイダの工作員なのかどうかを探ろうとするという、サスペンスもの。クレアの上司役に「クリミナル・マインド」のマンディ・パティンキン、謎めいた帰還兵に「ライフ」のダミアン・ルイスと、配役はなかなかのもの。

 さて、最後にもう一本、ちょっとSF風味の混じった作品も紹介しておきましょう。「パーソン・オブ・インタレスト(Person of Interest)」は、「フリンジ」があいかわらず好調なJ・J・エイブラムズ製作のSFミステリ。

 近い将来暴力的な犯罪に関係するであろう人物を特定できるプログラムが、謎の大富豪によって開発されます。それを元に、凶悪犯罪を阻止するために、元CIAエージェントが雇われるのですが、問題はこのプログラムでは、事件の内容や発生日時、さらには特定された人物が加害者なのか被害者なのかもわからないのでした……。

 とまあ、いかにもエイブラムズっぽい、謎また謎のSFスリラーになっている模様。もしかしたら、「フリンジ」同様、途中からSF側にどどーっと話が振れていく可能性大かも。

 以上、ミステリ系の新番組はこんな感じです。けっこう本数が少ないのは、結局昨シーズンで打ち切りになったドラマが少なかったため。前にこの連載でボーダーライン上にあると書いた番組がほとんど生き残っちゃったんですよね。それどころか、打ち切りだろうと思われてた「チャック」が、今期こそ最終シーズンにするという前約束つきで生き残ったり。

 これは、私の個人的な印象なんですが、今期はなんとか生き残ったドラマも、今度こそそろそろ打ち切りの時期が迫っている感じがします。なんか、ミステリ系ドラマ全体のトレンドとして、「CSI」みたいな科学捜査ものから、「ハワイ5-0」みたいなアクションものに人気が移ってきつつあるみたいだし。来年はドーンと大異変が起こるかも。

 あと、今期はわりとSF/ファンタジー系の新番組が多いということもあります。そのへんは9月25日発売の《SFマガジン 11月号》の連載コラムのほうに書いておきましたんで、興味のある人はぜひ。

 さて、いったいどの番組が生き残るんでしょーねー? とか書きつつ、個人的には、ミステリでも何でもない60年代再現ドラマの「プレイボーイ・クラブ(The Playboy Club)」(バニーガールがぞろぞろ登場)と「パンナム」(クリスティーナ・リッチがスチュワーデス役!)が気になってたりして(笑)。

 え、今回は小説の紹介がないだろうって? なんせ、新番組特集だからなあ。じゃあ、女性主人公もの合わせで、女探偵ものの有名シリーズを3本挙げておきましょう。

 サラ・パレツキーV・I・ウォショウスキーもの(『ミッドナイト・ララバイ』他)スー・グラフトンキンジー・ミルホーンもの(『ロマンスのR』他)ジャネット・イヴァノヴィッチステファニー・プラムもの(『勝手に来やがれ』他)

 いずれ劣らぬタフガイならぬタフな女性たちが活躍するミステリです。パレツキーやグラフトンのデビュー当時は、日本じゃ「女性探偵のハードボイルドなんて」などとしょうもないことを言う人もいましたが、今じゃすっかり定着しましたよね。

〔挿絵:水玉螢之丞〕  

●予告篇集

「チャーリーズ・エンジェル」

http://www.youtube.com/watch?v=oC6MB9X7K4o

「リンガー」

http://www.youtube.com/watch?v=alb5E1cbjgY

「アンフォーゲッタブル」

http://www.youtube.com/watch?v=lEDycgpEtkQ

「プライム・サスペクト」

http://www.youtube.com/watch?v=yUOUrWxIWbs

「リベンジ」

http://www.youtube.com/watch?v=kHIaORMG-AM

「ホームランド」

http://www.youtube.com/watch?v=xqddY2sOk6U

「パーソン・オブ・インタレスト」

http://www.youtube.com/watch?v=68xN_BNYhc4

「プレイボーイ・クラブ」

http://www.youtube.com/watch?v=F-95qfa956A

「パンナム」

http://www.youtube.com/watch?v=A81AdhD4G7w

堺三保(さかい みつやす)

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1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。近刊『キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー』(小学館集英社プロダクション)。

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初心者のためのパレツキー入門(執筆者:山本やよい)

挟名紅治の、ふみ〜、不思議な小説を読んで頭が、ふ、沸騰しそうだよ〜 略して3F(第1回から第19回までが「スー・グラフトン読書日記」です)

初心者のためのジャネット・イヴァノヴィッチ(執筆者・細美遙子)

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