2019年8月31日、第5回弘前翻訳ミステリ読書会を開催いたしました。
 課題書は『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』『傷だらけのカミーユ』(著:ピエール・ルメートル/訳:橘明美/文春文庫)のカミーユ警部3部作です。

 ゲストとして担当編集者の永嶋俊一郎さんをお迎えしました。
 参加者は8名、地元からの参加は5名でした。

 3作まとめて課題書とするのは弘前読書会初の試みでしたが、参加者からは「どれか1作を語ろうとすると他の2作のネタバレになってしまいそうなので、3作すべてが課題書で嬉しい」というありがたい声がありました。
 というわけでネタバレに気をつけつつ、皆様から出た意見を紹介します。
・後味が悪い。ルメートルさんはどうしてこんな話を書いたのか
・とはいえただグロテスクなだけではなく、人間臭いところが魅力的
・カミーユの心情を汲み取りながら再読するのが楽しかった
・泡坂妻夫や連城三紀彦などを連想した。ただし日本の作家ならもっと丁寧に書くのかも
・事件そのものに真新しさはないが、とにかく構成がうまい
・ルメートルは『こち亀』読んでるよね、絶対
(絶対かどうかはさておき、日本の読者はどこの国の読者よりもルイに親近感を覚えているに違いありません……!)

 デフォルメされたキャラクターと巧みな構成など、これまでに日本に紹介されてきたフレンチ・ミステリとは一味違って新鮮だったという意見もありました。
 逆に30代以上のキャラクターが多い点がフランス的だという声も。
 もしアメリカで書かれていたらイレーヌはきっと23才、とおっしゃる方もいて、その具体的な年齢に妙に納得させられました……。

 また、『悲しみのイレーヌ』本文に使われたさまざまな書体を特定してきた方も!
 いちど読んだだけではスピーディーな展開に翻弄されるばかりで気がつきませんでしたが、読み返してみるとたしかに新聞記事や手記など、場面に応じて多数の書体が使われていますね。
 原書が欧文の場合、元はイタリック体になっている箇所をどのように処理するかは編集者や訳者の頭の悩ませどころのようです。
(とはいえ、永嶋さんによるとけっこう楽しい作業だったのだとか……。なんとなく分かる気がします)

 さて、このシリーズは日本では原書と刊行の順序が異なり、2作目の『その女アレックス』が『悲しみのイレーヌ』よりも先に出版されました。
 多くの方が疑問に思ったこの順序について永嶋さんに聞いたところ「1作目は仕掛けがマニアックなので、そのせいで売れなければ次が出しづらくなるので、より売れそうな『アレックス』を先に出すことにした」といったことを話してくださいました。
 かくしてご存知のとおり『その女アレックス』は大ヒットし、シリーズ作品のみならず多数のルメートル作品が日本語訳で刊行されることとなりました。
 私たちがこうしてシリーズ作品を読めているのは、この時の英断のおかげなのかもしれません。

 少人数での開催でしたが、3作を語ろうとするとあっという間に時間が過ぎていきました。
 ちょうど読書会の数日後に刊行を控えていたカミーユ警部シリーズ番外編『わが母なるロージー』に期待を膨らませつつ、本会はお開きとなりました。

 その後の懇親会では翻訳ミステリのみならず、少女漫画や時代小説、弘前のおいしいアップルパイのお店情報などの話題で盛り上がりました。
 参加された皆様、ありがとうございました!