課題書を読んでから、にわかヴァイオリンスキーに拍車がかかりまくっている浜松読書会世話人でございます。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
去る7/4(土)、第2回浜松読書会が開催されました。課題書はポール・アダム著、青木悦子訳『ヴァイオリン職人の探求と推理』、タイトル通り、ヴァイオリン製作で有名なクレモナの職人が探偵役になって殺人事件とストラディヴァリウスの幻の名器を巡る謎に挑むミステリです。
告知にも書きましたが、会場の浜松市は「音楽の街」として街作りを推進している事だし、楽器メーカーも軒を連ねてるし、うってつけじゃないか! と課題書にした次第。
(どっちか言うと、ピアノが有名な街なんじゃない? と言うツッコミは置いといて下さい)
前回は事前にさわやかツアーを開催しましたが、今回はJR浜松駅近くにある楽器博物館へ見学に。
ピアノやヴァイオリンなどの誰でも知っている楽器から、コレって本当に楽器なの? と思ってしまうような珍しいものまで、所狭しと展示された様々な楽器の数々を触りたくて鳴らしたくてウズウズしながら見学し、募らせた欲求不満を最後の体験コーナーで発散。正直、時間が足りなかったなと思えるくらい楽しみました。
さて、午後からはいよいよ読書会。課題書翻訳者の青木さんと担当編集者の佐々木さんをゲストにお招きしてディスカッションスタート。
登場人物について
「職人って言うから偏屈な頑固じいさんかと思いきや、ジャンニってばいいおじいちゃん!」
「イタリアの名前に慣れなくて苦戦した。なんであんなに長いの?」
「ジョバンニがジャンニになるのが理解できない……」
「イタリアっぽいと言えば、マルゲリータとの会話がおしゃれ!」
「日本人には無理な話〜」
別の人物をさして「派手で愛人持つのがイタリア人っぽい」と言う意見も。
「アントニオとのコンビがよかったです」
「初めてのスコーンに美味しいって喜んでるところが可愛いよねー」
「でも彼の警察官としての倫理観はどうかと思った」
と、ここでアントニオの現職警官としての倫理感についてひとしきり盛り上がるも、最終的に「イタリアだしね」で決着。
エンタメミステリ作品に出てくる素人探偵と警察官のコンビの場合、その辺は目を瞑りましょう。
そう言えば、皆がアントニオ呼びの中、佐々木さんだけが名字を略して「グァダ」呼びしてたのが印象的でした。私の脳内ではどちらでもなくそのまま「グァスタフェステ」呼びだったんですが……。
ミステリ要素について
「冒頭の合奏シーンでてっきりこの4人の中のクローズドサークルものかと思ってたんですが、全く違いました」
「実は○○を犯人だと思ってて、ずっとそのまま読み進めてたんですよね〜」
上げられた名前にどよめく参加者一同。さすがにそれは思いつきませんでした。
「殺人事件そのものはちょっと微妙と言うか、むしろ幻の名器〈メシアの姉妹〉を巡る物探しの道筋がすごく面白かったです」
これについては同意者多数。物探しミステリの代表としてはエンタメ色が強いものだとダン・ブラウンのラングドン教授シリーズが上がりました。
「……楽器の由来についての蘊蓄にはついていけなかったよ」
え! 世話人の私の一番好きなところです、蘊蓄! 思わずいろいろと調べてレジュメに付けちゃいましたよ。青木さん、その節は資料本を貸していただきありがとうございました! 特に横山進一著『ストラディヴァリウス』(アスキー新書)はカメラマンが著者ということもあって写真が素敵な一冊でした。
その他の意見
ライフスタイルの描写とかジャンニの探偵活動とか、なんだか「コージーミステリ」ぽいなと言う意見が。
「でもいわゆるコージーみたいな軽さはあまり感じなかった。ちょうどいい感じ」とも。
ジャンニの過去や悩み、職人としての矜持や葛藤などの諸々のわりと重い事情もあって、コージーっぽい軽さと相殺したのかも。
最後に参加者の皆さんの手土産をお茶菓子に頂きながら、特番でお馴染みの「格付けチェック」よろしく「ストラディヴァリウスはどっちだ?」を開催。
(世話人が資料用に借りた『ヴァイオリンの名器と名曲』に添付されているCDに聴き比べクイズがあったのです)
全4問、問題が進むほどに正解率は上昇。やはり聴き慣れると違うんですね。聴き比べ終わって最終的にはストラディヴァリウスだからと言って好みかどうかは人それぞれだな、と思えました。
第二作『ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密』も第一作よりもさらに面白かったので、続きは出るのか伺ったところ、残念ながらポール・アダム氏が執筆されていないそうです。
そんな残念な情報もありつつ、本会終了。
その後、懇親会でまた楽しくお喋りをして解散となりました。
遠方から参加してくださったゲストのお二人と参加者の皆さまに改めて感謝申し上げます。
浜松読書会世話人 山本 三津代(@nirokuya)