日々のエアコン使用になんのためらいもなくなっている今日この頃、職場でも自宅でも熱中症対策はできる限り意識していきたいものですね。

 去る5/12(土)マリア・Ⅴ・スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーBOOKS)の読書会を行いました。
 ファンタジー作品を課題書に選ぶのは第3回のダイアナ・ウィン・ジョーンズ『バビロンまでは何マイル』(創元推理文庫)以来の2冊目。前回はコメディ要素たっぷりのライトファンタジーでしたが、今回ははっきり言ってドシリアスでダークな雰囲気漂うファンタジーです。
 どこら辺がドシリアスかつダークなのかはあらすじを読めばわかってもらえるかと。

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 ある殺人を犯した罪で死刑囚となった少女イレーナ。ついに絞首台へと送られる日を迎えるも、そこで思わぬ選択肢を与えられる――今すぐ絞首刑か、それとも、国の最高司令官の毒見役になるか。だが毒見役を選んだイレーナを待ち受けていたのは、逃走防止の猛毒だった。かくして少女は毎日与えられる解毒剤なしには生きられぬ身体に。わずかな生きる希望に賭け壮絶な日々に立ち向かうが……。
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 そんなハードモードな『イレーナ』への感想はどんなだったかと言いますと……

「内容盛りだくさんで目まぐるしいくらい」
「わりと酷い描写が多かった。始まりの牢屋の場面もだけど、拷問シーンとか」
「生々しく痛いし、汚いのが目に浮かぶよね」
「毒も本当にこんなのあるの? って聞きたくなるくらい設定が凝ってるし、政治的な駆け引きもあって読み応えがあった」
「不幸な主人公好きだから、イレーナはいいね~。好き!」
「人間不信で心を閉ざしがちでも、芯のところで逆境に負けないで仲間を作っていく強さがいいよね」

 作品そのものやヒロインについては好意的意見が出ました。
 この作品は主人公イレーナの一人称で進むので彼女の知り得ない物事はずっと謎のままなんですが、彼女の心の動きや考え方はじっくり描かれていきます。
 不幸な生立ちの年若い主人公がその境遇に負けずに立ち向かう姿が読者にストレートに伝わるのは舞台が現実世界とか架空世界とかは関係なく、心情が真に迫っているからこそなんでしょうね。

 さて、一方のヒーロー、ヴァレクについてはどうだったかと言いますと……

「惚れるの早すぎ」
「イレーナがヴァレクに恋愛感情を持つのは解るけど、逆がイマイチよく解らないうちに出来てた」
「イレーナとは年の差カップルだよね? ヴァレクって何歳? え? 30代!? マジで???」(←全員に聞いたところ最高で40代。概ね30代前半)
「歳の割りに未熟」
「ヴァレクよりもランド(料理人)推し!」(同意見多数)

 ……ヒーローの立場は……と言いたくなるくらいヴァレクに対して皆さん厳しい(笑)
 参加者はお姉様が中心だったから、もっと若手だったら、別の意見が出たのかも?
 その後「ヴァレクはツンデレなのか?」論争が勃発しましたが、最終的に当読書会では「彼はツンデレではない」と言う結果になりました。
 世話人は、あえて言うならクーデレ? と思っております。

*こちらに簡単に説明されているのでご参考までに。
ツンデレhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AC
クーデレhttps://www.weblio.jp/content/amp/%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AC

 キャラクターや本筋(オチ)以外に「ロマンス要素が予想外に多くて驚いた」と言う意見も出ました。
 参加者の何人かは(株)ハーレクインが社名変更してハーパーコリンズ・ジャパンになったのを知っていたので「当然ロマンス有りだな」と考えていたようですが、未知の方はそうなりますよね。
『毒見師イレーナ』は本国ではハーレクインティーンズと言うレーベルで出版されていて、そのレーベルの主旨が……etcと説明したところ、「ロマンス読者養成ギプスなんだ! スゴい!!」と言う名言が飛び出しました。
 養成ギプスと聞いて大リーグボール養成ギプスを思い出し「巨人の星」のテーマまで一気に連想しちゃったのは私だけでしょうか?(昭和脳)

 ドシリアスでダークなハードモードのファンタジーだったはずなのに……おかしい……

 なんだかんだと盛り上がり、会場の使用時間ギリギリになってしまい、最後は少々慌ただしい終わり方でしたが、とても楽しい時間を過ごせました。

 次回の浜松読書会は9/29(土)、課題書は春のコンベンションで東京創元社のイチオシとして紹介されたロバート・ロプレスティ『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』(訳:高山真由美)です。

 近々募集を始めますので、案内をお待ち下さい。

浜松読書会世話人
山本 三津代(@nirokuya