年末年始から大風邪を引き、治ったと思ったら、花粉症に悩まされている世話人でございます。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
ちなみに大遅刻で行った今年の初詣では健康祈願守りを贖いました。今のところ、周りにインフルエンザが蔓延しても感染していないのでご利益があると信じております。
さて、去る1/30(土)シンジケート後援での浜松読書会が開催されました。課題書はダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、原島文世・訳『バビロンまでは何マイル』(創元推理文庫)。
はい、ミステリー要素もない事はないですが、キッパリハッキリファンタジー作品です。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(以下DWJ)と言えば、英国児童文学作家としての名声が高いですが、大人向けのファンタジー作品も執筆しています。課題書はそんな大人向け作品の1つ。
課題書のあらすじは以下の通り(文庫裏表紙から引用)。
あんまりだ、旧ユーゴと北アイルランドの平和に奔走して帰ったばかりなのに、今度はコリフォニック帝国の非公開法廷の立ち会いだ。いやなことは重なるもので、マジドの師スタンが死にかけているとの知らせが入る。皇帝暗殺で大混乱のコリフォニック帝国と、新人マジド選び。ふたつの難題を抱えた魔法管理官ルパートの運命は。英国ファンタジーの女王が贈る、愉快でにぎやかな物語。
さて、そんな面白そうな作品の感想から読書会スタート。
「登場人物多すぎ!」
「しかも変人ばっかりで(笑)」
「変すぎて感情移入と言うか焦点にするキャラがいなかったなぁ」
変人が大勢出てくるのはDWJ作品のお約束なんです。むしろ変わった人しか出てこない……主人公ですら【個性的】という言葉で飾った変な人……クレストマンシーしかり、ハウルしかり。「変人上等!」と言っても過言ではないかもしれません。
「現実世界にしろ、異世界にしろ、人間関係が解りにくくて……」という参加者が読む時にコレが欲しかった……と、本気で呟く参加者全員が絶賛した力作、登場人物相関図の作成者はDWJファンを自負する参加者Tさん。その節はありがとうございました!
多種多様な登場人物による複雑な人間関係については「クリスティに似てる」と言う意見も。どうやら意外すぎる組合せに落ち着く点にそう感じたそうです。特にロマンス展開に関わるところでしょうか。同じ英国人作家ですし、影響があってもおかしくないですよね。
前半(上巻)はなかなか読み進められなかったけど、後半はかなりスピーディだった方が多かったのも印象深かったです。下巻に突入する頃には作品世界に馴染めるのもあるんでしょうが、上巻ではどれだけ広がるか分からない風呂敷に戸惑って、それらを把握しようとすると読み進められなくなるのかもしれません。
どう関係するのかイマイチ分からなかった伏線が「ここで繋がるのか!」とキレイに回収されてまとまっていく過程がDWJらしい構成なんですが、それがミステリーっぽいとおっしゃる方もいました。
「ファンタジーとしてのお楽しみ要素は薄かったかな。指輪を捨てるとか、極悪魔法使いを倒すとかの大きな目的がないから、微妙にもやもやする」と言う意見が出たことでひとしきり【ハイファンタジー】と【ライトファンタジー】の違いについてだったり、ファンタジーとは何ぞや? といった「そもそも論」的な話題で盛り上がりました。今回の参加者にはファンタジー自体初読みという方もいましたが、ここで少しは解って頂けたような、そうでないような? ちなみに課題書はライトファンタジーに分類されます。
「日常の中にいきなりありえない話を突っ込んでくるところが『うる星やつら』っぽいと思った」という意見には、なるほど! と一同納得。
その他、作中に出てくるホテルの構造がどうなってるのか謎すぎるとか、SF大会って実際は書かれてるのと似た感じなの?(実際に参加した事がある人がいないので不明のまま)とか、異世界人の生死観が妙に軽いよねとか、〇〇の登場シーンが水戸黄門みたいとか、様々な意見や感想が出ました。
「……で、結局【バビロン】、原書で言うところの【Deep Secret】てなんだったの?」
この究極Qについては、明確な答えは出ないままに読書会は終了しました。
読んだ方それぞれの解釈があると思いますので、興味を持たれたら是非読んでみて、答えがわかった! と言う方はご連絡いただけるとものすごく嬉しいです。ちなみにこの課題書、残念ながら各所で品切れ中のようです(読書会告知の時点ではネット書店でもリアル書店でも見かけたんですけど……)。
浜松読書会 世話人
山本 三津代(@nirokuya)