全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは! 

 本国ではコンスタントに続いているお気に入りのミステリシリーズが、翻訳での刊行が途絶えてしまい、あの続き、どうなったんだろう……ともやもやすることが多い昨今。しかし! 去年の9月に刊行されてこの連載にも登場したジャック・ソレン『ジョニー&ルー 掟破りの男たち』の続編、『ジョニー&ルー 絶海のミッション』(訳・入間眞/ハーパーBOOKS)が5月に刊行されたんですよ! ハーパーBOOKSさん、ありがとう! 

 盗まれた美術品を取りもどし、国や美術館など正当な持ち主に返却する、いわば義賊の“君主”。国際指名手配犯である謎の怪盗の正体は、元スパイのジョナサン・ホール(ジョニー)と元特殊部隊員のルイス・キャッチブロウ(ルー)のアメリカ人二人組でした。奪い返した美術品には手をつけず、引き渡し相手からもらう手数料で儲けていた彼らですが、紆余曲折を経てコンビは解散。別々の人生を歩んでいた二人は、“君主”のしわざに見せかけた殺人事件が起きたことで、ふたたび手を組み、恐るべき陰謀に立ち向かったのでした。

 続編の本作は、その事件から2年後に幕を開けます。“君主”の仕事を続けてさえいれば破格の収入があったものの、二人を抹殺するべくつけ狙う執念深い資産家から家族を守るため、貯金を切り崩しながらほそぼそと生活しているジョニーとルー。二人ともロンドン在住にもかかわらず、危険を避けるためになるべく距離を置いていました。そんな状況で引き受けた依頼の裏には、人類の未来を左右する途方もない恐怖の計画が待ち構えていたのです……。

 前作のクライマックスはジャングルの秘密基地、そして今回はなんと日本の豪華客船、その名も寿老人丸号!(美老人ではない)作者ソレンさん、一作目も相当ド派手な展開でしたが、本作のミッションは、アクションシーンも陰謀の規模も、前作より豪快にパワーアップ!  

“君主”だったら朝飯前の、名画奪還という単純な仕事だったはずが、ふたを開けたら国家どころか地球規模の危機。それをたった二人で命がけで食い止めることになったジョニーとルーを、前作未読の方に簡単にご紹介しますと——

ジョニー:イケメン、細マッチョ、頭脳明晰、渉外担当、娘が一人

ルー:180センチ、100キロ、体脂肪10%、甘い物とロングコート好き

 と、対照的なコンビですが、場合によっては頭脳担当と力仕事担当が入れ替わることも。常に相棒の気持ちを読み取って一歩先の行動さえも予測できるほどのソウルメイト、世界でたった一人のパートナーと言っても過言ではないこの二人には、前作でも腐女子まっしぐらなキラーフレーズがてんこ盛りでしたが、今回も——

「おれも愛してるぞ、でかいの」

というダイレクトな台詞を筆頭に、多分わかってらっしゃるソレンさん、随所で萌えシーンをサービスしまくっていますので、そちら方面の方々は期待してお読みください!

 さらに今回も、敵か味方かわからないクセのあるキャラが次々に登場。バスローブ姿で酒浸りのテキサスの大富豪、燃えるような赤毛の殺人マシーン少女、トヨエツ風美形ロボット技師の日本人ナグラ(作者、『攻殻機動隊』ファン?)などが出てきますが、中でもスウェーデン出身で謎解き命のウィンター・ソルジャー調査員(読めばわかる!)は要チェック!!

 帯には「今度の敵は黄金の国ジパング!?」とありますが、果たして本当にそうなのか? 火薬と肉弾戦のアクションシーン満載、そして合間合間に隠された(?)主役二人のいちゃいちゃエピソードも楽しいこの作品で、ジメジメした梅雨を乗り切りましょう!

 そうそう、お気づきになった方もいるかと思いますが、日本版の表紙、一作目はルーの正面とジョニーの後ろ姿だったのが、二作目の今回はその逆パターン。<版元さんのジョニーのイメージはブラピタイプのイケメンということが発覚(笑) 三作目が出たらどうするのかな〜と今から楽しみなので、ソレンさんとハーパーBOOKSさん、期待してますよ!!

 さて、バディものといえば若いイケメン……とは限りません。7月30日公開のアメリカ映画『ロング・トレイル!』は、70歳をとうに超えたシニア二人が、3,000キロを超える徒歩での旅に出かける、正真正銘のバディ・ムービーです。

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 かつて旅行記でベストセラーを出したノンフィクション作家のビル(ロバート・レッドフォード)は、長年暮らしたイギリスを離れ、祖国アメリカに帰ってきます。三世代に渡る家族に囲まれ、穏やかな暮らしを送っていたビルでしたが、いまや葬儀以外に特別なイベントがないことに気がつき、友人の死をきっかけに“アパラチアン・トレイル”に挑戦することを決心するのでした。

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 米国三大ロング・トレイルの一つ、“アパラチアン・トレイル”とは、アパラチア山脈の稜線に沿って、14州にまたがる総距離約3,500kmの自然歩道を、必要なものを担ぎ、約半年の間ひたすら歩いて横断すること。若者ですら過酷な挑戦を、70過ぎた老人(レッドフォードの実年齢は79歳)にいきなり思い立たれても、当然家族は大困惑。誰か相棒を連れて行くという条件で妻キャサリン(エマ・トンプソン)をなんとか説得しましたが、やっと見つけたのは40年前に借金を踏み倒されてそれっきりだった旧友スティーヴン(ニック・ノルティ)。電話ではわからなかった彼の不健康なメタボ体型を見て不安しか覚えないビルでしたが、背に腹は変えられず、ついに出発することに。雄大な自然をバックに、シニア二人の珍道中は一体どうなるのでしょうか……・。

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 原案は、主人公ビルによるノンフィクション、『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験—北米アパラチア自然歩道を行く』(中央公論新社 現在絶版)。映画では高齢者ならではの苦労や失敗談などがフィーチャーされていますが、実はこの作品、著者が40代後半の頃の体験談。2002年にたまたまこの本を手にしたレッドフォードが大変気に入り、『旅するジーンズと16歳の夏』のケン・クワピス監督によって映画化されました。レッドフォードは原作を大笑いしながら読み、自分とポール・ニューマンが共演しているこの映画を観たいと思ったそうなのですが、それが叶わなかったのはとても残念です。もし実現していたら、ブッチとサンダンス、ゴンドーフとフッカーに続いて、二人の代表作になったかもしれません。とはいえ、レッドフォードより実際は5歳下のニック・ノルティも、老人力全開のちょい悪シニアをラブリーに演じています。夏休みの山登り挑戦前、またはその疲れを癒しに、涼しい劇場で美しい大自然をゆったりと堪能されてはいかがでしょう。

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♪akira

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  BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛と哀しみのスットコ映画」を超不定期に連載中。

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