全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは!

 今年もたくさんの作品に萌えさせていただきました! 今回は年末特別バージョンといたしまして、ここでは取り上げられなかったオススメの腐作品をいくつかご紹介したいと思います。

 小説ではまず、カミ『ルーフォック・オルメスの冒険』(高野優訳/創元推理文庫)をば。ユーモア・ミステリとして他の追随を許さないこの短編集。全く古さを感じさせないどころか、1億光年ぐらい先を行っちゃってるようなハイパーなギャグが炸裂。抱腹絶倒の合間に、名探偵オルメスのことを本気で尊敬している忠実な助手に注目してください。なんともいえない微妙な腐要素を感じていただければ幸いです(笑)。

 グレッグ・ハーウィッツ『オーファンX 反逆の暗殺者』(三角和代訳/角川文庫)は、タイトルのとおり、孤児の主人公が、ある巨大組織の秘密プロジェクトで訓練を受けて腕利きの殺し屋になるのですが、わけあって組織から離脱。その後は困っている人を趣味で助けるという、寒い季節にぴったりなハートウォーミングなお話です。<? しかし国家機密も熟知した主人公を組織が放っておくわけはなく、差し向けられた追手を振り切りつつ、貧困や暴力で苦しむ市井の人々を、体を張って守るというハラハラドキドキのアクションノヴェルです。知り合ったシングルマザーの家族も事件に巻き込まれるのですが、この息子と主人公のふれあいがいいんですよ! かっこいいお兄さんに憧れる小学生と、一人で孤独に生きてきた主人公とのぎこちない交流。学校でのいじめ対策を教える場面とか、ほのぼのと萌えました。

 新人作家ジョルディ・ヨブレギャットによるスペイン発のてんこ盛りサスペンス、『ヴェサリウスの秘密』(宮崎真紀訳/集英社文庫)も忘れてはいけません。時は1888年、初の万国博覧会を目前に、猟奇的な連続殺人事件に怯えるバルセロナ。オックスフォード大学教授のダニエル、したたかな新聞記者フレーシャ、医学生パウの3人が、16世紀の幻の書物を巡る危険な大冒険に挑みます。

 ちょっとお坊ちゃん風のダニエルと、一見ずる賢いようで実は正義感が強いフレーシャのバディものとして読みなおしてみると、さらに面白さ倍増間違いなし。クライマックスの活劇シーンで拍手喝采!

 そして今年度、帯と裏のあらすじからもっとも内容が予測できなかった大賞を差し上げたい作品、マイケル・ロボサム『生か、死か』(越前敏弥訳/ハヤカワポケットミステリ)、これがまたサイコーなんですよ!!! 冒頭であっさり(?)脱獄しちゃうので、『アルカトラズからの脱出』みたいな脱獄ものを期待していたら?となりますが、その後の展開が本当にすごい!! これはもう読んでいただくに限るのでこれ以上は書きませんが、腐的には、主人公オーディとムショ仲間モスの熱い友情に萌えまくり! 特にこのモスという黒人服役囚のキャラが秀逸。主人公を食っちゃうぐらいの活躍を見せるので、できればぜひ前日譚など読みたいところです。栄光のゴールドダガー受賞作、そして正しいキング絶賛案件でもあるこの作品、途中でやめられない面白さなので、お正月休みに一気読みなどいかがでしょう。

 新作映画の方では、なんといっても『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(監督アンソニー&ジョー・ルッソ)でしょう! 前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』では、キャップことキャプテン・アメリカとファルコン、キャップとウィンター・ソルジャーという豪華カップル(多分違う)で楽しませていただきましたが、今回はウィンター・ソルジャーのせいでキャップとアイアンマンが仲違いし、世界危機につながる未曾有の事態になってしまうというセカイ規模の大げんか映画になっていて、大変萌えまくりました。<いろいろと誤解 そんな中でもアイアンマンとスパイダーマン、キャップとアントマンの出会いのシーンは最高です!!

 さらに、現役の有名監督たちが敬愛するヒッチコック監督のことを熱く語るシーンがとても微笑ましいドキュメンタリー、『ヒッチコック/トリュフォー』(監督ケント・ジョーンズ 現在公開中)や、

 テロリストとロンドンで戦うシークレット・サービスと大統領の仲良しセカイ系アクション第二弾『エンド・オブ・キングダム』(監督ババク・ナジャフィ)、

 エンジン故障でNYのハドソン川に不時着した旅客機。乗客乗員全員が生還した事実を感動だけに終わらせず、長年の経験とプロフェッショナルな判断で、いかに機長が悲劇を防いだかをスリリングに描いたお仕事映画の傑作『ハドソン川の奇跡』(監督クリント・イーストウッド)。アーロン・エッカート演じる副機長の、機長に対する信頼と尊敬と友情がストレートすぎるんですが!

 他にも、クルーのチームワークが見どころで、新シリーズ中最もオリジナル『宇宙大作戦』にテイストが近いと思われた『スター・トレック ビヨンド』(監督ジャスティン・リン)や、美老人二人が生き残りのナチスを探して無謀な行動に走るサスペンス『手紙は憶えている』(監督アトム・エゴイヤン)など、取り上げられなかったのが残念です。

 そして番外編として、現在公開中のスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』(監督ハンネス・ホルム)とフレデリック・バックマンの同名原作(訳・坂本あおい/ハヤカワ文庫)は、小説の映画化としては本年度ベストのコラボであると断言します! 特に素晴らしいのは、59歳の主人公には、今の年齢になるまで歩んできた人生があるときちんと描いているところです。老人だからという型にはめることなく、彼の大切な日々が年をとった今にどうつながっているか、ときには寄り添い、ときには叱り、老人としてではなく、ひとりの人間として尊敬をこめてとても丁寧に描かれていて、小さな宝物のような作品です。連続殺人犯もサイコパスも出てこない北欧作品ですが、予想をはるかに超えた驚きのエピソードが満載です! 本と映画、ぜひ両方で!!

♪akira

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  BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛と哀しみのスットコ映画」を超不定期に連載中。

2016年1月〜11月に本連載で読んで腐って萌えつきた作品一覧

【偏愛レビュー】読んで、腐って、萌えつきて【毎月更新】バックナンバー