みなさま、こんにちは。
2月17日(金)に開催いたしました、第18回大阪読書会のレポートをお届けします。課題書は、昨年新訳も出版された、ギャビン・ライアルの『深夜プラス1』。この翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトでも、これまで何度もとりあげられている冒険小説の傑作です。
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お話は、フランスはブルターニュの小さな港からスイスをまたいで小国リヒテンシュタインまで、大物実業家を車で連れていくよう依頼されたルイス・ケインは、命を狙うガンマンやフランス警察の目をかいくぐり、はたしてタイムリミットまでに到着できるのか、というもの。
この日の参加者は世話人を入れて25名(男性9名、女性16名)、うち9名が当読書会初参加の方々で、遠くは東京からもお越しいただきました。リピーターのみなさまも大勢来てくださいましたが、わりと初対面同士の集まりっぽく、なんとなくドキドキした感じのスタートとなりました。
参加者Iさんが用意してくださった特大の地図がホワイトボードに貼られ、登場人物たちの通ったルートがそこに記されて、ぐんと気分も高まったところで、まずは配布資料の紹介から。今回はちょっと豪華です。
・『深夜プラス1』読書会オリジナルイラスト(イラストレーターとして活躍中の参加者Yさんがフライヤー用に描いてくださったもの。ラフ画のおまけつき)
・冊子『深夜プラス1』妄想ルポ(世話人Kさん作成。カラー8ページの力作です)
以上がオリジナル資料。このほか、この日の読書会のために外部よりご提供いただいた以下の資料も配布されました。
・第17回名古屋翻訳ミステリー読書会レジュメ&『深夜プラス1』ロードマップ
(課題書『深夜プラス1』のときのものをご提供いただきました)
・新訳・旧訳対照表(翻訳家Kさん作成・ご提供の資料に、世話人Iさんが原文を追加)
いずれも作品理解とディスカッションに役立つ充実した内容。資料作成・ご提供くださったみなさま、ありがとうございました。
さて次は、参加者全員の自己紹介文を載せた名簿を見ながら、ひとりずつ作品の感想を述べていきます。感想の一部をご紹介しますと、
・再読に耐える作品だと思う。
・会話がおしゃれ。
・エンターテインメント作品として今読んでも楽しい。
・30年前に読んでピンとこなかったところが、今読んでわかった。
・銃とか車とかいっぱいでてきてうれしくなる。
・バディかっこいい。
・女子キャラもかっこいい。
・タイトルかっこいい。
さすが名作と言われるだけのことはあり、絶賛コメントがたくさん出てきます。が、
・意外と地味だった。
・サスペンスがたりない。
・友情っていうほど友情ってなくない?
・そもそも設定に無理があるような。
と、厳しめのコメントも。でも、ネガティブな感想であっても、率直なご意見やちょっとした疑問を持ってきていただくことで、議論が展開していくのが読書会の良さでもあります。
ところで、今回の課題書は、菊池光さんによる旧訳と、鈴木恵さんによる新訳がありますが、どちらの訳で読んできたかは新旧同数くらい、参加者の約1/3が両方の訳を読んでいました。そこで、ふたつの訳を読みくらべてみたかたのご意見を聞いてみると、おおむねこんな感じ。
旧訳:雰囲気に浸りやすい(当時の常識が多く説明が少ない)/温度高い/かっこいい
新訳:理解しやすい(今の読者向けに説明が多い)/クール/かっこいい
フリートークの時間になると、さらに自由な意見が飛び交います。ケインの仕事って結局何なのか(“グレーなお仕事”のようです)やタイトルの意味について、ケインとラヴェルの人物象について(時代との関係も含めて)、影響の見られる作品について(『深夜ふたたび』、『殺しの烙印』、『ルパン三世』etc.)、ジネットとミス・ジャーマンはどちらがヒロインぽいか、など話題は尽きず、止まらなくなったところで時間切れとなりました。途中、常連参加者Gさんによる新解釈「深夜プラス2」の発表もあったりして、今回も多方向へ展開した楽しい読書会となりました。参加者のみなさま、資料のご提供や告知にご協力いただいたみなさまに、あらためてお礼申し上げます。
さて、今回の読書会ですが、近隣で開催されている京都・大阪市民読書会さまにも告知にご協力いただいたほか、梅田 蔦屋書店のブック・コンシェルジュさまにも一般参加でお越しいただき、地域の読書コミュニティーとの交流が深まった一日でもありました。そして、ここからはちょっとお知らせです。翻訳ミステリー大賞・読者賞授賞式が東京で開かれる4月22日(土)に、大阪・梅田 蔦屋書店さんで開催される関連イベントに、関西翻訳ミステリー読書会として、大阪・神戸・京都読書会有志が参加します。読書会のご縁で実現したコラボイベントです。関西・周辺地区のみなさま、ぜひお見逃しなく!
最後になりましたが、7年目を迎えた大阪読書会を今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
吉井智津(よしい ちづ) |
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翻訳者。大阪読書会世話人のひとりです。 訳書にべリンダ・バウアー『生と死にまつわるいくつかの現実』(小学館文庫)、ジョーナ・バーガー『インビジブル・インフルエンス 決断させる力』(東洋館出版社)など。 |