
田口俊樹
(たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬と麻雀)


白石朗
(しらいしろう:スティーヴン・キング『アウトサイダー』(文藝春秋)が先月末に発売されました。忌むべ少年凌辱殺害事件の容疑者として逮捕されたのは品行方正をもってなる少年野球コーチ。圧倒的な物的証拠と目撃証言にもかかわらず無罪を主張する容疑者には、一方では証拠に裏打ちされた鉄壁のアリバイがあった……。キング流儀のミステリーをお楽しみください。ツイッターアカウントは @R_SRIS)

東野さやか
忙しくても本は読む、ということで最近読んで強く印象に残ったのが、琉球大学教授の上間陽子さんの『海をあげる』(筑摩書房)。静かな文体でつづられたエッセイ集ですが、理不尽に対する怒りと絶望がひしひしと伝わってきました。
(ひがしのさやか:最近のおもな訳書はクレイヴン『ストーンサークルの殺人』、フェスパーマン『隠れ家の女』。その他、ジョン・ハート、ウィリアム・ランデイ、ニック・ピゾラット、ローラ・チャイルズなどを翻訳。ツイッターアカウント@andrea2121)

加賀山卓朗
(かがやまたくろう:ジョン・ル・カレ、デニス・ルヘイン、ロバート・B・パーカー、ディケンズなどを翻訳。最近の訳書はスウェーデン発の異色作で意欲作、ピエテル・モリーン&ピエテル・ニィストレーム『死ぬまでにしたい3つのこと』)

上條ひろみ
ミシェル・バークビイ『ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1』(駒月雅子訳/KADOKAWA)は、ベイカー街二二一Bの家主ミセス・ハドスンと、ジョン・ワトスンの妻メアリー・ワトスンが探偵コンビを組んで、ホームスとワトスンのコンビ顔負けの活躍をするシリーズの一作目。コナン・ドイル財団公認のホームズ・パスティーシュですが、女子ミスとしても読み応えあり。二作目も出ているので読まなければ。それにしても、ミセス・ハドスンがまだ四十八歳だったなんてびっくり!
J・D・バーカー『猿の罰』(富永和子訳/ハーパーBOOKS)は『悪の猿』『嗤う猿』につづく〈四猿〉シリーズ完結編で、衝撃の真相はもちろん、見事なまでに風呂敷がたたまれていく様子にのけぞり、しばしボーゼン。これをカタルシスと言わずしてなんとする。某ウィルスとの戦いなど、妙にタイムリーなパートもあり。できれば三作つづけて読むのがおすすめ。長いけど一気に読めます。
書評七福神につづき、先月このコーナーで加賀山さんも激推しだったアダム・オファロン・プライスの『ホテル・ネヴァーシンク』(青木純子訳/ハヤカワ・ミステリ)は、呪われたホテルの年代記。わたしも好きです。テイストはちがうけど、大好きなアーヴィングの『ホテル・ニューハンプシャー』を思い出した。
第十二回翻訳ミステリー大賞最終候補作のカバーは、みんな赤色がポイントになっていると気づいた(『指差す標識の事例』は上巻のみ)。偶然か、はたまた……本投票は4月18日まで!
(かみじょうひろみ:英米文学翻訳者。おもな訳書はジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ〉シリーズ、ジュリア・バックレイ『そのお鍋、押収します』、カレン・マキナニー『ママ、探偵はじめます』など。最新訳書はハンナシリーズ第21巻『ラズベリー・デニッシュはざわめく』)

高山真由美
ソファに寝そべって短篇雑誌を読む時間も近ごろめっきり減ってしまったのですが、『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』で出会ったシャンクスのことは頭を離れず、ロプレスティさんの短篇だけは毎度きっちりチェックしています。『日曜の~』刊行よりあとにAHMMに掲載されたシャンクス・シリーズの短篇は“Shanks Saves the World”と“Shanks’s Locked Room”の2篇。世界を救う?(いえそんなスケールの大きな話ではありません) えっ、密室?(日本の読者が期待するいわゆる「密室」とはちょっとちがうような)と、若干タイトル誇大広告気味ながらシャンクス節全開のこの2篇、いつかご紹介できるといいなあ。
ところでみなさま、第12回翻訳ミステリー大賞の本投票はお済みでしょうか? 投票受付終了は4月18日。候補作のなかに未読があってもまだ間に合います(たぶん)。投票有資格者のみなさま、よろしくお願いいたします。
(たかやままゆみ:最近の訳書はサマーズ『ローンガール・ハードボイルド』、ブラウン『シカゴ・ブルース(新訳版)』、ベンツ『おれの眼を撃った男は死んだ』など。おうち筋トレ、サボり気味です。ツイッターアカウントは@mayu_tak)

武藤陽生
先日、ラジコンが欲しい欲しいと言っていましたが、いつの間にか2台も買っていました。モーターを交換したり、サスペンションの固さを変えてみたり、なかなか奥が深いです。まあ、それで走りがどう変わるかというところまではよくわからないのですが……
以前は子供が公園に行きたいと言い出しても、自分はあまり気乗りしないままついていくような感じでしたが、ラジコンを買ってからはむしろ自分のほうが公園行きたい! と鼻息荒くしています。子供が公園でラジコンしていると別の子供が「かっこいい!」とか言って近づいてきて、それで仲よくなって一緒に遊ぶこともあるようです。おじさんがひとりでラジコンしていても、話しかけてくるのは警官だけですが……
(むとうようせい:エイドリアン・マッキンティの刑事ショーン・ダフィ・シリーズを手がける。出版、ゲーム翻訳者)

鈴木 恵
その点で面白かったのは、参考資料として読んだクリスティの『邪悪の家』。クリスティが読者をだますために仕掛けたトリックは、『アクロイド殺し』や『オリエント急行』のような派手な大技でこそないものの、やはり一口で言い表せるような明快な構造を持っていて、切れあじ鋭い小技として愛でたくなります。たぶんその明快さが、わたしみたいなにわか評論家にも取っつきやすいんでしょう。ネタバレを気にせずに誰かと話したい!
(すずきめぐみ:働きものの翻訳者・馬券散財家。映画好き。最近のおもな訳書は『ザ・チェーン』『拳銃使いの娘』『その雪と血を』など。ツイッターアカウントは @FukigenM)