田口俊樹
まず主人公の世間への恨みつらみがとても痛快でした。これは皮肉の利いた知的なユーモアの賜物でしょう。
さらになにより本書のキモ、主人公、釈華の願いに共感しました。堕胎したいがために妊娠したい。これが釈華の願いです。理屈とか頭とか心とか良識とか常識とか、もしかしら倫理とかで考えると、あまり共感できる願いではありません。なのに読みおえたら深く共感していました。
おまけに共感している自分がなんだか嬉しい。
作品に共感できて、なんだか自分が嬉しくなるこの読後感。ジュンブンをよく読んでるわけではないけど、最近の芥川賞では『コンビニ人間』以来です。
ひょっとしたら、本作は読者を選ぶ作品かもしれませんが、ワタシ的には超お薦めです。ワタシなりに理解できた範囲でという但し書きがつくけれど。
〔たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬と麻雀〕
白石朗
今日は狛江エコルマホールで4年ぶりの演奏でした。来てくださった方々、どうもありがとうございました。楽しかったな〜。世界初演の #潮騒のメモリー は、まだ荒削りでしたが、これからもっと良くなると思います。“10年遅れのマーメイド”だよん。
— 矢野顕子 Akiko Yano (@Yano_Akiko) August 27, 2023
おお、年末の〈さとがえるコンサート〉のレパートリーにも入るんでしょうか。いやでも期待してしまいます。ぜひぜひ。あとは「仕事を終えたぼくたちは」をもう一度。
〔しらいしろう:老眼翻訳者。最近の訳書はスティーヴン・キング&オーウェン・キング『眠れる美女たち』。〈ホッジズ三部作〉最終巻『任務の終わり』の文春文庫版につづいて不可能犯罪ものの長篇『アウトサイダー』も刊行。ツイッターアカウントは @R_SRIS〕
東野さやか
前のポットを買ったのは十二年前の三月。なんでそこまではっきり覚えているかと言えば、福島第一原子力発電所の事故で節電が呼びかけられたのをきっかけに、電気ポットをやめて保温ポットを使うことにしたから。当時は単純に電気の使用量を減らすことが大事だったからそれでよかったけど、実際のところ、ガスで沸かして保温ポットに入れるのと、電気ポットで沸かしてそのまま保温するのとではどちらが環境への負荷が少ないんでしょうか。気になります。
ところで、今度は携帯電話が壊れました。調子が悪いのをだましだまし使っていたら、突然、うんともすんとも言わなくなりました。お祓いでもしたほうがいいんじゃないかという気分です。
〔ひがしのさやか:最新訳書はブレンダン・スロウカム『バイオリン狂騒曲』(集英社文庫)。その他、クレイヴン『キュレーターの殺人』、チャイルズ『ハイビスカス・ティーと幽霊屋敷』など。ツイッターアカウント@andrea2121〕
加賀山卓朗
じつは、ル・カレとディケンズが似ているというのは個人的に気になっているテーマでして、文体レベルでも自由間接話法や歴史的現在の使い方など、掘り下げるときっとおもしろいと思う。牽強付会? かもしれませんが、ル・カレ自身、晩年のインタビューで読書はもっぱらディケンズと言っていたので、それほど強引なこじつけでもないかと。ビデオ会議では、『寒い国』の検問所の霧が『荒涼館』冒頭のあの有名な霧を思わせるといった興味深いご指摘もありました。文体や、そういう個々のイメージだけでなく、小説の構想という点でも、『パーフェクト・スパイ』はル・カレ版『デイヴィッド・コパフィールド』だと思うんですよ(自伝的であることに加え、回想パートで現在形を多用するスタイルも)。おふたりの卒論がどんな内容になるのか、いまからとても楽しみです。
〔かがやまたくろう:ジョン・ル・カレ、デニス・ルヘイン、ロバート・B・パーカー、ディケンズなどを翻訳〕
上條ひろみ
〔かみじょうひろみ:英米文学翻訳者。おもな訳書はジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ〉シリーズ、ジュリア・バックレイ『そのお鍋、押収します』、カレン・マキナニー『ママ、探偵はじめます』、エリー・グリフィス『見知らぬ人』など。最新訳書はフルーク『ココナッツ・レイヤーケーキはまどろむ』〕
武藤陽生
最近血尿が出ました。40歳後半になってから体にいろいろ問題が生じているようです。検査の結果、とくに大きな病気は見つからなかったのですが、毎晩ビールを飲んでいるのがよくないと思い、すっぱりとノンアルビールにしてみました。これがなかなかどうして満足度が高く、朝からノンアルビールをキメて多少の背徳感を味わいつつ仕事をするのもよいものです。
〔むとうようせい:エイドリアン・マッキンティの刑事ショーン・ダフィ・シリーズを手がける。出版、ゲーム翻訳者。最近また格闘ゲームを遊んでいます。ストリートファイター5のランクは上位1%(2%からさらに上達しました。まあ、大したことないんですが…)で、最も格ゲーがうまい翻訳者を自負しております〕
鈴木 恵