田口俊樹
主にテレビ・シリーズを見てるんですが、これは日本のテレビドラマがほんと、つまんなくなったせいですね。その昔、アメリカのテレビ文化にヨーロッパは内容で追いつき、日本は生産台数で追いついた、なんて言った人がいたけど、ドラマについてはつくづくそう思います。ちょっとまえまでは愉しめるドラマもあったんだけど。お金の問題とかもあるんでしょうけど、あまりにひどすぎませんかねえ。
はいはい、わかってます、テレビ大好き第一世代老人の繰り言です。それでもねえ、それこそ救世主が現われませんかね?
〔たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬と麻雀〕
白石朗
坂本龍一監修のCD+書籍形式による音楽全集〈音楽の学校=コモンズ・スコラ〉。17巻までで休止中だったのが、アルテス・パブリッシングから書籍+プレイリスト形式で再始動。さっそく買い求めた18巻は『ピアノへの旅』で、収録されている坂本教授と上尾信也氏&伊東信宏氏の鼎談をぽつぽつ読み進めていたところ、p.52からの教授の発言に「はっ」とさせられました。
教授がニューヨークの中学生にピアノの音を聞かせた反応からはじまる話、要約がむずかしいので現物に目を通してもらうのがいいいのですが(←横着)、個人的な関心事にからめて乱暴にまとめると「音を聞く、音を言葉にするとは、つきつめるとどういうことか」ですね。觀音聽時。そんなことを考えるうちに睡魔に引きこまれる夏の日でした。
そうそう、この本はカバーと帯両方の表1と背が活版印刷で独特の味わいがあります。
〔しらいしろう:老眼翻訳者。最近の訳書はスティーヴン・キング&オーウェン・キング『眠れる美女たち』。〈ホッジズ三部作〉最終巻『任務の終わり』の文春文庫版につづいて不可能犯罪ものの長篇『アウトサイダー』も刊行。ツイッターアカウントは @R_SRIS〕
東野さやか
さて、先月唯一のイベントは新型コロナウイルスのワクチンを接種したこと。かかりつけというほどではないけれど、たまに診てもらっている呼吸器内科の先生に打ってもらうつもりでいたのですが、それだと少し先になりそうで、けっきょく集団接種を選びました。問診の先生に飲んでいる薬の種類や吸入薬を使っていることなどを説明したところ、先生はなんのメモを取ることもなく、持参したお薬手帳を見ることもなく、「まあ、こんな大雨のなか(台風六号が通過中でした)、せっかく来たんだから打っていきなさいよ」で終了。どうやら、ワクチンを打つのをためらっていると勘違いされたもよう。万が一なにかあったときに、少しでも情報があったほうがいいかなと思っただけなんですけど。
注射そのものは、見ていなければ、打たれたのもわからないくらいでした。生活に支障が出るほどの副反応もありませんでしたが、二回めはどうでしょう? 接種当日を含め三日間はなにもしなくていいよう、万全の準備をしてのぞむ所存です。解熱鎮痛剤と冷却ジェルシートとスポーツドリンクとアイスと、あとなにがあればいいですかね?
〔ひがしのさやか:最新訳書はジョン・ハート『帰らざる故郷』(ハヤカワ・ミステリ)。その他、チャイルズ『ラベンダー・ティーには不利な証拠』、クレイヴン『ストーンサークルの殺人』、アダムス『パーキングエリア』、フェスパーマン『隠れ家の女』など。ツイッターアカウント@andrea2121〕
加賀山卓朗
とか言いながら、充分愉しんでるんですけどね。つっこみどころがたくさんあるのもヒットの秘訣なのでしょう。主人公の男女が並木道で自転車のふたり乗りをするのは『冬のソナタ』へのオマージュかな? 軍人のひとりはチェ・ジウのファンみたいだし。あいかわらずのネトフリネタでした。
〔かがやまたくろう:ジョン・ル・カレ、デニス・ルヘイン、ロバート・B・パーカー、ディケンズなどを翻訳。最近の訳書はスウェーデン発の異色作で意欲作、ピエテル・モリーン&ピエテル・ニィストレーム『死ぬまでにしたい3つのこと』〕
上條ひろみ
七月のプチ読書日記。
出口のない日々を淡々と描くレイチェル・クシュナー『終身刑の女』(池田真紀子訳/小学館文庫)は、読み応えのある女子刑務所小説。社会の底辺にいるためにまともに裁判もしてもらえず、生まれや育ちで道を定められてしまうアメリカの現実に愕然とした。これで終身刑なんてありえない……
ベルナール・ミニエの『夜』(伊藤直子訳/ハーパーBOOKS)はシリーズ四作目。ノルウェーからはじまり、本拠地トゥールーズからサン=マルタン・ド・コマンジュ、そして最後はオーストリアへ。今回もセルヴァズ警部がこれでもかとハラハラさせてくれます。宿敵ハルトマンとの対決は必読。いつもそうだけどまさかの展開の連続で、徹夜本認定。
デイヴィッド・ゴードン『続・用心棒』(青木千鶴訳/ハヤカワ・ミステリ)は魅力的なキャラクターたちにまた会えてうれしかった。〝暗黒街の保安官〟ジョーのかっこよさはもちろん、枝葉の部分のおもしろさ、ユーモアのさじかげん、スカッとさわやかな読後感がやみつき。
M・C・ビートン『アガサ・レーズンと完璧すぎる主婦』(羽田詩津子訳/コージーブックス)はシリーズ16作目。前作からはじめた探偵事務所はなかなか好調のようだけど、相変わらず恋愛下手なアガサ。テンポよく進んでいくストーリーに身をまかせる至福のひとときは、何物にも代えがたい。
〔かみじょうひろみ:英米文学翻訳者。おもな訳書はジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ〉シリーズ、ジュリア・バックレイ『そのお鍋、押収します』、カレン・マキナニー『ママ、探偵はじめます』など。最新訳書はエリー・グリフィス『見知らぬ人』〕
高山真由美
そういえばチョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』も大好きなのでした。チョンさんと相性がいいのかも。次はチョン・ヘヨン『誘拐の日』を読もうかな。
〔たかやままゆみ:最近の訳書はヒル『怪奇疾走』(共訳)、サマーズ『ローンガール・ハードボイルド』、ブラウン『シカゴ・ブルース(新訳版)』、ベンツ『おれの眼を撃った男は死んだ』など。ツイッターアカウントは@mayu_tak〕
武藤陽生
ショーン・ダフィ・シリーズ第五作『レイン・ドッグズ』の翻訳がようやく終わりました。今後ゲラ読みなどがあり、まだまだ完成とはいえませんが、年内発売予定です。「今までこのシリーズを読んでいてよかった!」と思えるような内容になっておりますので、どうぞご期待ください。
〔むとうようせい:エイドリアン・マッキンティの刑事ショーン・ダフィ・シリーズを手がける。出版、ゲーム翻訳者。最近また格闘ゲームを遊んでいます。ストリートファイター5のランクは上位1%(2%からさらに上達しました。まあ、大したことないんですが…)で、最も格ゲーがうまい翻訳者を自負しております〕
鈴木 恵
『三体Ⅲ 死神永生』を読んだ。物理法則と数学って、ほんとに宇宙の基本なんだな、としみじみ思う。言語や思考は異星人と共有できなくとも、物理法則は共通なんだから。高校時代いちばん好きだったのが古文漢文だったわたくし、なんか自分がとても残念。この小説で活躍するのはすごい科学者ばかり。古文漢文が好きだったやつなんか、ひとりも出てこない。考えてみれば古文漢文て、ユニバーサルな物理や数学とは正反対の、じつにローカルなものなんだよね。でもわたし、光速宇宙船で太陽系を脱出するときには、『平家物語』と『今昔物語』と『近松世話物集』を持っていきたい。