今月もこんにちは! ヨーグルトを買ってきたら、賞味期限がもう来年になっていたので焦りまくっている今日この頃です。

*今月の未解決事件本(1)*
ジェス・ロウリー『怪物の森 未解決事件捜査官ヴァン・リード』(北綾子訳/新潮社文庫)

 ある夏の日、3人の少女が森に入り、2人が行方不明に。1人で戻ってきた少女はその時の記憶を失っていました。それから42年後、生き埋めにされたばかりの女性の遺体が発見され、調べたところ、失踪した少女の1人だと判明します。ミネソタ州犯罪捜査局未解決事件捜査課のヴァンは、同僚の科学捜査官ハリーと共に、地元警察の殺人課と合同捜査をすることになります。42年前の謎の失踪事件と現在の残忍な殺人事件の謎解き要素も読ませるのですが、本書は特に主人公ヴァンのキャラクターが秀逸なのです。カルト集団で幼少期を過ごしたトラウマを抱え、成長して警察官となってからは不思議な能力を発揮して事件を解決、しかしそのことが自分を苦しい立場に追い込んでしまった……等々にくわえて、ある大きな秘密も抱えています。それがどうなるか大変気になるので、ぜひ続編が読みたいところ。ちなみにハリーは、ヴァンによると“『X-MEN』シリーズのマイケル・ファスベンダーに似ている”とのことなので、よろしければファスのファンの人もぜひ手に取ってみてください。

*今月の未解決事件本(2)*
マイクル・コナリー『迷宮(上・下)』(古沢嘉通訳/講談社文庫)

 Amazonプライムのドラマも好調な、レネイ・バラード&ハリー・ボッシュ・シリーズの最新刊。ロス市警未解決事件班の刑事レネイが出勤前にサーフィンを楽しんでいたら、車上荒らしにあい、バッジと銃を盗まれてしまいます。この重大なミスがばれたらキャリアが絶たれてしまうレネイは、ボッシュに相談して力を借りることにするのですが、その窃盗犯と思われる人物が指名手配中で、しかも大規模テロを企てようとしていることが判明します。物語が始まるやいなや大ピンチ、そこから予想外の大事件が浮かびあがり、ボッシュの体調も心配なうえに、なおかつ自分のチームが扱ういくつかの事件にも目を配らなければならないレネイの大変さがいつにもまして身にしみる本書、なんと今回はボッシュの娘マディがチームに加わることに。しかも彼女のおかげで、米国最大の未解決事件のひとつ、あの〈ブラック・ダリア事件〉の真相に近づくという、読みどころてんこ盛りな作品です。そして結末ではとんでもないことが! がんばれレネイ!

*今月の家政婦本*
フリーダ・マクファデン『ハウスメイド2 死を招く秘密』(高橋知子訳/ハヤカワ文庫)

 ほんとにもう出た! とびっくりした人も多いのでは。今年の年末ベストを賑わせた『ハウスメイド』の続編がこんなに早く読めるなんて嬉しすぎる! さて今回は、豪華ペントハウスに住む富裕層の夫婦に雇われたミリー。高給なお仕事につくためには〈病気の妻がやすんでいるゲストルームにはけっして入らないこと〉が条件。ところがある日、血まみれのガウンを見つけてしまったミリーはいてもたってもいられなくなり……。前作既読のひとなら「またか!」、未読のひとなら「逃げてミリー!」となるかもしれません。実は自分も途中までは「はいはい、まあそういうことだよねー」なんて高をくくっていたのですが(すみません)、後半で大化け! というか、マジすか!! の嵐! あの謎の設定はこの伏線だったのか! いやあ参りました。次の完結編は一体どうなっちゃうんだろうと期待値爆上がり。そうそう、読了後にはぜひプロローグを読み直すことをオススメします!

*今月のイチオシ本*
マウリツィオ・デ・ジョバンニ『対立 P分署捜査班』(直良和美訳/創元推理文庫)

 素朴な人柄で知られたパン屋の店主が殺されます。通報を受けたロヤコーノ警部らが現場に向かうと、検察庁マフィア対策班に捜査の中止を迫られる事態に。被害者はマフィア組織の壊滅につながる事件の重要な証人だったのですが、家族のことを考え、証言を撤回していました。マフィア絡みの殺人として事件を引き取ろうとする検察庁と、現場の状況を見てその可能性を否定するロヤコーノは対立。結果、双方が各自の捜査方針で真相を突き止めることで決着がつきますが、もしロヤコーノの推理が間違っていたらピッツォファルコーネ署存続の危機。〈21世紀の87分署〉と謳われるシリーズの5作目は、パン屋の主人殺人事件とストーカー事件が並行して捜査されるのですが、チームの面々のプライヴェートの悩みや葛藤、喜びなど感情の機微などにも重きを置かれていて、自分としては、本書がいままでで最も87分署テイストを感じました。日本でもドラマの放映が始まり、残念ながら自分は未見なのですが、写真で見る限り、アラゴーナがイケメンすぎるような(笑)。
 
*今月の新作映画*
『ランニング・マン』(2026年1月30日(金)より全国公開)


 舞台はちょっとだけ近未来のアメリカ。富裕層と極貧層で分断され、貧しい人々の楽しみは国を牛耳る巨大企業“ネットワーク”が放映する過激なデスゲーム番組を観ること。実直な性格が災いして失職し、病気の娘の治療費を払うこともできないベン・リチャーズ(グレン・パウエル)は、巨額の賞金目当てで番組に応募します。数々のテストをくぐりぬけたリチャーズは、最も成功率が低く、最も賞金の高い『ランニング・マン』に出演が決定。殺人ハンターたちの追跡と全世界の視聴者たちの監視から逃れて、30日間生き延びれば莫大な賞金が手に入ります。しかし見つかればその場でおだぶつ、今までに勝者ゼロだったこのデスゲームで、はたしてリチャーズは最後まで逃げ切ることができるのでしょうか。


 ご存じのとおり、原作はスティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で出した同名小説。かつて日本では映画と同じ『バトルランナー』の邦題で出ていましたが、今回のリメイクにあわせた『ランニング・マン』のタイトルで、酒井昭伸氏による全面改訳版が扶桑社から刊行されました。改訳版を読み直してから本作を鑑賞したところ、とにかく『バトルランナー』とは全然違って、かなり原作に忠実にできていると思いました(なんたってシュワちゃんのリチャーズは全然負ける気がしなかったし!)。原作の舞台は2025年でしたが、そもそもキング先生が書いたのは1982年。その当時に今のようなデジタルガジェットは予想できなかったにしても、多くのことがまるで予言のように描かれていることにいまさらながら驚きました。今回の映画はというと、原作に忠実ながらも現代版としてアップデートされており、エドガー・ライト監督ならではのユーモア感覚も見え隠れするアクション作品になっています。ネタばらしを避けるために原作との違う点は伏せておきますので、アレがどうなるのかはぜひ劇場でお確かめください。

 


タイトル:『ランニング・マン』
公開表記:2026年1月30日(金)より全国公開
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◆コピーライト:©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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◆配給:東和ピクチャーズ
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■監督:エドガー・ライト 『ベイビー・ドライバー』 
■原作:スティーヴン・キング 『IT/イット “それ”が見えたら終わり。』
■出演:グレン・パウエル 『トップガン マーヴェリック』
  ジョシュ・ブローリン 『デッドプール2』
  コールマン・ドミンゴ 『シンシン/SING SING』、ほか
全米公開:2025年11月14日 ■原題:THE RUNNING MAN
配給:東和ピクチャーズ
コピーライト:©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 
公式サイトURL:https://the-runningman-movie.jp/

▼SNS各種
公式X(Twitter)https://x.com/RunningMan_jp/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@paramountjapan/
公式Instagram:https://www.instagram.com/paramount_japan/
公式Facebook:https://www.facebook.com/ParamountPicturesJP/

 
◆映画『ランニング・マン』本予告|2026年1月30日(金)公開 ◆

♪akira
 翻訳ミステリー・映画ライター。月刊誌「本の雑誌」の連載コラム〈本、ときどき映画〉を担当。2025年8月には、リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』(羽田詩津子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)と、ピーター・トレメイン『修道女フィデルマの慧眼』(田村美佐子訳/創元推理文庫)の解説を担当しました。
 Twitterアカウントは @suttokobucho








 

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