全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは!
 今回ご紹介する作品は、名だたるミステリ賞3つで新人賞を獲得するのも納得の面白さ! いや賞とったとか関係なく、とにかくこれ好き!大好き!読んだ方がいいっすよマジで! と猛烈な勢いで人に薦めずにはいられない、ラップよりコルトレーンが好きな青年探偵が主人公のジョー・イデ『IQ』(熊谷千寿訳/ハヤカワ文庫)でございます!


 舞台はLAのサウス・セントラル。ギャングの抗争が日常茶飯事というヤバい地区で、LAPDすら手を出せない(または手を出さない)犯罪を鮮やかに解決するひとりのアフリカ系アメリカ人の青年がいます。彼の名はアイゼイア・クィンターベイ――通称IQ。身長は180センチちょっとで痩せぎす。いつも半袖シャツにジーンズにティンバーランドの靴という地味な服装で、光りモノは一切着用なし。チャームポイントは長いまつ毛です。
 アイゼイアは高校時代に悲劇的な事故で天涯孤独となりました。里親の元に送られないようにあの手この手で窮地を脱しますが、その時に(仕方なく)知り合ったのが、その後彼の相棒となるドッドソンです。高校を中退したアイゼイアは、生活費以外にどうしてもお金を稼がねばならないある理由のため、家賃収入の他に、地元の人々限定を対象に探偵業を始めます。依頼は口コミから、報酬は依頼人の生活レベル、気乗りがしない仕事は引き受けない……はい、もうおわかりですね! 寡黙で内向的、するどい観察眼と天才的な推理力を持ったアイゼイアは、現代LAのシャーロック・ホームズなのでした! IQのことを Sherlock In The Hood と自ら呼んでいる日系アメリカ人の著者イデさんは正典の大ファンだそうで、ちょっとスティーヴ・ホッケンスミス『荒野のホームズ』のお兄さんを思い出しませんか?
 物語は、少女が誘拐される場面に偶然出くわしたアイゼイアが犯人を追うスピード感あふれるカーチェイスから始まります。犯人は子どもを狙うヘンタイ性犯罪者。全力で犯罪を阻止すべく、アイゼイアが古ぼけた愛車のトランクを開けると、そこにはたくさんの収納箱が整然と積まれ、きちんとラベルが貼られています。「工具」、「梯子」、「溶接」はともかく、「拘束器具」、「武器」って! デンゼル・ワシントンの『イコライザー』か!? もうこれだけでワクワクしますね!!
 とはいえいつものお仕事の大部分はどちらかというと何でも屋的なものばかり。報酬がパイだったり勤労奉仕だったりで、かつてレシピと一緒にもらった鶏は、今ではアイゼイアの大事なペットです。そんなある日、ドッドソンが大口の仕事を見つけてきます。大物ラッパーから依頼されたのは、巨大な殺人犬を操って自分を殺そうとした奴を捕まえろというもの。バスカヴィルの魔犬が現代LAに蘇ったのか? 役に立つような立たないような相棒と二人で、アイゼイアはその不気味な謎を解き明かせるのでしょうか。
 
 アイゼイアとドッドソンの関係は、まさに腐れ縁。正典ではマイペースすぎるホームズに生真面目なワトソンが振り回されるイメージですが、本書ではその正反対。ことあるごとに、こんなヤツと知り合うんじゃなかったよマジで! と苦々しい思いをさせられるアイゼイアに、つかコイツ真面目すぎるってか何考えてんだよ一体YO! と微妙に尊敬しつつも認めたくないドッドソンという凸凹コンビが大変微笑ましいです。<でも本気で腹立たしい時もある(笑)
 そんなクラスの秀才君と不良少年上がり(?)のバディ、お兄さんの多大な影響で礼儀正しく思慮深いアイゼイアに比べて、ドッドソンはいかにもなチンピラタイプなのですが、実は意外な長所があります。それは料理が得意なこと! 日本のバラエティ番組『料理の鉄人』をアメリカでリメイクして大ヒットした”Iron Chef”が大好きで、彼の野望はそれに出演すること。腕前を披露しようとアイゼイアにも作ってあげるのですが、いかんせん反応がイマイチでがっかりするという繊細な一面も(笑)。そしてさらに意外な生活習慣の持ち主で、それを知ったアイゼイアが驚くシーンもこれまたキュートなので、ぜひご自分で確認してください。
 本書にはこのメインの二人以外にも個性的なキャラが続出で、とにかく飽きさせません。アイゼイアの兄マーカスは若いのにとても人格者だったので、そういえばこの人がマイクロフトか! とすぐに連想できなかったという(笑)。中でも依頼人のラッパーと元妻の対決がめちゃくちゃ面白いんですよ! 米ドラマ『Empire 成功の代償』のルシウスとクッキーみたいで、「いやそこまでやったら両方とも全然いいことないし!」と言いたくなるほどワイルドでエクストリームな復讐合戦を繰り広げます。
 かように面白要素てんこもりの現在系探偵物語。読み終わったらあなたもきっと誰かに薦めたくなる! 本国では今年秋に三作目が出るとのことなので、まずは第二弾が邦訳されますように。アイゼイアとドッドソンに早く再会できるよう、皆様も神田に向かって念を送りましょう!(笑)
 
 さて、『IQ』では巨大で恐ろしく獰猛な犬が出てきましたが、以前こちらでもご紹介した『キングコング:髑髏島の巨神』や、5月に公開されたロック様の『ランペイジ 巨獣大乱闘』、そして現在公開中の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』など、ハリウッドでは巨大生物映画が大流行中。巨大生物の出現はなぜこんなにも心踊るのでしょうか! そんな中、夏にふさわしい海洋生物が大暴れする大パニック映画の登場です!

 
 9月7日(金)公開の『MEG ザ・モンスター』の主役は、全長23メートル、体重20トンという伝説の巨大サメ。25メートルプールにも入りきらないこの巨大生物が、とてつもなく凄まじい勢いで人々を襲います! それに対抗するのは今やロック様と並んで世界最高二大ハゲマッチョのジェイソン・ステイサム。ご存知の方も多いかと思いますが、ステイサムは映画俳優になる前はイングランド代表の水泳選手。飛び込みの世界選手権で12位になったほどの実力の持ち主です。
 

 物語の舞台は中国大陸沖の海洋研究所。前人未到の深海で調査中の探査艇が、突然現れた謎の生物に攻撃を受け、大事故が起きます。この窮地を救えるただ一人の男、伝説の凄腕レスキュー隊員テイラー(ステイサム)にはある過去が……。
太古の昔、実際に生息していたというメガロドン(通称メグ)がとにかくデカい!!! しょせん海洋生物だから攻撃できる範囲が限られるし……という常識をくつがえす怒濤のアタック場面が見所です!!

 原作は1997年に邦訳されたスティーヴ・オルテン『MEG(メグ)』(篠原慎訳/角川書店)。映画と同じタイトルに改題して8月24日に角川文庫で復刊されるそうです。そうそう、ステイサムと一緒に立ち向かうクルーの一人として、『ジョン・ウィック:チャプター2』のクールでめちゃカッコいい殺し屋を演じたルビー・ローズも登場するのでお楽しみに!
 今年の夏は映画と本で巨大生物アクションを満喫しましょう!
 
■映画『MEG ザ・モンスター』本予告【HD】2018年9月7日(金)公開

■『MEG ザ・モンスター』予告編 (2018年)

 


 
タイトル表記: MEG ザ・モンスター

コピーライト表記: ©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.

配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイトwww.megthemonster.jp #MEGザモンスター
上映時間:1時間53分
指定:G指定

キャスト
ジェイソン・ステイサム、リー・ビンビン、レイン・ウィルソン、ルビー・ローズ、ウィンストン・チャオ、クリフ・カーティス、マシ・オカ 他

スタッフ
監督:ジョン・タートルトーブ(「ナショナル・トレジャー」シリーズ)
撮影:トム・スターン(『アメリカン・スナイパー』)
美術:グラント・メイジャー(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』
原作:スティーヴ・オルテン(「THE MEG」)

   

♪akira
  一番好きなマーベルキャラクターはスタン・リーです。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらったり、「本の雑誌」の新刊めったくたガイドで翻訳ミステリーを担当したりしています。
 Twitterアカウントは @suttokobucho









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