5人集まれば御の字だと思ってたんです。だって、埼玉の名を冠したイベントと聞けば、たいてい浦和か大宮でやるものと思いますよね。熊谷開催と知って断念された方も多いでしょう。なのに、最終的には8人の方から申し込みがありました。しかも半分は埼玉県南部および都内からのご参加で、熊谷駅に降りたのも初めてだったそう。わー、遠いところをわざわざ。新幹線も止まるし、高崎線の快速に乗ればけっこう近い。横浜からだって一本で来られる。ええ、たしかにツイッターでそう言いましたとも。でも、まさか、本当に来ていただけるとは! しかも、おみやげまでいただいてしまって恐縮です。この時点で世話人の緊張感はMAXに。

 で、肝腎の読書会ですが、まさに餡汁より芋汁がうまし、じゃない、案ずるより産むが易し。まあ、ちょっとしたハプニングというかハプニングしなかったこともあったりして、その穴埋めに苦労したのは事実ですが、集まったみなさん、それぞれが豊富な読書経験をお持ちで、しかも翻訳ミステリにかぎらず、ジャンルの垣根を軽く越えて読んでいらっしゃる。事前に、最近おもしろかった本をあげていただいたのですが、それだけでもたいへんな収穫で、久坂部羊の『廃用身』のお話には、ぐぐっと引きこまれました。

 今回の課題書であるコリン・コッタリルの『三十三本の歯』は、主人公の老検死官に霊的能力があるという設定で、このへんに否定的な意見が出るのではと思っていましたが、みなさん、あっさりと受け入れていらっしゃいました。これはおそらく、その能力だけで事件を解決するという強引さがなく、本当に能力があるかどうか、曖昧にしているからでしょう。それよりは、西洋人が東洋の国を舞台にして書いた小説なのに、見下したところがまったくなく、ラオスの人が書いたような雰囲気に魅了されていた様子。

 そうそう、読書会のお知らせをしたのが先月のなかばすぎ。本のなかで登場人物同士がさかんにかわすあいさつ、「暑いね」「暑すぎます」が身にしみる季節でした。参加者のみなさんもこの科白が出るたび「うんうん」とうなずいていたのではないでしょうか。まさに、日本一暑い街、熊谷の読書会にぴったりの本だったわけです。もっとも当日はさほど暑くならず、参加者同士でこのあいさつを交わそうともくろんでいた世話人としては、ちょっぴり残念だったのでありました。

 ついでながら、『三十三本の歯』の季節は3月。舞台となるラオスは3〜4月が1年でもっとも暑く、酷暑期とも言われているとか。日本の8月くらいの気候でしょうか。シリーズ1作めの『老検死官シリ先生がゆく』の季節は11月で、比較的過ごしやすい時期のようです。どうりで「暑いね」「暑すぎます」のあいさつがなかったわけです。

 その他、「犬にチョコレートを食べさせていいのか」、「1作めではファッション誌やコミックばかり読んでいたドゥーイ看護婦の変貌ぶりにびっくり」、「1作めの表紙のほうが小説の雰囲気をよく伝えてる」、「主人公のシリ先生って、72歳というわりに元気だよね」、「グンくんはもっと若いと思ってた」、「そうそう、ドゥーイがお姉さんだとばかり」などなど、いろいろな意見や感想が出ました。訳者あとがきによれば、3作めの翻訳については白紙のようですが、参加者全員がつづきも読みたいということで意見が一致しました。

 近くの居酒屋に場所を移しての懇親会では、またまた本の話が炸裂。もう、みなさん、手がつけられません。ドラマや映画、書店の話題など内容も盛りだくさんで、もともと容量の小さな世話人の頭はもうパンパン。でも、本当に楽しかった。次もやろうと固く固く決意しました。もちろん、また熊谷で。今回は断念された方も、ぜひおいでください。

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