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にぎやかな読書会もいよいよ後半。ぐっとまじめな(?)話題にまいります。
【真面目な話題】
打ち合わせしてる訳ではないのですが、なぜか埼玉読書会ではほぼ毎回、話題に上がり翻訳家のみなさまにお聞きしていることがあります。
●英語の訛りや階級差の言葉を日本語に直しますか?
かつてなら、商売人は関西弁、田舎の方ならそれっぽい日本語で、というのもあったかも知れないけど、今だとどうなるか?
実際、喋れば分かるかも知れないけど、文章では伝わってきてないところが多いので表現するのは難しい。
●むこうの編集者は、小説の内容を確認してる?
かつての課題本でも、「アスピリンの飲みすぎで人は死ぬか? 死なないだろう。でも死なないと話が始まらないので原書通りに死ぬことにしました」や、原書の通りに訳したら「校正から“左、左と曲がったらいつまで経っても目的地に着かない”と指摘された」や、「作者ですらシリーズ物だと登場人物の名前を間違ったりする」や、いろんな例を頂いておりますが、今回の課題本は「ラングドン・シリーズに比べれば、ダン・ブラウンのミスが少ない」……つまりは、そういうことのようです。
●翻訳苦労話
この本は知的レベルが同じように高い人たちが出てきてるので、人物分けをするのが難しかった。
デルタフォースに指令を出す黒幕が誰か、というのがこの小説のキーポイントで、その候補者が二人いるんだけど、二人のどちらか分からないように上巻から下巻半分まで引っ張るので、訳者としては辛かった。
(ここ、みんな騙された? という越前さんからの質問に、「最初は“む?”と思ったけど、かなり引っ張ったので、逆に分かった」という回答がありました。引っ張った行の長さで判断するとは、ミステリーファン、恐るべし)
【越前さんに聞いてみよう!】
●大統領が何度か使う“帽子を食べる”という表現について
これは英語の決まり文句だけど、何度も同じ表現が作品中に出てくるのであえてそのまま使ってます。実際に食べはしない。あり得ないことの例えです。
参加者からは「でもやれば帽子食べられるかも」「(大勢から)え?」(映画の中ではチャップリンが革靴を食べてるシーンはありましたけど、帽子はムリだろう…)「ローマ帽子ならいけるかも」「(またまた)ええっ?」(ローマ帽子を食べられて消滅しちゃうとエラリーが壊れます。想像の翼をそこまで広げるのはご遠慮下さい)
「決まり文句と言えば、国名シリーズでエラリーが「ジューナのドーナツを賭けても」というセリフを何度か言うのだけど、あれは実際にジューナの作ったドーナツを賭けて、ではなくて、〇×△※■(中略)という意味もあって」、と国名シリーズファンには嬉しい話も披露されました(これはその場にいた人のみのナイショ、ということで、教えてあげません)。
●“鞭毛藻”と“便秘症”の駄洒落はすぐに思いついたのですか?
最初は“健忘症”にしようかと 思ったんだけど、コーキーだし下ネタで、ってことで。悩んだ時間は約10分。「この質問、誰から?」(こんな質問するのは私しかおりません、すみませんすみません)
●ご自分の訳書で好きなのは?
ロナルド・アンソニーの『父さんが言いたかったこと』(新潮社) 版元品切(残念)
●国名シリーズの翻訳スケジュールは?
3ヶ月ごとに出版されて、来年の6月に終了予定。(おー)
場所を2メートル平行移動した別室(?)での懇親会は、お寿司屋さんなのに沖縄料理が登場。ご主人が沖縄料理にはまってるらしく、東野さんからのお願いで出てきたのは沖縄料理とお寿司。お酒は泡盛もあるでよ。
東野さんから沖縄料理の解説を聞きつつ、麹で漬けた島豆腐とか麩チャンプルとか珍しいものから、定番のラフテーや島豆腐の冷奴やプチプチな海ぶどう、そしてお寿司屋さんですので握りなどなど、おいしいものを頂きました。
いつもの如くいろんな話で盛り上がり、卓の端の遠くでは女子会みたいになっていて、なつかしの少女漫画の話題で盛り上がっていた様子。真ん中の越前さんの辺りでは「チャイナ橙の“だいだい”がどうも日本のミカンらしくて」「来た、オレンジじゃなくてミカン」「手で皮がむけるミカン?」「だから正確には橙じゃないんだけど」(…時間経過…)「ロマンポルノがどうこう」という言葉が真ん中辺りから耳に飛び込んできて、「は!?」と思った時には参戦するには遅く、こちらの方では『図書室の魔法』激押しとか、各所でえらく盛り上がっておりましたが7時半には終了。
みなさま、お疲れ様でした。今回もいろんな話が聞けて楽しかったです。
【越前さんからのプレゼント】
国名シリーズとダン・ブラウンのデビュー作『パズル・パレス』漏れなくサイン入り。とても嬉しいです。ありがとうございます。
埼玉読書会は東野さんが一人幹事で、課題図書決めから会議室の確保からレジュメ書きから全てしています。
何かお手伝いできることはないか、と思い余ってレポート書きならいけるかも、私、書きます! って、一番、大変なことに名乗り出てないか?
だがしかし、女に二言はない。今回はごく普通の読者(しかも大通りから二本くらい脇に入った狭い通りを疾走してるような読書嗜好)からお送りしました。
いかがでしょうか? 読書会の雰囲気が伝わりましたか? 埼玉は常連さんが多く、掛け合いも慣れたもの。いつもこんな感じで、楽しくおしゃべりをしています。初参加の方もいらっしゃいましたが、すぐに打ち解けていらした様子。読書好きな人と話がしたいという方、次回はぜひおいでください。敷居をうんと低くしてお待ちしています。
次の埼玉読書会は11月に浦和での開催となります。その前に、番外企画として8月9日に東江一紀さん追悼読書会が決定しております。課題書はドン・ウィンズロウの『カリフォルニアの炎』。興味のある方はぜひ埼玉読書会公式アドレス(saitamadokushokai@gmail.com)までご連絡を。詳細をお知らせいたします。